- 法令名 民事調停法
- 法令番号 (昭和二十六年六月九日法律第二百二十二号)
- 施行年月日 昭和二十六年十月一日
- 最終改正 平成三年一〇月四日法律第九一号
- 目次
- 第一章 通則(第一条―第二十三条)
- 第二章 特則
- 第一節 宅地建物調停(第二十四条―第二十四条の三)
- 第二節 農事調停(第二十五条―第三十条)
- 第三節 商事調停(第三十一条)
- 第四節 鉱害調停(三十二条・第三十三条)
- 第五節 交通調停(第三十三条の二)
- 第六節 公害等調停(第三十三条の三)
- 第三章 罰則(第三十四条―第三十八条)
- 附則(第一条―第十五条)
- 第一章 通則
- (この法律の目的)
- 第一条
- この法律は、民事に関する紛争につき、当事者の互譲により、条理にかない実情に即した解決を図ることを目的とする。
- (調停事件)
- 第二条
- 民事に関して紛争を生じたときは、当事者は、裁判所に調停の申立をすることができる。
- (管轄)
- 第三条
- 調停事件は、特別の定がある場合を除いて、相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所又は当事者が合意で定める地方裁判所若しくは簡易裁判所の管轄とする。
- (移送等)
- 第四条
- 1 裁判所は、その管轄に属しない事件について申立を受けた場合には、これを管轄権のある地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所に移送しなければならない。但し、事件を処理するために特に必要があると認めるときは、土地管轄の規定にかかわらず、事件の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送し、又はみずから処理することができる。
- 2 裁判所は、その管轄に属する事件について申立を受けた場合においても、事件を処理するために適当であると認めるときは、土地管轄の規定にかかわらず、事件の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
- (調停機関)
- 第五条
- 1 裁判所は、調停委員会で調停を行う。但し、相当であると認めるときは、裁判官だけでこれを行うことができる。
- 2 裁判所は、当事者の申立があるときは、前項但書の規定にかかわらず、調停委員会で調停を行わなければならない。
- (調停委員会の組織)
- 第六条
- 調停委員会は、調停主任一人及び民事調停委員二人以上で組織する。
- (調停主任等の指定)
- 第七条
- 1 調停主任は、裁判官の中から、地方裁判所が指定する。
- 2 調停委員会を組織する民事調停委員は、裁判所が各事件について指定する。
- (民事調停委員)
- 第八条
- 1 民事調停委員は、調停委員会で行う調停に関与するほか、裁判所の命を受けて、他の調停事件について、専門的な知識経験に基づく意見を述べ、嘱託に係る紛争の解決に関する事件の関係人の意見の聴取を行い、その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。
- 2 民事調停委員は、非常勤とし、その任免に関して必要な事項は、最高裁判所が定める。
- (手当等)
- 第九条
- 民事調停委員には、別に法律で定めるところにより手当を支給し、並びに最高裁判所の定めるところにより旅費、日当及び宿泊料を支給する。
- 第十条
- 削除
- (利害関係人の参加)
- 第十一条
- 1 調停の結果について利害関係を有する者は、調停委員会の許可を受けて、調停手続に参加することができる。
- 2 調停委員会は、相当であると認めるときは、調停の結果について利害関係を有する者を調停手続に参加させることができる。
- (調停前の措置)
- 第十二条
- 1 調停委員会は、調停のために特に必要があると認めるときは、当事者の申立により、調停前の措置として、相手方その他の事件の関係人に対して、現状の変更又は物の処分の禁止その他調停の内容たる事項の実現を不能にし又は著しく困難ならしめる行為の排除を命ずることができる。
- 2 前項の措置は、執行力を有しない。
- (調停をしない場合)
- 第十三条
- 調停委員会は、事件が性質上調停をするのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申立をしたと認めるときは、調停をしないものとして、事件を終了させることができる。
- (調停の不成立)
- 第十四条
- 調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込がない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合において、裁判所が第十七条の決定をしないときは、調停が成立しないものとして、事件を終了させることができる。
- (裁判官の調停への準用)
- 第十五条
- 第十一条から前条までの規定は、裁判官だけで調停を行う場合に準用する。
- (調停の成立・効力)
- 第十六条
- 調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
- (調停に代わる決定)
- 第十七条
- 裁判所は、調停委員会の調停が成立する見込みがない場合において相当であると認めるときは、当該調停委員会を組織する民事調停委員の意見を聴き、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のために必要な決定をすることができる。この決定においては、金銭の支払、物の引渡しその他の財産上の給付を命ずることができる。
- (異議の申立)
- 第十八条
- 1 前条の決定に対しては、当事者又は利害関係人は、異議の申立をすることができる。その期間は、当事者が決定の告知を受けた日から二週間とする。
- 2 前項の期間内に異議の申立があつたときは、同項の決定は、その効力を失う。
- 3 第一項の期間内に異議の申立がないときは、同項の決定は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
- (調停不成立等の場合の訴の提起)
- 第十九条
- 第十四条(第十五条において準用する場合を含む。)の規定により事件が終了し、又は前条第二項の規定により決定が効力を失つた場合において、申立人がその旨の通知を受けた日から二週間以内に調停の目的となつた請求について訴を提起したときは、調停の申立の時に、その訴の提起があつたものとみなす。
- (受訴裁判所の調停)
- 第二十条
- 1 受訴裁判所は、適当であると認めるときは、職権で、事件を調停に付した上、管轄裁判所に処理させ又はみずから処理することができる。但し、事件について争点及び証拠の整理が完了した後において、当事者の合意がない場合には、この限りでない。
- 2 前項の規定により事件を調停に付した場合において、調停が成立し又は第十七条の決定が確定したときは、訴の取下があつたものとみなす。
- 3 第一項の規定により受訴裁判所がみずから調停により事件を処理する場合には、調停主任は、第七条第一項の規定にかかわらず、受訴裁判所がその裁判官の中から指定する。
- (即時抗告)
- 第二十一条
- 調停手続における裁判に対しては、最高裁判所の定めるところにより、即時抗告をすることができる。その期間は、二週間とする。
- (非訟事件手続法の準用)
- 第二十二条
- 特別の定がある場合を除いて、調停に関しては、その性質に反しない限り、非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第一編の規定を準用する。但し、同法第十五条の規定は、この限りでない。
- (この法律に定のない事項)
- 第二十三条
- この法律に定めるものの外、調停に関して必要な事項は、最高裁判所が定める。
- 第二章 特則
- 第一節 宅地建物調停
- (宅地建物調停事件・管轄)
- 第二十四条
- 宅地又は建物の貸借その他の利用関係の紛争に関する調停事件は、紛争の目的である宅地若しくは建物の所在地を管轄する簡易裁判所又は当事者が合意で定めるその所在地を管轄する地方裁判所の管轄とする。
- (地代借賃増減請求事件の調停の前置)
- 第二十四条の二
- 1 借地借家法(平成三年法律第九十号)第十一条の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求又は同法第三十二条の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てをしなければならない。
- 2 前項の事件について調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、受訴裁判所は、その事件を調停に付さなければならない。ただし、受訴裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときは、この限りでない。
- (地代借賃増減調停事件について調停委員会が定める調停条項)
- 第二十四条の三
- 1 前条第一項の請求に係る調停事件については、調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合において、当事者間に調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意(当該調停事件に係る調停の申立ての後にされたものに限る。)があるときは、申立てにより、事件の解決のために適当な調停条項を定めることができる。
- 2 前項の調停条項を調書に記載したときは、調停が成立したものとみなし、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
- 第二節 農事調停
- (農事調停事件)
- 第二十五条
- 農地又は農業経営に附随する土地、建物その他の農業用資産(以下「農地等」という。)の貸借その他の利用関係の紛争に関する調停事件については、前章に定めるものの外、この節の定めるところによる。
- (管轄)
- 第二十六条
- 前条の調停事件は、紛争の目的である農地等の所在地を管轄する地方裁判所又は当事者が合意で定めるその所在地を管轄する簡易裁判所の管轄とする。
- (小作官等の意見陳述)
- 第二十七条
- 小作官又は小作主事は、期日に出席し又は期日外において、調停委員会に対して意見を述べることができる。
- (小作官等の意見聴取)
- 第二十八条
- 調停委員会は、調停をしようとするときは、小作官又は小作主事の意見を聞かなければならない。
- (裁判官の調停への準用)
- 第二十九条
- 前二条の規定は、裁判官だけで調停を行う場合に準用する。
- (移送等への準用)
- 第三十条
- 第二十八条の規定は、裁判所が、第四条第一項但書若しくは第二項の規定により事件を移送し若しくはみずから処理しようとし、又は第十七条の決定をしようとする場合に準用する。
- 第三節 商事調停
- (商事調停事件について調停委員会が定める調停条項)
- 第三十一条
- 第二十四条の三の規定は、商事の紛争に関する調停事件に準用する。
- 第四節 鉱害調停
- (鉱害調停事件・管轄)
- 第三十二条
- 鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)に定める鉱害の賠償の紛争に関する調停事件は、損害の発生地を管轄する地方裁判所の管轄とする。
- (農事調停等に関する規定の準用)
- 第三十三条
- 第二十四条の三及び第二十七条から第三十条までの規定は、前条の調停事件に準用する。この場合において、第二十七条及び第二十八条中「小作官又は小作主事」とあるのは、「通商産業局長」と読み替えるものとする。
- 第五節 交通調停
- (交通調停事件・管轄)
- 第三十三条の二
- 自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償の紛争に関する調停事件は、第三条に規定する裁判所のほか、損害賠償を請求する者の住所又は居所の所在地を管轄する簡易裁判所の管轄とする。
- 第六節 公害等調停
- (公害等調停事件・管轄)
- 第三十三条の三
- 公害又は日照、通風等の生活上の利益の侵害により生ずる被害に係る紛争に関する調停事件は、第三条に規定する裁判所のほか、損害の発生地又は損害が発生するおそれのある地を管轄する簡易裁判所の管轄とする。
- 第三章 罰則
- (不出頭に対する制裁)
- 第三十四条
- 裁判所又は調停委員会の呼出しを受けた事件の関係人が正当な事由がなく出頭しないときは、裁判所は、五万円以下の過料に処する。
- (措置違反に対する制裁)
- 第三十五条
- 当事者又は参加人が正当な事由がなく第十二条(第十五条において準用する場合を含む。)の規定による措置に従わないときは、裁判所は、十万円以下の過料に処する。
- (過料の裁判)
- 第三十六条
- 1 前二条の過料の裁判は、裁判官の命令で執行する。この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。
- 2 過料の裁判の執行は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)その他強制執行の手続に関する法令の規定に従つてする。ただし、執行前に裁判の送達をすることを要しない。
- 3 非訟事件手続法第二百七条及び第二百八条ノ二中検察官に関する規定は、第一項の過料の裁判には適用しない。
- (評議の秘密を漏らす罪)
- 第三十七条
- 民事調停委員又は民事調停委員であつた者が正当な事由がなく評議の経過又は調停主任若しくは民事調停委員の意見若しくはその多少の数を漏らしたときは、十万円以下の罰金に処する。
- (人の秘密を漏らす罪)
- 第三十八条
- 民事調停委員又は民事調停委員であつた者が正当な事由がなくその職務上取り扱つたことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六箇月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
- 附則 抄
- (施行期日)
- 第一条
- この法律は、昭和二十六年十月一日から施行する。
- (借地借家調停法等の廃止)
- 第二条
- 借地借家調停法(大正十一年法律第四十一号)、小作調停法(大正十三年法律第十八号)、商事調停法(大正十五年法律第四十二号)及び金銭債務臨時調停法(昭和七年法律第二十六号)は、廃止する。
- (従前の調停事件)
- 第十三条
- この法律施行前に裁判所が受理した調停事件については、なお従前の例による。
- (調停委員となるべき者の選任等)
- 第十四条
- 1 この法律施行前に従前の法律の規定によつてした調停委員となるべき者の選任は、この法律の適用については、同法の規定によつてした選任とみなす。
- 2 この法律施行後に同法の規定によつてした調停委員となるべき者の選任は、従前の法律の適用については、同法の規定によつてした選任とみなす。
- 3 前二項の規定は、調停主任の指定に準用する。
- (罰則の適用)
- 第十五条
- この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
- 2 小作調停法又は金銭債務臨時調停法による調停委員又は調停委員であつた者のこの法律施行後の行為に対する罰則の適用についても、前項と同様とする。但し、従前の規定中「千円」とあるのは「五千円」とする。
- 3 この法律施行後の行為に対して従前の過料に関する規定を適用する場合には、その規定中「五十円」とあるのは「三千円」とし、「五百円」とあるのは「五千円」とする。但し、従前の家事審判法の規定中「五百円」とあるのは「三千円」とする。
- 4 この法律施行後に従前の例によるべき場合であつても、過料の裁判又は審判及びその執行については、第三十六条又はこの法律による改正後の家事審判法第二十九条の規定を適用する。
- 附則 (昭和二九年五月二七日法律第一二八号)01 この法律は、昭和二十九年六月一日から施行する。
- 附則 (昭和四六年四月六日法律第四二号)01 この法律(第一条を除く。)は、昭和四十六年七月一日から施行する。
- 附則 (昭和四九年五月二四日法律第五五号)
- (施行期日)
- 1 この法律は、昭和四十九年十月一日から施行する。
- (経過措置)
- 2 この法律の施行前に調停委員会においてした手続及び裁判所がした調停委員の意見の聴取は、この法律による改正後の民事調停法又は家事審判法の規定により調停委員会においてした手続及び裁判所がした民事調停委員又は家事調停委員の意見の聴取とみなす。
- 3 この法律の施行前に調停委員、調停の補助をした者又は参与員がした執務に係る旅費、日当及び宿泊料又は止宿料の支給については、なお従前の例による。
- 4 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
- 5 この法律の施行前に調停委員であつた者がこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用についても、前項と同様とする。
- 附則 (昭和五四年三月三〇日法律第五号) 抄
- (施行期日)
- 1 この法律は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)の施行の日(昭和五十五年十月一日)から施行する。
- (経過措置)
- 2 この法律の施行前に申し立てられた民事執行、企業担保権の実行及び破産の事件については、なお従前の例による。
- 3 前項の事件に関し執行官が受ける手数料及び支払又は償還を受ける費用の額については、同項の規定にかかわらず、最高裁判所規則の定めるところによる。
- 附則 (昭和五七年八月二四日法律第八三号) 抄
- (施行期日)
- 第一条
- この法律は、昭和五十七年十月一日から施行する。
- (罰則に関する経過措置)
- 第二条
- この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
- 附則 (平成三年一〇月四日法律第九一号)
- (施行期日)
- 1 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。