会社更生法 (昭和27年[1952年]6月7日 法律第172号)
第一章 総則
(目的)
第一条
この法律は、窮境にあるが再建の見込のある株式会社(以下「会社」という。)について、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更生を図ることを目的とする。
(更生手続の効力発生の時)
第二条
更生手続は、その開始決定の時から、効力を生ずる。
(外国人の地位)
第三条
外国人又は外国法人は、会社の更生に関し日本人又は日本法人と同一の地位を有する。
(属地主義)
第四条
日本国内で開始した更生手続は、日本国内にある会社の財産についてのみ、効力を有する。
2 外国で開始した更生手続は、日本国内にある財産については、効力を有しない。
3 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)により裁判上の請求をすることができる債権は、日本国内にあるものとみなす。
(時効の中断)
第五条
更生手続参加は、時効中断の効力を生ずる。但し、更生債権者又は更生担保権者がその届出を取り下げ、又はその届出が却下されたときは、この限りでない。
(更生事件の管轄)
第六条
更生事件は、会社の本店の所在地、外国に本店があるときは、日本における主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
(更生事件の移送)
第七条
前条の裁判所は、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で、更生事件を会社の他の営業所又は財産の所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる。
(民事訴訟に関する法令の準用)
第八条
更生手続に関しては、この法律に特別の規定がないときは、民事訴訟に関する法令の規定を準用する。
(任意的口頭弁論及び職権調査)
第九条
更生手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
2 裁判所は、職権で、更生事件に関して必要な調査をすることができる。
(裁判の職権送達)
第十条
更生手続に関する裁判は、職権で送達しなければならない。
(抗告)
第十一条
更生手続に関する裁判に対しては、この法律に特別の規定がある場合に限り、その裁判につき利害関係を有する者は、即時抗告をすることができる。その期間は、裁判の公告があつた場合においては、その公告があつた日から起算して二週間とする。
(公告)
第十二条
この法律の規定によつてする公告は、官報及び裁判所の指定する新聞紙に掲載してする。
2 公告は、最終の掲載があつた日の翌日に、その効力を生ずる。
(掲示による公告)
第十三条
会社の債務が二千万円以下である場合には、公告は、前条第一項の規定にかかわらず、新聞紙上の掲載に代え、裁判所及び会社の本店(外国に本店があるときは、日本における主たる営業所)の所在地を管轄する簡易裁判所又はその管轄区域内の市町村の事務所若しくはこれに準ずべき公署の掲示場に掲示してすることができる。この場合には、掲示の日から三日を経過した日に、新聞紙上の掲載があつたものとみなす。
2 前項の規定は、会社が無記名式の社債券若しくは株券又は端株券を発行している場合には、適用しない。
(社債権者等に対する送達)
第十四条
この法律の規定によつてする会社の社債権者に対する送達は、社債権者からこの法律の規定による住所の届出があるときは、その住所、届出がないときは、社債原簿に記載した住所又は社債権者が会社に通知した住所にあてて、書類を通常の取扱による郵便に付してすることができる。
2 登記した担保権を有する更生担保権者に対する送達は、その更生担保権者からこの法律の規定による住所の届出があるときは、その住所、届出がないときは、登記簿に記載した住所にあてて、書類を通常の取扱による郵便に付してすることができる。
3 この法律の規定によつてする会社の株主に対する送達は、株主名簿若しくは端株原簿に記載した住所、株主が会社に通知した住所又は株主が第百三十一条の規定によつて管財人に届け出た住所にあてて、書類を通常の取扱いによる郵便に付してすることができる。
4 前三項の規定によつて書類を郵便に付して発送した場合においては、その郵便物が通常到達すべきであつた時に、送達があつたものとみなす。
5 第一項から第三項までの場合においては、裁判所書記官は、書面を作り、これに送達を受けるべき者の氏名、あて先及び発送の年月日時を記載して署名押印しなければならない。ただし、署名押印に代えて記名押印することができる。
(公告及び送達をする場合)
第十五条
この法律の規定によつて公告及び送達をしなければならない場合には、送達は、書類を通常の取扱による郵便に付してすることができる。
2 前項の場合には、公告は、一切の関係人に対する送達の効力を有する。
3 前条第五項の規定は、第一項の場合に準用する。
(送達に代る公告)
第十六条
この法律の規定によつて送達を受けるべき者の住所、居所その他送達をすべき場所を知ることが困難である場合においては、裁判所は、公告をもつてその送達に代えることを命ずることができる。
(登記の嘱託)
第十七条
更生手続開始の決定をしたときは、裁判所は、職権で遅滞なく、嘱託書に決定書の謄本又は抄本を添附して更生手続開始の登記を会社の本店及び支店(外国に本店があるときは、日本における営業所)の所在地の登記所に嘱託しなければならない。
2 前項の登記には、管財人の氏名又は名称をも登記しなければならない。
3 第一項の規定は、前項に掲げる事項に変更が生じた場合及び更生計画の遂行又はこの法律の規定により更生手続終了前に会社又は新会社について登記すべき事項が生じた場合に準用する。
第十八条
会社財産に属する権利で登記したものがあることを知つたときは、裁判所は、職権で遅滞なく、嘱託書に更生手続開始決定書の謄本又は抄本を添附して更生手続開始の登記を登記所に嘱託しなければならない。
2 前項の規定は、更生計画の遂行又はこの法律の規定により更生手続終了前に登記のある権利の得喪又は変更が生じた場合に準用する。但し、会社、更生債権者、更生担保権者、株主及び新会社以外の者を権利者とする登記については、この限りでない。
第十八条の二
第三十九条第一項後段の規定による処分をしたときは、裁判所は、職権で遅滞なく、嘱託書に決定書の謄本又は抄本を添附してその処分の登記を会社の本店及び支店(外国に本店があるときは、日本における営業所)の所在地の登記所に嘱託しなければならない。
2 前項の規定は、同項の規定により登記すべき事項に変更が生じた場合及び第三十九条第一項後段の規定による処分の取消しがあつた場合に準用する。
3 前条第一項の規定は、登記のある権利に関し第三十九条第一項前段又は第七十二条第一項第二号若しくは第二項の規定による処分があつた場合及びその処分の変更又は取消しがあつた場合に準用する。
第十八条の三
第二百十一条第三項又は第二百四十八条の二第一項の規定により会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利が取締役に付与されたときは、裁判所は、職権で遅滞なく、嘱託書に更生計画認可の決定書又は同項の規定による権利付与の決定書の謄本又は抄本を添附してその旨の登記を会社の本店及び支店(外国に本店があるときは、日本における営業所)の所在地の登記所に嘱託しなければならない。
2 前項の規定は、第二百十一条第三項の規定による更生計画の定め又は第二百四十八条の二第一項の規定による決定が取り消された場合に準用する。
第十九条
第十七条第一項及び第十八条第一項の規定は、更生手続開始決定取消、更生手続廃止又は更生計画不認可の決定が確定した場合及び更生計画認可又は更生手続終結の決定があつた場合に準用する。
(登記所の職務)
第二十条
登記所は、第十七条から前条までの規定による登記の嘱託を受けたときは、遅滞なく、その登記をしなければならない。
2 登記所は、更生手続開始の登記をする場合において、会社について和議開始、整理開始又は特別清算開始の登記があるときは、職権で、その登記をまつ消しなければならない。
3 登記所は、更生手続開始決定取消の登記をする場合において、前項の規定によつてまつ消した登記があるときは、職権で、その登記を回復しなければならない。
4 前二項の規定は、更生計画認可又はその取消の登記をする場合に、破産の登記について準用する。
(否認の登記)
第二十一条
登記の原因である行為が否認されたときは、管財人は、否認の登記をしなければならない。登記が否認されたときも、また同様である。
2 第十九条の規定は、前項の場合に準用する。
(登録への準用)
第二十二条
第十八条、第十八条の二第三項及び前三条の規定は、登録のある権利について準用する。
(破産手続への移行)
第二十三条
破産宣告前の会社について更生手続開始申立棄却、更生手続廃止又は更生計画不認可の決定が確定した場合において、会社に破産の原因たる事実があると認めるときは、裁判所は、職権で、破産法(大正十一年法律第七十一号)に従い、破産の宣告をすることができる。
2 前項の場合においては、第十九条の規定による登記又は前条において準用する第十九条の規定による登録の嘱託は、破産の登記又は登録の嘱託とともにしなければならない。
第二十四条
前条第一項の規定により破産の宣告があつたときは、破産法第一編の適用については、更生手続開始決定、更生手続開始によつて効力を失つた整理若しくは特別清算の手続におけるその手続開始の命令若しくは和議手続における和議開始の申立又は詐欺破産の罪にあたるべき会社の取締役若しくはこれに準ずべき者の行為は、その前に支払の停止又は破産の申立がないときは、これを支払の停止又は破産の申立とみなし、共益債権は、財団債権とする。
第二十五条
破産宣告後の会社について更生手続開始申立棄却、第二百七十三条から第二百七十四条までの規定による更生手続廃止又は更生計画不認可の決定の確定によつて破産手続が続行されたときは、共益債権は、財団債権とする。
第二十六条
破産宣告後の会社について更生計画認可の決定により破産手続が効力を失つた後第二百七十七条の規定による更生手続廃止の決定が確定した場合においては、裁判所は、職権で、破産の宣告をしなければならない。
2 前項の場合においては、破産法第一編の適用については、更生計画認可の決定によつて効力を失つた破産手続における破産の申立の時に破産の申立があつたものとみなし、共益債権は、財団債権とする。
3 第二十三条第二項の規定は、第一項の場合に準用する。
(和議手続への移行)
第二十七条
第二十三条第一項に掲げる決定をした場合において、相当と認めるときは、裁判所は、その決定の確定前においても和議の申立をすることを認可することができる。
2 裁判所が前項の認可をしたときは、和議法(大正十一年法律第七十二号)に従つて和議手続をしなければならない。
第二十八条
更生手続開始の決定によつて和議手続が効力を失つた後、前条の規定による申立に基き和議手続の開始があつた場合においては、和議法第十条(支払停止等の擬制)及び第三十三条(和議債権者の否認権)の規定の適用については、その効力を失つた和議手続における和議開始の申立の時に和議開始の申立があつたものとみなす。
2 前条の規定による申立に基き和議手続の開始があつた場合においては、和議法第五十六条(和議のために生じた債権等の弁済)の規定の適用については、共益債権は、和議のために生じた債権又は和議手続の費用とみなす。
(破産等の申立義務と更生手続開始の申立)
第二十九条
他の法律によつて会社の清算人が会社に対して破産又は特別清算開始の申立をしなければならない場合においても、更生手続開始の申立をすることを妨げない。
第二章 更生手続の開始
(手続の開始)
第三十条
事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができないときは、会社は、裁判所に対し、更生手続開始の申立をすることができる。会社に破産の原因たる事実の生ずる虞があるときも、また同様である。
2 前項後段の場合においては、資本の十分の一以上に当る債権を有する債権者又は発行済株式の総数の十分の一以上に当る株式を有する株主も、また申立をすることができる。
(解散後の会社の申立)
第三十一条
清算若しくは特別清算中の会社又は破産宣告後の会社が更生手続開始の申立をするには、商法(明治三十二年法律第四十八号)第三百四十三条(定款変更の決議方法)に定める決議によらなければならない。
(申立書)
第三十二条
更生手続開始の申立は、書面でしなければならない。
2 申立書には、左の事項を記載しなければならない。
一 申立人及び法定代理人の氏名及び住所
二 会社の商号、本店の所在場所、代表者の氏名並びに外国に本店があるときは、日本における主たる営業所の所在場所及び日本における代表者の氏名
三 申立の趣旨
四 更生手続開始の原因たる事実
五 会社の目的及び業務の状況
六 会社の発行済株式の総数、資本の額及び資産、負債その他の財産の状況
七 会社財産に関してされている他の手続又は処分で申立人に知れているもの
八 更生計画に関して申立人の意見があるときは、その意見
3 申立書には、前項に掲げる事項の外、債権者が申立をするときはその有する債権の額及び原因、株主が申立をするときはその有する株式の数を記載しなければならない。
(疏明)
第三十三条
更生手続開始の申立をするときは、更生手続開始の原因たる事実を疏明しなければならない。
2 債権者又は株主が前項の申立をするときは、その有する債権の額又は株式の数をも疏明しなければならない。
(費用の予納)
第三十四条
更生手続開始の申立をするときは、手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。
2 前項の金額は、裁判所が事件の大小等を考慮して定める。会社以外の者が申立をしたときは、更生手続開始後の費用については、会社財産から支払うことのできる金額をも考慮して定めなければならない。
3 費用の予納に関する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(監督行政庁への通知等)
第三十五条
更生手続開始の申立があつたときは、裁判所は、会社の業務を監督する行政庁、会社の本店(外国に本店があるときは、日本における主たる営業所。以下本条中同じ。)の所在地を管轄する税務署の長並びにその本店所在の都道府県及び市町村又はこれに準ずべき公共団体の長にその旨を通知しなければならない。
2 裁判所は、必要があると認めるときは、会社の事業を所管する行政庁、第百二十二条第一項に掲げる請求権につき徴収の権限を有する者その他裁判所が相当と認める者に対し、会社の更生手続につき意見の陳述を求めることができる。
3 前項に掲げる者は、裁判所に対し、会社の更生手続につき意見を述べることができる。
(審尋)
第三十六条
債権者又は株主が更生手続開始の申立をしたときは、裁判所は、会社の代表者(外国に本店があるときは、日本における代表者。以下同じ。)を審尋しなければならない。
(他の手続の中止命令等)
第三十七条
更生手続開始の申立てがあつた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、破産手続、和議手続、整理手続、特別清算手続、更生債権若しくは更生担保権に基づき会社財産に対し既にされている強制執行、仮差押え、仮処分、担保権の実行としての競売(以下単に「競売」という。)の手続若しくは企業担保権の実行手続、会社の財産関係の訴訟手続又は会社の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続の中止を命ずることができる。ただし、強制執行、仮差押え、仮処分又は競売の手続については、債権者又は競売申立人に不当の損害を及ぼすおそれがあるときは、この限りでない。
2 更生手続開始の申立があつた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)による滞納処分、国税徴収の例による滞納処分又は租税債務担保のため提供された物件の処分の中止を命ずることができる。この場合においては、あらかじめ徴収の権限を有する者の意見を聞かなければならない。
3 前項の中止の決定は、更生手続開始の申立につき決定があつたとき、又は中止の決定の日から二月を経過したときは、その効力を失う。
4 第二項の規定による処分の中止期間中は、時効は、進行しない。
5 裁判所は、第一項及び第二項の規定による中止の決定を変更し、又は取り消すことができる。
(手続開始の条件)
第三十八条
左の場合においては、裁判所は、更生手続開始の申立を棄却しなければならない。
一 更生手続の費用の予納がないとき。
二 債権者又は株主が更生手続開始の申立をするためにその債権又は株式を取得したとき。
三 破産回避又は企業担保権の実行の回避の目的で申立をしたとき。
四 裁判所に破産手続、和議手続、整理手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
五 更生の見込がないとき。
六 租税債務の履行を回避し、その他租税債務の履行につき利益を受けることを主たる目的として申立をしたとき。
七 その他申立が誠実にされたものでないとき。
(保全処分)
第三十九条
裁判所は、更生手続開始の決定をする前でも、利害関係人の申立により又は職権で、会社の業務及び財産に関し仮差押、仮処分その他必要な保全処分を命ずることができる。保全管理人による管理又は監督員による監督を命ずる処分についても、また同様である。
2 裁判所は、前項の規定による処分を変更し、又は取り消すことができる。
3 前二項の規定による裁判は、決定でする。この決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
5 裁判所は、第一項後段の規定による処分をしたときは、その旨を公告しなければならない。公告した事項に変更が生じた場合及びその処分の取消しがあつた場合も、また同様である。
6 第十五条の規定は、前項の場合には適用しない。
(保全管理人)
第四十条
前条第一項後段の規定により保全管理人による管理の命令があつたときは、会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した保全管理人に専属する。ただし、保全管理人が会社の常務に属しない行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
2 前項ただし書の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、善意の第三者に対抗することができない。
(保全管理人代理)
第四十一条
保全管理人は、必要があるときは、その職務を行なわせるため、自己の責任で保全管理人代理を選任することができる。
2 前項の保全管理人代理の選任は、裁判所の許可を得なければならない。
(監督員)
第四十二条
第三十九条第一項後段の規定により監督員による監督の命令があつたときは、会社が裁判所の指定した行為をするには、裁判所が選任した監督員の同意を得なければならない。
(管財人に関する規定等の準用)
第四十三条
第五十四条から第五十五条まで、第九十四条、第九十五条、第九十六条第一項、第九十七条及び第九十八条の二から第百条までの規定は、保全管理人に準用する。
2 第六十八条から第七十条までの規定は、第三十九条第一項後段の規定により保全管理人による管理を命ずる処分があつた場合及びその処分の取消しがあつた場合に準用する。
3 第九十八条の二第一項、第二項及び第九十八条の三から第九十八条の五までの規定は、監督員に準用する。
(手続開始の申立ての取下げの制限)
第四十四条
第三十九条第一項の規定による処分があつた後においては、裁判所の許可を得なければ、更生手続開始の申立てを取り下げることができない。
(開始決定書)
第四十五条
更生手続開始の決定書には、決定の年月日時を記載しなければならない。
(開始と同時に定めるべき事項)
第四十六条
裁判所は、更生手続開始の決定と同時に、一人又は数人の管財人を選任し、且つ、左の事項を定めなければならない。
一 更生債権及び更生担保権の届出期間。但し、その期間は、決定の日から二週間以上四月以下でなければならない。
二 第一回の関係人集会の期日。但し、その期日は、決定の日から二月内でなければならない。
三 更生債権及び更生担保権調査の期日。但し、その期日と届出期間の末日との間には、一週間以上二月以下の期間を存しなければならない。
(開始の公告及び送達)
第四十七条
裁判所が更生手続開始の決定をしたときは、直ちに左の事項を公告しなければならない。
一 更生手続開始決定の主文
二 管財人の氏名又は名称
三 前条の規定により定めた期間及び期日
四 会社の債務者及び会社財産の所持者は、会社に弁済し、又はその財産を交付してはならない旨及び債務を負担すること又はその財産を所持することを一定の期間内に管財人に届け出るべき旨の命令
2 管財人、会社並びに知れている更生債権者、更生担保権者及び株主には、前項に掲げる事項及び更生手続を開始することの当否についての調査委員の意見の要旨を記載した書面、調査委員並びに知れている会社の債務者及び会社財産の所持者には、前項に掲げる事項を記載した書面を送達しなければならない。
3 前二項の規定は、第一項第二号から第四号までに掲げる事項に変更を生じた場合に準用する。但し、更生債権及び更生担保権調査の期日の変更については、公告することを要しない。
4 第一項第四号の届出を怠つた者は、これによつて会社財産に生じた損害を賠償しなければならない。
(開始の通知)
第四十八条
前条第一項に掲げる事項及び同条第二項の調査委員の意見の要旨は、会社の業務を監督する行政庁、法務大臣及び大蔵大臣に通知しなければならない。
2 前項の規定は、前条第一項第二号及び第三号に掲げる事項に変更を生じた場合に準用する。
(書類の備置)
第四十九条
更生手続開始の申立に関する書類は、利害関係人の閲覧に供するため裁判所に備えて置かなければならない。
(抗告)
第五十条
更生手続開始の申立についての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
2 第三十七条の規定は、更生手続開始申立棄却の決定に対して即時抗告があつた場合に準用する。
(開始決定の取消)
第五十一条
更生手続開始決定取消の決定が確定したときは、直ちにその主文を公告しなければならない。
2 第四十七条第二項及び第四十八条第一項の規定は、前項の場合に準用する。
3 第一項の場合においては、管財人は、共益債権を弁済し、異議のあるものについては、その債権者のために供託をしなければならない。
(開始後の資本の減少等)
第五十二条
更生手続開始後その終了までの間は、更生手続によらなければ、資本の減少、新株若しくは社債の発行、合併、解散、会社の組織の変更若しくは継続、利益若しくは利息の配当又は商法第二百九十三条ノ五第一項の金銭の分配をすることができない。
2 更生手続開始後その終了までの間において、更生手続によらないで会社の定款を変更するには、裁判所の許可を得なければならない。
(開始後の業務及び財産の管理)
第五十三条
更生手続開始の決定があつた場合においては、会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利は、管財人に専属する。ただし、第二百十一条第三項又は第二百四十八条の二第一項の規定によりその権利が取締役に付与されたときは、この限りでない。
(裁判所の許可を要する行為)
第五十四条
裁判所は、必要があると認めるときは、管財人が左に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならないものとすることができる。
一 会社財産の処分
二 財産の譲受
三 借財
四 第百三条の規定による契約の解除
五 訴の提起
六 和解及び仲裁契約
七 権利の放棄
八 共益債権及び取戻権の承認
九 第百六十一条の二の規定による留置権の消滅請求その他更生担保権に係る担保の変換
十 その他裁判所の指定する行為
(管財人の自己取引)
第五十四条の二
管財人は、裁判所の許可を得なければ、会社の製品その他の財産を譲り受け、会社に対し自己の製品その他の財産を譲り渡し、その他自己又は第三者のために会社と取引をすることができない。
第五十五条
前二条の許可を得ないでした行為は、無効とする。但し、善意の第三者に対抗することができない。
(開始後の会社の行為)
第五十六条
会社が更生手続開始後会社財産に関してした法律行為は、更生手続の関係においては、その効力を主張することができない。
2 会社が更生手続開始の日にした法律行為は、更生手続開始後にしたものと推定する。
(開始後の権利取得)
第五十七条
更生手続開始後、更生債権又は更生担保権につき会社財産に関し会社の行為によらないで権利を取得しても、その取得は、更生手続の関係においては、その効力を主張することができない。
2 前条第二項の規定は、前項の取得に準用する。
(開始後の登記及び登録)
第五十八条
不動産又は船舶に関し更生手続開始前に生じた登記原因に基き更生手続開始後にされた登記又は不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)第二条第一号(登記の申請に必要な手続上の条件が具備しないとき。)の規定による仮登記は、更生手続の関係においては、その効力を主張することができない。但し、登記権利者が更生手続開始の事実を知らないでした登記又は仮登記については、この限りでない。
2 前項の規定は、権利の設定、移転又は変更に関する登録又は仮登録に準用する。
3 第一項の規定は、企業担保権の設定、移転又は変更に関する登記に準用する。
(開始後の会社に対する弁済)
第五十九条
更生手続開始後その事実を知らないで会社にした弁済は、更生手続の関係においても、その効力を主張することができる。
2 更生手続開始後その事実を知つて会社にした弁済は、会社財産が受けた利益の限度においてのみ更生手続の関係においてその効力を主張することができる。
(善意、悪意の推定)
第六十条
前二条の規定の適用については、更生手続開始の公告前においてはその事実を知らなかつたものと推定し、公告後においてはその事実を知つていたものと推定する。
(共有関係)
第六十一条
会社が他人と共同して財産権を有する場合において、更生手続の開始があつたときは、管財人は、分割をしない定があるときでも分割の請求をすることができる。
2 前項の場合においては、他の共有者は、相当の償金を支払つて会社の持分を取得することができる。
(取戻権)
第六十二条
更生手続の開始は、会社に属しない財産を会社から取り戻す権利に影響を及ぼさない。
(売渡担保)
第六十三条
更生手続の開始前会社に財産を譲り渡した者は、担保の目的でしたことを理由としてその財産を取り戻すことができない。
(運送中の売渡物品の取戻)
第六十四条
売主が売買の目的たる物品を買主に発送した場合に、買主がまだ代金の全額を弁済せず、且つ、到達地でその物品を受け取らない間に買主について更生手続の開始があつたときは、売主は、その物品を取り戻すことができる。但し、管財人が裁判所の許可を得て代金の全額を支払つてその物品の引渡を請求することを妨げない。
2 前項の規定は、第百三条の規定の適用を妨げない。
(問屋の取戻権)
第六十五条
前条第一項の規定は、物品買入の委託を受けた問屋がその物品を委託者に発送した場合に準用する。
(賠償的取戻権)
第六十六条
会社が更生手続開始前に取戻権の目的たる財産を譲り渡した場合においては、取戻権者は、反対給付の請求権の移転を請求することができる。管財人が取戻権の目的たる財産を譲り渡した場合も、また同様である。
2 前項の場合において、管財人が反対給付を受けたときは、取戻権者は、管財人が反対給付として受けた財産の給付を請求することができる。
(他の手続の中止等)
第六十七条
更生手続開始の決定があつたときは、破産、和議開始、更生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立て並びに更生債権若しくは更生担保権に基づく会社財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、競売及び企業担保権の実行は、することができず、破産手続並びに更生債権若しくは更生担保権に基づき会社財産に対し既にされている強制執行、仮差押え、仮処分、競売の手続及び企業担保権の実行手続は、中止し、和議手続、整理手続及び特別清算手続は、その効力を失う。
2 更生手続開始の決定があつたときは、決定の日から更生計画認可若しくは更生手続終了までの間又は決定の日から一年間は、更生債権又は更生担保権に基く会社財産に対する国税徴収法による滞納処分、国税徴収の例による滞納処分及び租税債務担保のため提供された物件の処分は、することができず、既にされているこれらの処分は、中止する。
3 裁判所は、必要があると認めるときは、管財人の申立により又は職権で、前項の一年の期間を伸長することができる。この場合においては、裁判所は、あらかじめ徴収の権限を有する者の同意を得なければならない。
4 徴収の権限を有する者は、前項の同意をすることができる。
5 第二項及び第三項の規定により処分をすることができず、又は処分が中止されている期間中は、時効は、進行しない。
6 裁判所は、更生に支障をきたさないと認めるときは、管財人若しくは第百二十二条第一項に掲げる請求権につき徴収の権限を有する者の申立により又は職権で、中止した手続又は処分の続行を命ずることができ、更生のため必要があると認めるときは、管財人の申立により又は職権で、担保を供させ、又は供させないで、中止した手続又は処分の取消を命ずることができる。但し、破産手続については、この限りでない。
7 第一項の規定によつて効力を失つた手続のために会社に対して生じた債権及びその手続に関する会社に対する費用請求権並びに前項の規定によつて続行された手続又は処分に関する会社に対する費用請求権は、共益債権とする。
(訴訟手続の中断)
第六十八条
更生手続開始の決定があつたときは、会社の財産関係の訴訟手続は、中断する。
(受継)
第六十九条
前条の規定によつて中断した訴訟手続のうち更生債権又は更生担保権に関しないものは、管財人又は相手方においてこれを受け継ぐことができる。この場合においては、会社に対する訴訟費用請求権は、共益債権とする。
2 前項の規定による受継があるまでに更生手続が終了したときは、会社は、当然訴訟手続を受継する。
3 第一項の規定による受継があつた後に更生手続が終了したときは、訴訟手続は、中断する。この場合においては、会社は、訴訟手続を受け継がなければならない。
4 前項の場合においては、相手方においても、訴訟手続を受け継ぐことができる。
(行政庁に係属する事件)
第七十条
前二条の規定は、会社の財産関係の事件で更生手続開始当時行政庁に係属するものに準用する。
(移送)
第七十一条
更生裁判所は、更生手続開始当時会社の財産関係の訴訟が他の裁判所に係属するときは、決定でその移送を求めることができる。更生手続開始後他の裁判所に係属するに至つたものについても、また同様である。
2 前項の決定があつたときは、移送を求められた裁判所は、訴訟を更生裁判所に移送しなければならない。
3 前項の移送は、訴訟手続が中断又は中止中でもすることができる。
4 前三項の規定は、上級裁判所に係属する訴訟については、適用しない。
(裁判所の処分)
第七十二条
更生手続開始の決定があつた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、管財人の申立てにより又は職権で、次の処分をすることができる。
一 発起人若しくは取締役に対する株金払込請求権若しくは現物出資の目的たる財産若しくは会社の成立後に譲り受けることを約した財産の価額若しくは不足額の支払請求権又は発起人、取締役、監査役若しくは清算人の責任に基づく損害賠償請求権の査定
二 前号の株金払込請求権、財産の価額若しくは不足額の支払請求権又は損害賠償請求権につき発起人、取締役、監査役又は清算人の財産に対してする保全処分
2 緊急の必要があると認めるときは、裁判所は、更生手続開始の決定をする前でも、保全管理人の申立てにより又は職権で、前項第二号の処分をすることができる。
3 第三十九条第二項から第四項までの規定は、第一項第二号及び前項の規定による処分に準用する。
(株金払込請求権等の査定手続の開始)
第七十三条
前条第一項第一号の規定による査定の申立をするときは、その原因たる事実を疎明しなければならない。
2 裁判所が職権で査定手続を開始する場合においては、その旨の決定をしなければならない。
(査定に関する裁判)
第七十四条
査定の裁判及び査定の申立を棄却する裁判は、理由を附した決定でしなければならない。
2 裁判所は、決定前利害関係人を審尋しなければならない。
(異議の訴)
第七十五条
査定の裁判に不服がある者は、決定の送達を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴を提起することができる。
2 査定を認可し、又は変更した判決は、強制執行に関しては、給付を命ずる判決と同一の効力を有する。
3 第一項の訴は、更生裁判所の管轄に専属し、口頭弁論は、同項の期間を経過した後でなければ開始することができない。
4 数個の訴が同時に係属するときは、弁論及び裁判は、併合してしなければならない。
(査定の効力)
第七十六条
前条第一項の期間内に訴の提起がないときは、査定は、給付を命ずる確定判決と同一の効力を有する。訴が却下されたときも、また同様である。
(時効の中断)
第七十七条
査定の申立は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなす。職権による査定手続の開始も、また同様である。
(否認権)
第七十八条
左に掲げる行為は、更生手続開始後、会社財産のために否認することができる。
一 会社が更生債権者又は更生担保権者(以下本条中「更生債権者等」という。)を害することを知つてした行為。但し、これによつて利益を受けた者が、その行為の当時更生債権者等を害する事実を知らなかつたときは、この限りでない。
二 会社が支払の停止又は破産、和議開始、更生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立(以下本条中「支払の停止等」という。)のあつた後にした更生債権者等を害する行為及び担保の供与又は債務の消滅に関する行為。但し、これによつて利益を受けた者がその行為の当時支払の停止等のあつたこと又は更生債権者等を害する事実を知つていたときに限る。
三 会社が支払の停止等があつた後又はその前三十日内にした担保の供与又は債務の消滅に関する行為であつて、会社の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が会社の義務に属しないもの。但し、債権者においてその行為の当時会社が他の更生債権者等との平等を害することを知つてした事実を知らなかつたとき、支払の停止等があつた後の場合は、なお、その事実をも知らなかつたときは、この限りでない。
四 会社が支払の停止等があつた後又はその前六月内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為
2 前項の規定は、会社が第百二十一条第一項第五号及び第百二十二条第一項に掲げる請求権につき、その徴収の権限を有する者に対してした担保の供与又は債務の消滅に関する行為については、適用しない。
(手形債務支払の場合の例外)
第七十九条
前条第一項の規定は、会社から手形の支払を受けた者がその支払を受けなければ債務者の一人又は数人に対する手形上の権利を失う場合には、適用しない。
2 前項の場合において、最終の償還義務者又は手形の振出を委託した者が振出の当時支払の停止又は破産、和議開始、更生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立のあつたことを知り、又は過失によつて知らなかつたときは、管財人は、これらの者に会社が支払つた金額を償還させることができる。
(権利変動の対抗要件の否認)
第八十条
支払の停止又は破産、和議開始、更生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立があつた後権利の設定、移転又は変更をもつて第三者に対抗するために必要な行為をした場合において、その行為が権利の設定、移転又は変更があつた日から十五日を経過した後悪意でしたものであるときは、これを否認することができる。但し、登記及び登録については、仮登記又は仮登録があつた後本登記又は本登録をしたときは、この限りでない。
2 前項の規定は、権利取得の効力を生ずる登録に準用する。
(執行行為の否認)
第八十一条
否認権は、否認しようとする行為につき、執行力のある債務名義があるとき又はその行為が執行行為に基くものであるときでも、行うことを妨げない。
(否認権の行使)
第八十二条
否認権は、訴、否認の請求又は抗弁によつて、管財人が行う。
2 前項の訴及び否認の請求事件は、更生裁判所の管轄に専属する。
(否認の請求原因の疎明)
第八十三条
否認の請求をするときは、その原因たる事実を疎明しなければならない。
(否認の請求についての裁判)
第八十四条
否認の請求を認容し又はこれを棄却する裁判は、理由を附した決定でしなければならない。
2 裁判所は、決定前相手方又は転得者を審尋しなければならない。
(異議の訴)
第八十五条
否認の請求を認容する決定に不服がある者は、その送達を受けた日から一月の不変期間内に異議の訴を提起することができる。
2 前項の訴は、更生裁判所の管轄に専属する。
第八十六条
否認の請求を認容する決定を認可する判決が確定したときは、その決定は、確定判決と同一の効力を有する。前条第一項の期間内に訴の提起がないとき及び訴が却下されたときも、また同様である。
(否認権行使の効果)
第八十七条
否認権の行使は、会社の財産を原状に復させる。
2 第七十八条第一項第四号に掲げる行為が否認された場合において、相手方が行為の当時善意であつたときは、その現に受けている利益を償還すれば足りる。
(相手方の地位)
第八十八条
会社の行為が否認された場合において、その受けた反対給付が会社の財産中に現存するときは、相手方は、その返還を請求し、反対給付によつて生じた利益が現存するときは、その利益の限度において、共益債権者としてその権利を行うことができる。
2 反対給付によつて生じた利益が現存しないときは、相手方は、その価額の償還につき、更生債権者としてその権利を行うことができる。反対給付の価額が現存する利益より大である場合においては、その差額についても、また同様である。
(相手方の債権の復活)
第八十九条
会社の行為が否認された場合において、相手方がその受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、相手方の債権は、これによつて原状に復する。
(転得者に対する否認権)
第九十条
左に掲げる場合においては、否認権は、転得者に対しても、また行使することができる。
一 転得者が転得の当時各その前者に対する否認の原因のあることを知つていたとき。
二 転得者が無償行為又はこれと同視すべき有償行為によつて転得した場合において、各その前者に対して否認の原因があるとき。
2 第八十七条第二項の規定は、前項第二号の規定により否認権の行使があつた場合に準用する。
(支払停止を知つたことに基く否認の制限)
第九十一条
更生手続開始の申立の日から一年前にした行為は、支払停止の事実を知つたことを理由として否認することができない。
(否認権行使の期間)
第九十二条
否認権は、更生手続開始の日から二年を経過したときは、行使することができない。行為の日から二十年を経過したときも、また同様である。
(詐害行為取消訴訟等)
第九十三条
民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条(詐害行為取消権)の規定により更生債権者の提起した訴訟又は破産法の規定による否認の訴訟が更生手続開始当時係属するときは、その訴訟手続は、中断する。
2 第六十九条の規定は、前項の場合に準用する。この場合において、同条第二項及び第三項中「会社」とあるのは、「更生債権者又は破産管財人」と読み替えるものとする。
第三章 管財人及び調査委員
(管財人の選任)
第九十四条
管財人は、その職務を行うに適した者のうちから選任しなければならない。
第九十五条
信託会社、銀行その他の法人は、管財人となることができる。
2 法人が管財人に選任された場合には、その法人は、代表者のうち管財人の職務を行うべき者を指名し、裁判所に届け出なければならない。
(当事者適格)
第九十六条
会社の財産関係の訴については、管財人を原告又は被告とする。
2 前項の規定は、第二百十一条第三項又は第二百四十八条の二第一項の規定により会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利が取締役に付与された場合において、その後に提起された訴えについては、適用しない。
3 第六十八条及び第六十九条の規定は、第二百十一条第三項の規定による更生計画の定め又は第二百四十八条の二第一項の規定による決定が取り消された場合に、前項の訴えについて準用する。
(数人の管財人の職務執行)
第九十七条
管財人が数人あるときは、共同してその職務を行う。但し、裁判所の許可を得て職務を分掌することができる。
2 管財人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
(管財人代理)
第九十八条
管財人は、必要があるときは、その職務を行わせるため、自己の責任で管財人代理を選任することができる。
2 前項の管財人代理の選任は、裁判所の許可を得なければならない。
(管財人の調査)
第九十八条の二
管財人は、会社の取締役、監査役及び支配人その他の使用人に対し、会社の業務及び財産の状況につき報告を求め、会社の帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
2 管財人は、必要があるときは、裁判所の許可を得て鑑定人を選任することができる。
3 管財人は、調査をするにあたり、裁判所の許可を得て執行官の援助を求めることができる。
(管財人の監督等)
第九十八条の三
管財人は、裁判所の監督に属する。
2 裁判所は、管財人に対しその選任を証する書面を交付しなければならない。
3 管財人は、その職務を行なうにあたり、利害関係人の請求があるときは、前項の書面を示さなければならない。
(管財人の注意義務)
第九十八条の四
管財人は、善良な管理者の注意をもつてその職務を行なわなければならない。
2 管財人が前項の注意を怠つたときは、その管財人は、利害関係人に対して連帯して損害賠償の責めに任ずる。
(管財人の解任)
第九十八条の五
重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、管財人を解任することができる。この場合においては、その管財人を審尋しなければならない。
(計算の報告義務)
第九十九条
管財人の任務が終了した場合においては、管財人又はその承継人は、遅滞なく裁判所に計算の報告をしなければならない。
(任務終了の場合の緊急処分)
第百条
管財人の任務終了の場合において、急迫の事情があるときは、管財人又はその承継人は、後任の管財人又は会社が財産を管理することができるまで必要な処分をしなければならない。
(調査委員)
第百一条
裁判所は、必要があると認めるときは、一人又は数人の調査委員を選任することができる。
2 調査委員は、裁判所の命ずるところにより、次に掲げる事項について、調査してその結果を裁判所に報告し、又は裁判所に意見を陳述しなければならない。
一 更生手続開始の原因たる事実及び第三十八条第二号から第七号までに掲げる事由の有無、会社の業務及び財産の状況その他更生手続の開始に必要な事項並びに更生手続を開始することの当否
二 第三十九条第一項若しくは第二項又は第七十二条に定める処分を必要とする事情の有無及びその処分の要否
三 管財人の作成する財産目録及び貸借対照表の当否並びに会社の業務及び財産の管理状況その他裁判所の命ずる事項に関する管財人の報告の当否
四 更生計画案又は更生計画の当否
五 その他更生事件に関し調査委員による調査報告又は意見の陳述を必要とする事項
3 調査委員は、その職務を行なうに適した者で利害関係のないもののうちから、選任しなければならない。
第百一条の二
調査委員の調査報告又は意見に関する書類は、利害関係人の閲覧に供するため裁判所に備えて置かなければならない。
第百一条の三
第九十五条、第九十七条第一項及び第九十八条の二から第九十八条の五までの規定は、調査委員に準用する。
第四章 更生債権者、更生担保権者及び株主
(更生債権)
第百二条
会社に対し更生手続開始前の原因に基いて生じた財産上の請求権は、更生債権とする。
(双務契約)
第百三条
双務契約について会社及びその相手方が更生手続開始当時まだともにその履行を完了しないときは、管財人は、契約を解除し、又は会社の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。
2 前項の場合においては、相手方は、管財人に対し契約を解除するか又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。管財人がその催告をうけた後三十日以内に確答をしないときは、管財人は、前項の規定による解除権を放棄したものとみなす。
3 裁判所は、管財人若しくは相手方の申立により又は職権で、前項の期間を伸長し、又は短縮することができる。
4 前三項の規定は、労働協約には適用がないものとする。
第百四条
前条の規定によつて契約の解除があつたときは、相手方は、損害の賠償につき更生債権者としてその権利を行うことができる。
2 会社の受けた反対給付が会社財産中に現存するときは、相手方は、その返還を請求し、現存しないときは、相手方は、その価額につき共益債権者としてその権利を行うことができる。
(継続的給付を目的とする双務契約)
第百四条の二
会社に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、更生手続開始の申立て前の給付に係る更生債権又は更生担保権について弁済がないことを理由としては、更生手続開始後は、その義務の履行を拒むことができない。
2 前項の双務契約の相手方が更生手続開始の申立て後更生手続開始前にした給付に係る請求権(一定期間ごとに債権額を算定すべき継続的給付については、申立ての日の属する期間内の給付に係る請求権を含む。)は、共益債権とする。
3 前二項の規定は、労働契約には、適用がないものとする。
(開始後の手形の引受等)
第百五条
為替手形の振出人又は裏書人たる会社について更生手続が開始された場合において、支払人又は予備支払人がその事実を知らないで引受又は支払をしたときは、その支払人又は予備支払人は、これによつて生じた債権につき更生債権者としてその権利を行うことができる。
2 前項の規定は、小切手及び金銭その他の物又は有価証券の給付を目的とする有価証券に準用する。
3 第六十条の規定は、前二項の規定の適用について準用する。
(賃貸借契約等)
第百六条
賃貸人たる会社につき更生手続が開始された場合においては、借賃の前払又は借賃の債権の処分は、更生手続開始の時における当期及び次期に関するものを除く外、更生手続の関係においては、その効力を主張することができない。
2 前項の規定により更生手続の関係においてその効力を主張することができないために損害を受けた者は、その損害の賠償につき更生債権者としてその権利を行うことができる。
3 前二項の規定は、地上権及び永小作権について準用する。
(交互計算)
第百七条
交互計算は、当事者の一方に更生手続の開始があつたときは、終了する。この場合においては、各当事者は、計算を閉鎖し、残額の支払を請求することができる。
2 前項の規定による請求権は、相手方が有するときは、更生債権とする。
(会社が他の者とともに全部義務を負う場合)
第百八条
数人が各自全部の履行をする義務を負う場合において、その全員又はそのうちの数人について更生手続が開始されたときは、債権者は、更生手続開始当時有する債権の全額につき各更生手続において更生債権者としてその権利を行うことができる。
(会社が保証債務を負う場合)
第百九条
保証人たる会社について更生手続が開始されたときは、債権者は、更生手続開始当時有する債権の全額につき更生債権者としてその権利を行うことができる。
(将来の求償権)
第百十条
数人が各自全部の履行をする義務を負う場合において、その全員又はそのうちの数人若しくは一人について更生手続が開始されたときは、その者に対して将来行うことがある求償権を有する者は、その全額につき更生債権者としてその権利を行うことができる。但し、債権者がその債権の全額につき更生債権者としてその権利を行つたときは、この限りでない。
2 前項但書の場合において同項の求償権を有する者が弁済をしたときは、その弁済の割合に応じて債権者の権利を取得する。
3 前二項の規定は、担保を供した第三者が会社に対して将来行うことがある求償権について準用する。
(一部の保証の場合)
第百十一条
第百八条、第百九条及び前条第一項、第二項の規定は、数人の保証人が各自債務の一部を負担すべき場合において、その負担部分について準用する。
(更生債権の弁済の禁止)
第百十二条
更生債権については、更生手続によらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。ただし、次条第一項及び第四項に掲げる請求権については、管財人が裁判所の許可を得て弁済をする場合、第百二十二条第一項に掲げる請求権については、その滞納処分若しくは担保物件の処分又はその続行が許される場合、滞納処分による差押を受けた会社の債権(差押の効力の及ぶ債権を含む。)につき当該滞納処分の中止中に第三債務者が徴収の権限を有する者に任意に給付をする場合、徴収の権限を有する者が還付金又は過誤納金をもつて充当をする場合及び管財人が裁判所の許可を得て弁済をする場合は、この限りでない。
(更生債権の弁済の許可)
第百十二条の二
会社を主要な取引先とする中小企業者が、その有する更生債権の弁済を受けなければ、事業の継続に著しい支障をきたす虞れがあるときは、裁判所は、更生計画認可の決定をする前でも、管財人の申立てにより又は職権で、その全部又は一部の弁済をすることを許可することができる。
2 裁判所は、前項の規定による許可をするについては、会社と同項の中小企業者との取引の状況、会社の資産状態、利害関係人の利害その他一切の事情を考慮しなければならない。
3 管財人は、更生債権者から第一項の申立てをすべきことを求められたときは、直ちにその旨を裁判所に報告し、なお、その申立てをしないこととしたときは、遅滞なくその事情を裁判所に報告しなければならない。
4 少額の更生債権を早期に弁済することにより更生手続を円滑に進行することができるときは、裁判所は、更生計画認可の決定をする前でも、管財人の申立てにより、その弁済をすることを許可することができる。
(更生債権者の権利)
第百十三条
更生債権者は、その有する更生債権をもつて更生手続に参加することができる。
2 更生債権者は、次条から第百十八条までに掲げる債権についてはこれらの規定によつて算定した金額に応じ、その他の債権については、その債権額に応じて議決権を有する。
(期限附債権で無利息のもの)
第百十四条
期限附債権が無利息であつてその期限が更生手続開始後に到来すべき場合においては、更生手続開始の時から期限に至るまでの債権に対する法定利息を債権額から控除するものとする。
(定期金債権)
第百十五条
前条の規定は、金額及び存続期間が確定している定期金債権に準用する。但し、その総額が法定利率によりその定期金に相当する利息を生ずべき元本額をこえるときは、その元本額による。
(不確定期限債権等)
第百十六条
第百十四条の場合において期限が不確定であるときは、更生手続開始の時における評価額による。定期金債権の金額又は存続期間が不確定であるときも、また同様である。
(金銭を目的としない債権等)
第百十七条
債権の目的が金銭でないとき、又は金銭ではあるがその額が不確定であるとき、若しくは外国の通貨をもつて定めたものであるときは、更生手続開始の時における評価額による。
(条件附債権及び将来の請求権)
第百十八条
条件附債権は、更生手続開始の時における評価額による。
2 前項の規定は、会社に対して行うことがある将来の請求権に準用する。
(源泉徴収所得税等)
第百十九条
更生債権のうち、源泉徴収に係る所得税、消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方道路税、石油ガス税、石油税、地方消費税、申告納付の方法により徴収する道府県たばこ税(都たばこ税を含む。)及び市町村たばこ税(特別区たばこ税を含む。)並びに特別徴収義務者が徴収して納入すべき地方税で、更生手続開始当時まだ納期限の到来していないものは、共益債権として請求することができる。更生手続開始前六月間の会社の使用人の給料並びに更生手続開始前の原因に基づいて生じた会社の使用人の預り金及び身元保証金の返還請求権も、また同様である。
(使用人の退職手当の請求権)
第百十九条の二
更生計画認可の決定前に退職した会社の使用人の退職手当の請求権は、退職前六月間の給料の総額に相当する額又はその退職手当の額の三分の一に相当する額のうちいずれか多い額を限度として、共益債権とする。
2 前項の退職手当の請求権で定期金債権であるものは、同項の規定にかかわらず、各期における定期金につき、その額の三分の一に相当する額を共益債権とする。
3 前二項の規定は、第二百八条の規定により共益債権とされる退職手当の請求権については、適用しない。
(開始前の借入金等)
第百十九条の三
会社の取締役又は保全管理人が更生手続開始の申立て後更生手続開始前に、裁判所の許可を得て、資金の借入れ、原材料の購入その他会社の事業の継続に欠くことができない行為をしたときは、その行為によつて生じた請求権は、共益債権とする。
(優先権の期間の計算)
第百二十条
優先権が一定の期間内の債権額につき存在する場合においては、その期間は、更生手続開始の時からさかのぼつて計算する。
(劣後的更生債権)
第百二十一条
左に掲げる請求権は、更生債権とする。
一 更生手続開始後の利息
二 更生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金
三 更生手続参加の費用
四 前号に掲げるものの外、更生手続開始後の原因に基いて生じた財産上の請求権で共益債権でないもの
五 更生手続開始前の罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金及び過料
六 更生手続開始前の租税のうち、これを免かれ、若しくは免かれようとし、不正の行為によりその還付を受け、又は徴収して納付若しくは納入すべきものを納付若しくは納入しなかつたことにより、更生手続開始後懲役若しくは罰金に処せられ、又は国税犯則取締法(明治三十三年法律第六十七号)第十四条第一項(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)において準用する場合を含む。)(通告処分)の規定による通告の旨を履行した場合における、免かれ、免かれようとし、還付を受け、又は納付若しくは納入しなかつた額の租税で届出のないもの
2 前項の請求権は、他の更生債権に後れる。但し、国税徴収法又は国税徴収の例によつて徴収することのできる請求権で、同項第六号に掲げるもの以外のものは、この限りでない。
3 第一項第五号の請求権については、更生計画において減免その他権利に影響を及ぼす定をすることができない。
(租税等の請求権)
第百二十二条
更生計画において、国税徴収法又は国税徴収の例によつて徴収することのできる請求権につき、三年以下の期間の納税の猶予又は滞納処分による財産の換価の猶予の定をするには、徴収の権限を有する者の意見を聞かなければならず、減免、三年をこえる期間の納税の猶予又は滞納処分による財産の換価の猶予、債務の承継その他権利に影響を及ぼす定をするには、徴収の権限を有する者の同意を得なければならない。
2 更生手続開始の決定の日から一年を経過する日(その日までに更生計画認可の決定があるときは、その決定の日)までの間に生ずる延滞税、利子税又は延滞金について、前項の規定により徴収の権限を有する者の同意を要するものとされる定めをするには、同項の規定にかかわらず、その者の意見を聞くものとする。納税の猶予又は滞納処分による財産の換価の猶予の定めをする場合におけるその猶予期間に係る延滞税又は延滞金についても、また同様である。
3 徴収の権限を有する者は、第一項の同意をすることができる。
4 第一項又は第二項の規定により納税の猶予又は滞納処分による財産の換価の猶予がされている期間中は、時効は、進行しない。
(更生担保権)
第百二十三条
更生債権又は更生手続開始前の原因に基いて生じた会社以外の者に対する財産上の請求権で、更生手続開始当時会社財産の上に存する特別の先取特権、質権、抵当権又は商法による留置権で担保された範囲のものは、更生担保権とする。ただし、利息又は不履行による損害賠償若しくは違約金の請求権については、更生手続開始後一年を経過する時(その時までに更生計画認可の決定があるときは、その決定の時)までに生ずるものに限る。
2 前項ただし書の規定は、社債に関しては、適用しない。
3 第百八条から第百十二条の二までの規定は、更生担保権に準用する。
(更生担保権者の権利)
第百二十四条
更生担保権者は、その有する更生担保権をもつて更生手続に参加することができる。
2 更生担保権者は、その債権額のうち担保権の目的の価額(先順位の担保権があるときは、その担保権によつて担保された債権額を担保権の目的の価額から控除した額。以下本条中同じ。)をこえる部分については、更生債権者として更生手続に参加することができる。
3 更生担保権者は、その担保権の目的の価額、被担保債権の額が担保権の目的の価額より少いときは、その被担保債権の額に応じて議決権を有する。ただし、更生手続開始後の利息並びに不履行による損害賠償及び違約金の額は、被担保債権の額に算入しない。
4 第百十三条第二項及び第百十四条から第百十八条までの規定は、更生担保権者の議決権に準用する。
(更生担保権に係る担保権の目的の価額)
第百二十四条の二
更生担保権に係る担保権の目的の価額は、会社の事業が継続するものとして評定した更生手続開始の時における価額とする。
(更生債権の届出)
第百二十五条
更生手続に参加しようとする更生債権者は、裁判所の定めた届出期間内に、氏名、住所、各債権の内容及び原因、議決権の額並びに一般の優先権のある債権又は第百二十一条第一項に掲げる債権(以下「劣後的債権」という。)であるときは、その旨を裁判所に届け出、且つ、証拠書類又はその謄本若しくは抄本を提出しなければならない。
2 各債権のうち一般の優先権のある部分及び劣後的債権に係る部分は、別に届出をしなければならない。
3 更生債権について更生手続開始当時訴訟が係属するときは、第一項に定める事項の外、裁判所、当事者、件名及び番号を届け出なければならない。
4 更生債権の消滅その他届け出た事項について他の更生債権者の利益を害しない変更が生じたときは、更生債権者又は管財人は、遅滞なくその旨を裁判所に届け出、かつ、証拠書類又はその謄本若しくは抄本を提出しなければならない。
(更生担保権の届出)
第百二十六条
更生手続に参加しようとする更生担保権者は、裁判所の定めた届出期間内に、氏名、住所、各更生担保権の内容及び原因、担保権の目的及びその価額、議決権の額並びに会社以外の者が債務者であるときは、その氏名及び住所を裁判所に届け出、且つ、証拠書類又はその謄本若しくは抄本を提出しなければならない。
2 前条第三項及び第四項の規定は、更生担保権について準用する。
(届出の追完等)
第百二十七条
更生債権者又は更生担保権者がその責めに帰することのできない事由によつて裁判所の定めた届出期間内に届出をすることができなかつた場合においては、その事由のやんだ後一月内に限り、その届出の追完をすることができる。この期間については、民事訴訟法第九十六条第一項(期間の伸縮)の規定は、準用しない。
2 届出期間経過後に生じた更生債権及び更生担保権については、その権利の発生した後一月の不変期間内に、届出をしなければならない。
3 前二項の届出は、更生計画案審理のための関係人集会が終つた後は、することができない。
4 第一項及び前項の規定は、更生債権者又は更生担保権者が、その責に帰することのできない事由によつて、届け出た事項について他の更生債権者又は更生担保権者の利益を害すべき変更を加える場合に準用する。
(退職手当の請求権の届出の特例)
第百二十七条の二
会社の使用人の退職手当の請求権については、その届出は、退職した後にするものとする。
2 会社の使用人が裁判所の定めた届出期間経過後更生計画認可の決定前に退職したときは、その退職手当の請求権の届出は、退職後一月の不変期間内にすれば足りる。
3 前二項の規定は、会社の取締役、代表取締役又は監査役の退職手当の請求権に準用する。この場合において、前項中「退職したとき」とあるのは、「退職したとき、又は第二百五十二条第三項の規定により解任されたとき」と読み替えるものとする。
(届出名義の変更)
第百二十八条
届出をした更生債権又は更生担保権を取得した者は、届出期間が経過した後でも、届出名義の変更を受けることができる。
2 前項の届出名義の変更を受けようとする者は、氏名、住所、取得した権利並びにその取得の日時及び原因を裁判所に届け出、且つ、証拠書類又はその謄本若しくは抄本を提出しなければならない。
(株主の権利)
第百二十九条
株主は、その有する株式をもつて更生手続に参加することができる。
2 株主は、その株式の数に応じて議決権を有する。
3 会社に破産の原因たる事実があるときは、株主は、議決権を有しない。
第百三十条
記名株式を有する株主として更生手続に参加することができる者は、株主名簿又は端株原簿の記載によつて定める。
2 裁判所は、前項の規定により更生手続に参加することができる者を定めるため必要があるときは、二月を超えない期間を定め、会社に対してその期間内株主名簿の記載の変更をしないこと又は端株券を発行しないことを命ずることができる。
3 裁判所は、前項の期間をその二週間前に公告しなければならない。
第百三十一条
無記名式の株券又は端株券を有する者が更生手続に参加するには、管財人に、株券又は端株券を預託し、かつ、その氏名及び住所を届け出なければならない。
(株主の参加の許可)
第百三十一条の二
裁判所は、株主名簿若しくは端株原簿に記載のない株主又は前条の規定による株券若しくは端株券の預託をすることができない株主の申立てにより、その株主が更生手続に参加することを許可することができる。この場合においては、その許可に係る株式については、前二条の規定にかかわらず、許可を受けた者以外の者は、株主として更生手続に参加することができない。
2 裁判所は、株主の申立てにより又は職権で、前項の規定による決定を変更し、又は取り消すことができる。
3 前二項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(更生債権者表及び更生担保権者表)
第百三十二条
裁判所書記官は、更生債権者表及び更生担保権者表を作り、権利の性質に応じ適宜分類して、それぞれ左の事項を記載しなければならない。
更生債権者表
一 更生債権者の氏名及び住所
二 更生債権の内容及び原因
三 議決権の額
四 優先権のある債権又は劣後的債権であるときは、その旨
更生担保権者表
一 更生担保権者の氏名及び住所
二 更生担保権の内容及び原因、担保権の目的及びその価額並びに会社以外の者が債務者であるときは、その氏名及び住所
三 議決権の額
(謄本の交付)
第百三十三条
裁判所書記官は、更生債権者表及び更生担保権者表の謄本を管財人に交付しなければならない。
(権利届出の書類の備置き等)
第百三十四条
更生債権及び更生担保権の届出に関する書類、更生債権者表並びに更生担保権者表は、利害関係人の閲覧に供するため裁判所に備えて置かなければならない。
2 管財人は、利害関係人の請求があつたときは、第百三十一条の規定による株式の届出に関する書類を閲覧させなければならない。
(更生債権及び更生担保権調査の期日)
第百三十五条
更生債権及び更生担保権調査の期日においては、届出のあつた各更生債権及び更生担保権について、第百三十二条に掲げる事項を調査する。
(関係人の出頭)
第百三十六条
会社の代表者は、更生債権及び更生担保権調査の期日に出頭して意見を述べなければならない。但し、正当の事由があるときは、代理人を出頭させることができる。
2 届出をした更生債権者及び更生担保権者並びに株主又はその代理人は、前項の調査の期日に出頭して他の更生債権又は更生担保権について異議を述べることができる。
3 代理人は、代理権を証する書面を提出しなければならない。
(管財人の出頭)
第百三十七条
更生債権及び更生担保権の調査は、管財人の出頭がなければすることができない。
(届出期間後に届出のあつた更生債権等の調査)
第百三十八条
第百二十七条の規定により届出のあつた更生債権及び更生担保権については、管財人、更生債権者、更生担保権者及び株主の異議がないときに限り、更生債権及び更生担保権調査の一般期日においてその調査をすることができる。届出期間経過後に届出のあつたその他の更生債権及び更生担保権についても、また同様である。
2 前項に掲げる者の異議があつたときは、裁判所は、第百二十七条の規定により届出のあつた更生債権及び更生担保権については、その調査をするため特別期日を定めなければならない。この場合においては、費用は、その更生債権者又は更生担保権者の負担とする。
(届出事項の変更)
第百三十九条
前条の規定は、更生債権者又は更生担保権者が届け出た事項について届出期間経過後他の更生債権者又は更生担保権者の利益を害すべき変更を加えた場合に準用する。
(一般期日後に届出の追完をした更生債権等の調査)
第百四十条
第百三十八条第二項の規定は、更生債権者又は更生担保権者が第百二十七条の規定によつて、更生債権及び更生担保権調査の一般期日後に、届け出、又は届け出た事項について変更を加えた場合に準用する。
(更生債権及び更生担保権調査の特別期日)
第百四十一条
更生債権及び更生担保権調査の特別期日を定める決定は、管財人、会社、届出をした更生債権者及び更生担保権者並びに株主に送達しなければならない。
2 前項の送達は、書類を通常の取扱による郵便に付してすることができる。
3 第十四条第四項及び第五項の規定は、前項の場合に準用する。
4 会社が無記名式の株券又は端株券を発行しているときは、裁判所は、第一項の期日を公告しなければならない。この場合には、第十五条第二項の規定は、適用しない。
(期日の変更、延期及び続行)
第百四十二条
前条の規定は、更生債権及び更生担保権調査の期日の変更並びに更生債権及び更生担保権調査の延期及び続行に準用する。但し、言渡があつたときは、送達をすることを要しない。
(更生債権及び更生担保権等の確定)
第百四十三条
更生債権及び更生担保権調査の期日において管財人、更生債権者、更生担保権者及び株主の異議がなかつたときは、更生債権及び更生担保権の内容、議決権の額並びに優先権のある債権又は劣後的債権については、優先権のあること又は劣後的であることは、確定する。
(退職手当の請求権の調査及び確定の特例)
第百四十三条の二
第百二十七条の二第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定による届出があつた場合においては、その届出があつた退職手当の請求権については、第百三十五条から第百四十二条までの規定による調査は行なわず、裁判所は、直ちにその届出があつた旨を管財人及び会社に通知しなければならない。その届出があつた事項について他の更生債権者又は更生担保権者の利益を害すべき変更が加えられた場合も、また同様である。
2 前条の規定は、前項の通知があつた日から三日内に同項の退職手当の請求権について管財人の異議がなかつた場合に準用する。
(更生債権者表及び更生担保権者表への記載)
第百四十四条
裁判所は、更生債権及び更生担保権調査の結果を更生債権者表及び更生担保権者表に記載しなければならない。会社の述べた異議も、また同様である。
2 裁判所書記官は、確定した更生債権及び更生担保権の証書に確定の旨を記載し、裁判所の印を押さなければならない。
(記載の効力)
第百四十五条
確定した更生債権及び更生担保権については、更生債権者表及び更生担保権者表の記載は、更生債権者、更生担保権者及び株主の全員に対して確定判決と同一の効力を有する。
(異議の通知)
第百四十六条
更生債権者又は更生担保権者が更生債権及び更生担保権調査の期日に出頭しない場合において、その権利について異議があつたときは、裁判所は、これをその権利者に通知しなければならない。第百四十三条の二第一項の規定による通知があつた日から三日内に同項の退職手当の請求権について管財人の異議があつた場合も、また同様である。
(更生債権又は更生担保権確定の訴)
第百四十七条
異議(会社の異議を除く。)のある更生債権又は更生担保権については、その権利者は、その異議者に対し、訴をもつてその権利の確定を求めることができる。
2 前項の訴は、その権利の調査(前条後段の場合にあつては、同条後段の規定による通知)のあつた日から一月内に提起しなければならない。
3 異議者が数人あるときは、これを共同被告とする。
4 裁判所は、更生債権者又は更生担保権者の請求により、その権利に関する更生債権者表又は更生担保権者表の抄本を交付しなければならない。
(更生債権又は更生担保権確定訴訟の管轄)
第百四十八条
更生債権又は更生担保権確定の訴は、更生裁判所の管轄に専属する。
(異議のある更生債権又は更生担保権に関する訴訟の受継)
第百四十九条
第百四十七条第一項に掲げる更生債権又は更生担保権に関し更生手続開始決定当時訴訟が係属する場合において、更生債権者又は更生担保権者がその権利の確定を求めようとするときは、異議者を相手方として訴訟を受け継がなければならない。
2 第百四十七条第二項から第四項までの規定は、前項の場合に準用する。
(請求原因の制限)
第百五十条
更生債権者又は更生担保権者は、第百四十四条第一項の規定により更生債権者表又は更生担保権者表に記載した事項についてのみ、権利確定の訴を提起し、又は前条の規定により訴訟を受け継ぐことができる。
(更生債権者等のみの異議の主張)
第百五十一条
第百四十七条第一項に掲げる更生債権又は更生担保権のうち、更生債権者、更生担保権者又は株主のみに異議のあるものについては、異議者は、訴訟手続によつてのみその異議を主張することができる。
2 第百四十七条第二項から第四項まで及び第百四十八条から前条までの規定は、前項の場合に準用する。
(有名義債権等に対する異議の主張)
第百五十二条
第百四十七条第一項に掲げる更生債権又は更生担保権のうち、執行力ある債務名義又は終局判決のあるものについては、異議者は、会社がすることのできる訴訟手続によつてのみその異議を主張することができる。
2 第百四十七条第二項から第四項まで、第百四十九条及び第百五十条の規定は、前項の場合に準用する。
(更生債権又は更生担保権の確定に関する訴訟の結果の記載)
第百五十三条
裁判所は、管財人、更生債権者、更生担保権者又は株主の申立により、更生債権又は更生担保権の確定に関する訴訟の結果を更生債権者表又は更生担保権者表に記載しなければならない。
(更生債権又は更生担保権の確定に関する訴訟の判決の効力)
第百五十四条
更生債権又は更生担保権の確定に関する訴訟についてした判決は、更生債権者、更生担保権者及び株主の全員に対して、その効力を有する。
(訴訟費用の償還)
第百五十五条
会社財産が更生債権又は更生担保権の確定に関する訴訟によつて利益を受けたときは、異議を主張した更生債権者、更生担保権者又は株主は、その利益の限度において共益債権者として訴訟費用の償還を請求することができる。
(更生債権又は更生担保権の確定に関する訴訟の目的の価額)
第百五十六条
更生債権又は更生担保権の確定に関する訴訟の目的の価額は、更生計画によつて受ける利益の予定額を標準として更生裁判所が定める。
(罰金、租税等の届出)
第百五十七条
第百二十一条第一項第五号及び第百二十二条第一項に掲げる請求権については、国又は公共団体は、遅滞なくその額、原因及び担保権の内容を裁判所に届け出なければならない。
2 第百四十四条第一項の規定は、前項の規定によつて届出のあつた請求権に準用する。
(不服の申立の許される場合)
第百五十八条
管財人は、前条第一項の規定によつて届出のあつた請求権の原因が審査請求、訴訟その他の不服の申立を許す処分であるときは、その請求権について、会社がすることのできる方法で不服を申し立てることができる。
2 第百四十九条、第百五十三条及び第百五十四条の規定は、前項の不服の申立に準用する。
(更生債権者等の分類)
第百五十九条
更生債権者、更生担保権者及び株主は、更生計画案の作成及び決議のために、左の組に分類されるものとする。但し、第百二十一条第一項第五号及び第百二十二条第一項に掲げる請求権を有する者は、この限りでない。
一 更生担保権者
二 一般の先取特権その他一般の優先権のある債権を有する更生債権者
三 前号及び次号に掲げる更生債権者以外の更生債権者
四 劣後的債権を有する更生債権者
五 残余財産の分配に関し優先的内容を有する種類の株式を有する株主
六 前号に掲げる株主以外の株主
2 裁判所は、前項各号に掲げる者の有する権利の性質及び利害の関係を考慮して、二以上の組の者を一の組とし、又は一の組の者を二以上の組として分類することができる。但し、更生債権者、更生担保権者及び株主は、それぞれ別の組としなければならない。
3 管財人、会社、届出をした更生債権者及び更生担保権者並びに株主は、前項の分類につき意見を述べることができる。
4 裁判所は、計画案を決議に付するまでは、何時でも分類を変更することができる。
5 第百四十一条第一項から第三項までの規定は、第二項及び前項の規定による決定の送達に準用する。但し、関係人集会又は更生債権及び更生担保権調査の期日において言渡があつたときは、送達をすることを要しない。
(代理委員)
第百六十条
更生債権者、更生担保権者又は株主は、裁判所の許可を得て、それぞれ共同して又は各別に、一人又は数人の代理委員を選任することができる。
2 代理委員の権限は、書面で証明しなければならない。
3 代理委員は、これを選任した更生債権者、更生担保権者又は株主のために、更生手続に属する一切の行為をすることができる。
4 代理委員が数人あるときは、共同してその権限を行使する。但し、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
5 代理委員の権限の行使が著しく不公正であると認めるときは、裁判所は、第一項の許可を取り消すことができる。
6 更生債権者、更生担保権者又は株主は、代理委員を解任したときは、遅滞なく裁判所にその旨を届け出なければならない。
第百六十一条
削除
(商法による留置権の消滅請求)
第百六十一条の二
管財人は、更生手続開始当時会社財産につき商法による留置権を有する者に対して、その留置権によつて担保された債権額、その債権額が留置権の目的の価額をこえるときは、その目的の価額に相当する金銭を供託して、留置権の消滅を請求することができる。
2 前項の規定により留置権が消滅したときは、その留置権を有していた者は、同項の供託金の上に質権者と同一の権利を有する。
(相殺権)
第百六十二条
更生債権者又は更生担保権者が更生手続開始当時会社に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が更生債権及び更生担保権の届出期間の満了前に相殺に適するようになつたときは、更生債権者又は更生担保権者は、その期間内に限り更生手続によらないで相殺をすることができる。債務が期限附であるときも、また同様である。
2 前項の規定による相殺は、更生債権者又は更生担保権者の更生手続開始後の賃料債務については、当期及び次期のものに限り、これをすることができる。但し、敷金があるときは、その後の賃料債務についても、相殺をすることができる。
3 前項の規定は、地代及び小作料に準用する。
(相殺の禁止)
第百六十三条
左の場合においては、相殺をすることができない。
一 更生債権者又は更生担保権者が更生手続開始後会社に対して債務を負担したとき。
二 更生債権者又は更生担保権者が支払の停止又は破産、和議開始、更生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立てがあつたことを知つて会社に対して債務を負担したとき。ただし、その負担が法定の原因に基づくとき、更生債権者若しくは更生担保権者が支払の停止若しくは破産、和議開始、更生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立てがあつたことを知つた時より前に生じた原因に基づくとき、又は破産宣告、和議開始、更生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始のいずれの時よりも一年以上前に生じた原因に基づくときは、この限りでない。
三 会社の債務者が更生手続開始後他人の更生債権又は更生担保権を取得したとき。
四 会社の債務者が支払の停止又は破産、和議開始、更生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立があつたことを知つて更生債権又は更生担保権を取得したとき。但し、その取得が法定の原因に基くとき、債務者が支払の停止若しくは破産、和議開始、更生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始の申立があつたことを知つた時より前に生じた原因に基くとき、又は破産宣告、和議開始、更生手続開始、整理開始若しくは特別清算開始のいずれの時よりも一年以上前に生じた原因に基くときは、この限りでない。
第五章 関係人集会
(期日の呼出)
第百六十四条
関係人集会の期日には、管財人、会社、届出をした更生債権者及び更生担保権者、株主並びに更生のために債務を負担し又は担保を供する者があるときは、その者を呼び出さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、議決権を行使することができない更生債権者、更生担保権者及び株主は、呼び出さないことができる。第一回の関係人集会については、第四十七条第二項の規定により送達を受けた者も、また同様である。
(期日の通知)
第百六十五条
関係人集会の期日は、会社の業務を監督する行政庁、法務大臣及び大蔵大臣に通知しなければならない。
(裁判所の指揮)
第百六十六条
関係人集会は、裁判所が指揮する。
(期日及び目的の公告)
第百六十七条
裁判所は、関係人集会の期日及び会議の目的たる事項を公告しなければならない。
2 関係人集会の延期又は続行について言渡があつたときは、送達又は公告をすることを要しない。
(期日の併合)
第百六十八条
裁判所は、相当と認めるときは、管財人の申立により又は職権で、関係人集会並びに更生債権及び更生担保権調査の各期日を併合することができる。
(議決権に対する異議)
第百六十九条
管財人、届出をした更生債権者及び更生担保権者並びに株主は、更生債権者、更生担保権者及び株主の議決権につき異議を述べることができる。但し、前章の調査手続において確定した更生債権及び更生担保権を有する更生債権者及び更生担保権者の議決権については、この限りでない。
(議決権の行使)
第百七十条
確定した更生債権及び更生担保権並びに異議のない議決権を有する更生債権者、更生担保権者及び株主は、その確定額又は届出の額若しくは数に応じて議決権を行使することができる。
2 異議のある権利については、裁判所が議決権を行使させるかどうか及びいかなる額又は数につき議決権を行使させるかを定める。
3 裁判所は、利害関係人の申立により又は職権で、何時でも前項の規定による決定を変更することができる。
4 前二項の規定による決定は、その言渡があつたときは、送達することを要しない。
(不当な議決権者の排除)
第百七十一条
裁判所は、権利取得の時期、対価その他の事情からみて、議決権を有する更生債権者、更生担保権者又は株主が関係人集会の決議に関し賄ろを収受する等不当な利益を得る目的でその権利を取得したものと認めるときは、これらの者にその議決権を行使させないことができる。
2 裁判所は、前項の処分をする前に当該議決権者を審尋しなければならない。
(議決権を行使することができない者)
第百七十二条
前二条の規定により議決権を行使することができない者の外、左に掲げる者は、議決権を行使することができない。
一 更生計画によつてその権利に影響を受けない者
二 第百二十一条第一項第五号及び第百二十二条第一項に掲げる請求権を有する者
三 第二百三十四条第二項の規定によりその保護が定められている者
(議決権の代理行使)
第百七十三条
更生債権者、更生担保権者及び株主は、代理人をもつてその議決権を行うことができる。この場合においては、代理人は、代理権を証する書面を提出しなければならない。
第六章 更生手続開始後の手続
(会社の業務及び財産の管理)
第百七十四条
管財人は、就職の後直ちに会社の業務及び財産の管理に着手しなければならない。
(郵便物の管理)
第百七十五条
裁判所は、通信事務を取り扱う官署その他の者に対し、会社にあてた郵便物又は電報を管財人に配達すべき旨を嘱託することができる。
2 管財人は、その受け取つた前項の郵便物又は電報を開いて見ることができる。
3 会社は、前項の郵便物又は電報の閲覧を求め、且つ、会社財産に関しないものの交付を求めることができる。
第百七十六条
裁判所は、会社の申立により又は職権で、管財人の意見を聞き、前条第一項の嘱託を取り消し、又は変更することができる。
2 更生手続が終了したときは、裁判所は、前条第一項の嘱託を取り消さなければならない。第二百十一条第三項又は第二百四十八条の二第一項の規定により会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利が取締役に付与されたときも、また同様である。
(財産の価額の評定)
第百七十七条
管財人は、更生手続開始後遅滞なく、裁判所書記官、執行官又は公証人の立会のもとに、会社に属する一切の財産につき手続開始の時における価額を評定しなければならない。この場合においては、遅滞の虞のある場合を除く外、会社の立会を求めなければならない。
2 前項の規定による評定は、会社の事業を継続するものとしてしなければならない。
(財産目録及び貸借対照表の作成)
第百七十八条
管財人は、前条の規定による評定を完了したときは、直ちに手続開始の時における財産目録及び貸借対照表を作らなければならない。
2 裁判所は、前条の規定による評定の完了前において必要があると認めるときは、管財人に対し、まだその評定の終わらない財産については商法第三十四条第二号、第二百八十五条ノ二及び第二百八十五条ノ四から第二百八十五条ノ七まで(財産の評価)の規定による価額を附して、更生手続開始の時における財産目録及び貸借対照表を作成すべきことを命ずることができる。
3 管財人は、前二項の財産目録及び貸借対照表の謄本に署名押印し、これを裁判所に提出しなければならない。ただし、署名押印に代えて記名押印することができる。
(管財人の調査報告)
第百七十九条
管財人は、就職の後遅滞なく、左の事項を調査して裁判所に報告しなければならない。
一 更生手続の開始に至つた事情
二 会社の業務及び財産に関する経過及び現状
三 第七十二条に定める処分を必要とする事情の有無
四 その他更生に関し必要な事項
(更生債権者等の調査)
第百八十条
管財人は、裁判所の定める期間内に、左に掲げる事項を調査して裁判所に報告しなければならない。
一 更生債権者の氏名及び住所、更生債権の内容及び原因、議決権の額並びに優先権のある債権又は劣後的債権であるときは、その事項
二 更生担保権者の氏名及び住所、更生担保権の内容及び原因、担保権の目的及びその価額、議決権の額並びに会社以外の者が債務者であるときは、その氏名及び住所
(その後の報告等)
第百八十一条
管財人は、前四条の規定によるものの外、裁判所の定めるところに従い、会社の業務及び財産の管理状況その他裁判所の命ずる事項を裁判所に報告し、また、更生計画認可の時及び裁判所の定める時期における財産目録及び貸借対照表を作成してその謄本を裁判所に提出しなければならない。
第百八十二条
前条の財産目録及び貸借対照表に記載すべき財産の評価については、第百七十七条の規定により評定した価額を取得価額とみなして、商法第三十四条第二号、第二百八十五条ノ二及び第二百八十五条ノ四から第二百八十五条ノ七まで(財産の評価)の規定を準用する。
2 更生計画案又は更生計画において譲渡することが定められている財産については、前項の規定にかかわらず、処分価額を附することができる。ただし、更生計画認可の決定前においては、裁判所の許可を得なければならない。
3 清算を内容とする計画案の作成について裁判所の許可があつた場合においては、第一項の規定にかかわらず、一切の財産について処分価額を附さなければならない。
(書類の備置)
第百八十三条
第百七十八条から第百八十一条までの規定によつて裁判所に提出された書類は、利害関係人の閲覧に供するため裁判所に備えて置かなければならない。
(営業の休止)
第百八十四条
営業継続中の会社につきその営業の継続を不適当とする特別の事情がある場合において、その営業を休止しようとするときは、管財人は、裁判所の許可を得なければならない。
(財産の保管方法等)
第百八十五条
裁判所は、金銭その他の財産の保管方法及び金銭の収支について必要な定をすることができる。
(法律顧問)
第百八十六条
管財人は、必要があるときは、裁判所の許可を得て法律顧問を選任することができる。
(第一回の関係人集会)
第百八十七条
管財人は、第百七十九条又は第百八十条に掲げる事項の要旨を第一回の関係人集会に報告しなければならない。
第百八十八条
第一回の関係人集会においては、裁判所は、管財人、会社、届出をした更生債権者及び更生担保権者並びに株主から管財人の選任並びに会社の業務及び財産の管理に関する意見を聞かなければならない。
(更生計画案の作成及び提出)
第百八十九条
管財人は、更生債権及び更生担保権の届出期間の満了後裁判所の定める期間内に、更生計画案を作成して裁判所に提出しなければならない。
2 裁判所は、申立により又は職権で、前項の期間を伸長することができる。
3 計画案の作成ができないときは、管財人は、前二項の期間内に、その旨の報告書を裁判所に提出しなければならない。
第百九十条
会社、届出をした更生債権者及び更生担保権者並びに株主は、裁判所の定める期間内に、更生計画案を作成して裁判所に提出することができる。
2 前条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
(清算を内容とする計画案)
第百九十一条
更生手続開始後会社の存続、合併、新会社の設立又は営業の譲渡による事業の継続を内容とする更生計画案の作成が困難なことが明かになつたときは、裁判所は、計画案作成者の申立により、清算を内容とする計画案の作成を許可することができる。但し、債権者の一般の利益を害するときは、この限りでない。
2 裁判所は、計画案を決議に付するまでは、何時でも前項の許可を取り消すことができる。
3 第百五十九条第三項の規定は、第一項の許可について準用する。
(更生計画案審理のための関係人集会)
第百九十二条
更生計画案の提出があつたときは、裁判所は、その計画案を審理するため、期日を定めて関係人集会を招集しなければならない。
第百九十三条
前条の関係人集会においては、更生計画案の提出者から計画案につき説明を聞いた上、裁判所は、管財人、会社、届出をした更生債権者及び更生担保権者並びに株主から計画案に対する意見を聞かなければならない。
(監督行政庁等の意見)
第百九十四条
裁判所は、必要があると認めるときは、会社の事業を所管する行政庁、法務大臣、大蔵大臣その他裁判所が相当と認める者に対し、更生計画案に対する意見の陳述を求めることができる。
2 行政庁の許可、認可、免許その他の処分を要する事項を定めた計画案については、裁判所は、その事項につき当該行政庁の意見を聞かなければならない。
3 会社の事業を所管する行政庁、法務大臣又は大蔵大臣は、何時でも裁判所に対し、計画案につき意見を述べることができる。
(会社の労働組合等の意見)
第百九十五条
裁判所は、更生計画案について、会社の使用人の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合、会社の使用人の過半数で組織する労働組合がないときは、会社の使用人の過半数を代表する者の意見を聞かなければならない。
(更生計画案の修正)
第百九十六条
更生計画案の提出者は、計画案審理のための関係人集会の期日までは、裁判所の許可を得て計画案を修正することができる。
(更生計画案の修正命令)
第百九十七条
裁判所は、利害関係人の申立により又は職権で、更生計画案の提出者に対し計画案を修正すべきことを命ずることができる。
2 前項の規定による裁判所の命令があつたときは、計画案の提出者は、裁判所の定める期間内に、計画案を修正しなければならない。
(関係人集会の再開)
第百九十八条
更生計画案審理のための関係人集会の期日後に前条の規定による修正があつたときは、裁判所は、その修正案を審理するため、さらに期日を定めて関係人集会を招集することができる。
2 第百九十三条の規定は、前項の関係人集会に準用する。
(更生計画案の排除)
第百九十九条
更生計画案が法律の規定に反するか、公正、衡平なものでないか、又は遂行不可能なものであると認めるときは、裁判所は、計画案を関係人集会の審理又は決議に付さないことができる。
(更生計画案決議のための関係人集会)
第二百条
第百九十二条又は第百九十八条の規定による関係人集会の審理を経た更生計画案につき修正命令を発しないときは、裁判所は、計画案につき決議をするため期日を定めて関係人集会を招集しなければならない。
2 前項の場合においては、裁判所は、あらかじめ、その計画案の写又はその要旨を管財人、会社、届出をした更生債権者及び更生担保権者、株主、更生のために債務を負担し、又は担保を供する者、会社の業務を監督する行政庁、法務大臣並びに大蔵大臣に送達しなければならない。ただし、議決権を行使することができない更生債権者、更生担保権者及び株主に対しては、この限りでない。
3 前項の送達については、第百四十一条第二項及び第三項の規定を準用する。
(更生のために債務を負担する者等の出頭)
第二百一条
更生のために債務を負担し、又は担保を供する者は、前条第一項の期日に出頭して、その旨の陳述をしなければならない。但し、正当の事由があるときは、代理人を出頭させることができる。
2 代理人は、代理権を証する書面を提出しなければならない。
(更生計画案の変更)
第二百二条
更生計画案の提出者は、更生債権者、更生担保権者及び株主に不利な影響を与えない場合に限り、第二百条第一項の関係人集会において裁判所の許可を得て計画案を変更することができる。
(決議の時期)
第二百三条
更生計画案は、一般の更生債権又は更生担保権調査の終了前は、決議に付することができない。
(決議の方法)
第二百四条
第二百条第一項の関係人集会においては、更生債権者、更生担保権者及び株主は、第百五十九条の規定により分類された組に分けて決議する。
(可決の要件)
第二百五条
関係人集会において更生計画案を可決するには、更生債権者の組においては議決権を行使することができる更生債権者の議決権の総額の三分の二以上に当る議決権を有する者の同意、更生担保権者の組においては更生担保権の期限の猶予の定をする計画案については議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の四分の三以上に当る議決権を有する者、更生担保権の減免その他期限の猶予以外の方法によりその権利に影響を及ぼす定をする計画案については議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の五分の四以上に当たる議決権を有する者、第百九十一条に定める計画案については議決権を行使することができる更生担保権者の全員の同意、株主の組においては議決権を行使することができる株主の議決権の総数の過半数に当る議決権を有する者の同意を得なければならない。
(続行期日の指定)
第二百六条
関係人集会において更生計画案が可決されるに至らなかつた場合においても、更生債権者の組においては議決権を行使することができる更生債権者の議決権の総額の過半数に当る議決権を有する者、更生担保権者の組においては議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の三分の二以上に当る議決権を有する者、株主の組においては議決権を行使することができる株主の議決権の総数の三分の一以上に当る議決権を有する者がそれぞれ期日の続行に同意したときは、裁判所は、管財人、会社若しくは議決権を行使することができる更生債権者、更生担保権者若しくは株主の申立により又は職権で、続行期日を定めて言い渡さなければならない。
(可決の時期)
第二百七条
更生計画案の可決は、第二百条第一項の関係人集会の第一期日から二月内にされなければならない。
2 裁判所は、必要があると認めるときは、計画案提出者の申立により又は職権で、前項の期間を伸長することができる。但し、その期間は、一月をこえることができない。
(共益債権)
第二百八条
左に掲げる請求権は、共益債権とする。
一 更生債権者、更生担保権者及び株主の共同の利益のためにする裁判上の費用
二 更生手続開始後の会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分に関する費用
三 更生計画の遂行に関する費用。但し、更生手続終了後に生じたものを除く。
四 第二百八十五条及び第二百八十七条の規定により支払うべき報酬、費用及び報償金
五 会社の業務及び財産に関し管財人又は会社の取締役が更生手続開始後に権限に基いてした資金の借入その他の行為によつて生じた請求権
六 事務管理又は不当利得により更生手続開始後会社に対して生じた請求権
七 第百三条第一項の規定により管財人が債務の履行をする場合において、相手方が有する請求権
八 会社のために支出すべきやむを得ない費用で、前各号に掲げるもの以外のもの
(共益債権の弁済)
第二百九条
共益債権は、更生手続によらないで、随時弁済する。
2 共益債権は、更生債権及び更生担保権に先だつて、弁済する。
(会社財産不足の場合の弁済方法)
第二百十条
会社財産が共益債権の総額を弁済するのに足りないことが明かになつたときは、共益債権は、法令に定める優先権にかかわらず、まだ弁済しない債権額の割合に応じて弁済する。但し、共益債権について存する留置権、特別の先取特権、質権及び抵当権の効力を妨げない。
(共益債権に基づく強制執行の中止等)
第二百十条の二
共益債権に基づき会社財産に対し強制執行又は仮差押えがされている場合において、その強制執行又は仮差押えが会社の更生に著しい支障を及ぼし、かつ、会社が他に換価の容易な財産を有するときは、裁判所は、管財人の申立てにより又は職権で、担保を供させ、又は供させないで、その強制執行又は仮差押えの中止又は取消しを命ずることができる。
2 裁判所は、前項の規定による中止の決定を変更し、又は取り消すことができる。
3 会社財産が共益債権の総額を弁済するのに足りないことが明らかになつたときは、裁判所は、管財人の申立てにより又は職権で、第一項の強制執行又は仮差押えの取消しを命ずることができる。
4 前三項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第七章 更生計画の条項
(更生計画の条項)
第二百十一条
更生計画においては、全部又は一部の更生債権者、更生担保権者又は株主の権利を変更する条項及び共益債権の弁済に関する条項を定めなければならない。債務の弁済資金の調達方法及び計画において予想された額をこえる収益金の使途に関する条項についても、また同様である。
2 計画においては、営業若しくは財産の譲渡、出資若しくは賃貸、事業の経営の委任、定款の変更、取締役、代表取締役若しくは監査役の変更、資本の減少、新株若しくは社債の発行、合併、解散又は新会社の設立に関する条項その他更生のために必要な条項を定めることができる。
3 計画においては、会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利を取締役に付与する旨を定めることができる。
(更生債権者等の権利)
第二百十二条
更生債権者、更生担保権者又は株主の権利を変更するときは、変更されるべき権利を明示し、且つ、変更後の権利の内容を定めなければならない。
2 更生債権者、更生担保権者又は株主で、更生計画によつてその権利に影響を受けないものがあるときは、その者の権利を明示しなければならない。
(債務の期限)
第二百十三条
更生計画によつて債務が負担され、又は債務の期限が猶予されるときは、その債務の期限は、担保があるときはその担保物の耐用期間、担保がないとき又は担保物の耐用期間が判定できないときは二十年をこえてはならない。
(担保の提供及び債務の負担)
第二百十四条
会社又は会社以外の者が更生のために担保を供するときは、担保を供する者を明示し、且つ、担保権の内容を定めなければならない。
2 会社以外の者が債務を引き受け、又は保証人となる等更生のために債務を負担するときは、その者を明示し、且つ、その債務の内容を定めなければならない。
(未確定の更生債権等)
第二百十五条
異議のある更生債権又は更生担保権で、その確定手続の落着しないものがあるときは、その権利確定の可能性を考慮し、これに対する適確な措置を定めなければならない。
(弁済した更生債権等)
第二百十五条の二
更生債権及び更生担保権については、第百十二条の二第一項又は第四項(第百二十三条第三項において準用する場合を含む。)の規定による裁判所の許可を得て弁済したものを明示しなければならない。
(共益債権)
第二百十六条
共益債権については、既に弁済したものを明示し、且つ、将来弁済すべきものについて合理的な定をしなければならない。
(営業又は財産の譲渡等)
第二百十七条
会社の営業若しくは財産の全部若しくは一部を譲渡し、出資し、若しくは賃貸し、会社の事業の経営の全部若しくは一部を委任し、他人と営業上の損益を共通にする契約その他これに準ずべき契約を締結し、変更し、若しくは解約し、又は他人の営業若しくは財産の全部若しくは一部を譲り受けるときは、その目的物、対価、相手方その他の事項及びその対価を更生債権者、更生担保権者又は株主に分配するときは、その分配の方法を定めなければならない。
(争の落着しない権利)
第二百十八条
会社に属する権利で、争の落着しないものがあるときは、和解若しくは調停の受諾に関する定をするか、又は管財人による訴訟の遂行その他権利の実行に関する確実な方法を定めなければならない。
(定款の変更)
第二百十九条
会社の定款を変更するときは、その変更の内容を定めなければならない。
(取締役等の変更)
第二百二十条
会社の取締役若しくは監査役を選任し、又は会社の代表取締役を選定するときは、選任若しくは選定されるべき者及び任期又は選任若しくは選定の方法及び任期を定めなければならない。
2 会社の取締役、代表取締役又は監査役のうち留任させる者があるときは、その者及び任期を定めなければならない。
3 前二項の場合において、数人の代表取締役に共同して会社を代表させるときは、その旨を定めなければならない。
4 第一項及び第二項に定める任期は、一年をこえることができない。
(資本の減少)
第二百二十一条
会社の資本を減少するときは、左に掲げる事項を定めなければならない。
一 減少すべき資本の額
二 資本減少の方法
(新株の発行)
第二百二十二条
会社が更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込又は現物出資をさせないで新株を発行するときは、左に掲げる事項を定めなければならない。
一 新株の額面無額面の別、種類及び数
二 新株の割当に関する事項
三 新株の発行によつて増加すべき資本及び準備金の額
2 会社が更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込又は現物出資をさせて新株を発行するときは、左に掲げる事項を定めなければならない。
一 前項第一号及び第三号に掲げる事項
二 払込金額その他新株の割当に関する事項及び新株の払込期日(この期日は、更生計画認可の決定の日から三月以上を経過した日でなければならない。)
三 あらたに現物出資をする者があるときは、その者、出資の目的たる財産、その価格並びにこれに対して与える株式の額面無額面の別、種類及び数
3 前二項に定める場合を除き、会社が新株を発行するときは、左に掲げる事項を定めなければならない。
一 第一項第一号に掲げる事項
二 前項第三号に掲げる事項
三 新株の発行価額及び払込期日(この期日は、計画認可の決定の日から三月以上を経過した日でなければならない。)
四 新株の発行価額中資本に組み入れない額
(社債の発行)
第二百二十三条
会社が社債を発行するときは、左に掲げる事項を定めなければならない。
一 社債の総額
二 各社債の金額、社債の利率、社債償還及び利息支払の方法及び期限その他社債の内容
三 社債発行の方法及び更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込をさせ、又はさせないで社債を発行するときは、その割当に関する事項
四 担保附社債であるときは、その担保権の内容
(吸収合併)
第二百二十四条
会社が他の会社と合併してその一方が合併後存続するときは、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 他の会社の商号
二 他の会社が存続する場合において、合併により定款の変更をするときは、その規定
三 合併によつて消滅する会社の更生債権者、更生担保権者又は株主に対して発行すべき新株の額面無額面の別、種類及び数並びにその割当てに関する事項
四 合併に際してする新株の発行に変えて、商法第二百十条第二号から第五号まで又は第二百十条ノ三第一項(自己株式)の規定により取得して有する株式を合併によつて消滅する会社の更生債権者、更生担保権者又は株主に移転するときは、移転すべき株式の額面無額面の別、種類及び数
五 存続する会社の増加すべき資本の額及び準備金に関する事項
六 合併によつて消滅する会社の株主に金銭を支払い、又は社債を割り当てることを定めたときは、その規定
七 他の会社における合併契約書承認決議のための株主総会の日時(その会社が株主総会の承認を得ないで合併をするときは、その旨)
八 合併すべき時期
九 他の会社が合併の日までに利益の配当又は商法第二百九十三条ノ五第一項(中間配当)の金銭の分配をするときは、その限度額
十 他の会社が存続する場合において、その会社につき合併に際して就職すべき取締役又は監査役を定めたときは、その規定
十一 他の会社が存続する場合において、商法第四百十四条ノ三(存続会社の従前の役員の任期)の別段の定めをしたときは、その規定
(新設合併)
第二百二十五条
会社が他の会社と合併して新会社を設立するときは、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 他の会社の商号
二 新会社の定款の規定
三 更生債権者、更生担保権者又は各会社の株主に対して発行すべき株式の種類及び数並びにその割当てに関する事項
四 新会社の資本の額及び準備金に関する事項
五 各会社の株主に金銭を支払い、又は社債を割り当てることを定めたときは、その規定
六 前条第七号から第九号までに掲げる事項
七 新会社の取締役及び監査役の氏名
八 新会社が株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(昭和四十九年法律第二十二号)第二条(会計監査人の監査)に規定する株式会社であるときは、新会社の会計監査人の氏名又は名称
(新会社の設立)
第二百二十六条
更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込又は現物出資をさせないで株式を引き受けさせることによつて新会社を設立するときは、左に掲げる事項を定めなければならない。
一 新会社の商号、目的、本店及び支店の所在地並びに公告の方法
二 新会社が発行する株式の総数
三 額面株式を発行するときは、一株の金額
四 削除
五 更生債権者、更生担保権者又は株主に対して発行すべき株式の額面無額面の別、種類及び数並びにその割当に関する事項
六 その他新会社の定款に記載すべき事項
七 新会社の資本及び準備金の額
八 会社から新会社に移転すべき財産及びその価格
九 新会社の取締役、代表取締役及び監査役となるべき者又はその選任若しくは選定の方法並びに任期(但し、一年をこえることができない。)
十 新会社が社債を発行するときは、第二百二十三条に掲げる事項
2 前項に定める場合を除き、合併によらないで新会社を設立するときは、左に掲げる事項を定めなければならない。
一 前項第一号から第三号まで、第六号及び第八号から第十号までに掲げる事項
二 新会社の設立に際して発行する株式の額面無額面の別、種類及び数、その発行価額及びその価額中資本に組み入れない額並びに更生債権者、更生担保権者又は株主に対して新たに払込み又は現物出資をさせ、又はさせないで株式を引き受けさせるときは、前項第五号に掲げる事項
三 あらたに現物出資をする者があるときは、その者、出資の目的たる財産、その価格並びにこれに対して与える株式の額面無額面の別、種類及び数
(解散)
第二百二十七条
会社が合併によらないで解散するときは、その旨及び解散の時期を定めなければならない。
(条件の差等)
第二百二十八条
更生計画においては、左に掲げる権利の順位を考慮して、計画の条件に公正、衡平な差等を設けなければならない。
一 更生担保権
二 一般の先取特権その他一般の優先権のある更生債権
三 前号及び次号に掲げるもの以外の更生債権
四 劣後的更生債権
五 残余財産の分配に関し優先的内容を有する種類の株主の権利
六 前号に掲げるもの以外の株主の権利
2 前項の規定は、第百二十一条第一項第五号及び第百二十二条第一項に掲げる請求権については、適用しない。
(平等の原則)
第二百二十九条
更生計画の条件は、同じ性質の権利を有する者の間では平等でなければならない。但し、更生債権者及び更生担保権者については、その債権の少額なものにつき別段の定をし、その他これらの者の間に差等を設けても衡平を害しない場合は、この限りでない。
(取締役等の選任等に関する規定)
第二百三十条
会社又は新会社(合併によつて設立される新会社を除く。)の取締役、代表取締役若しくは監査役の選任、選定若しくは留任又はその選任若しくは選定の方法に関する更生計画の定は、衡平で、且つ、更生債権者、更生担保権者及び株主の一般の利益に合致するものでなければならない。
(特別利益の供与の無効)
第二百三十一条
会社又は第三者が更生計画の条件によらないで、ある更生債権者、更生担保権者又は株主に特別の利益を与える行為は、無効とする。
第八章 更生計画の認否及び遂行
(更生計画の認否)
第二百三十二条
関係人集会において更生計画案を可決したときは、裁判所は、その期日又は直ちに言い渡した期日において、計画の認否につき決定をしなければならない。
2 第百六十四条及び第百六十五条に掲げる者は、計画の認否につき意見を述べることができる。
3 計画認否の期日を定める決定は、言渡をしたときは、公告及び送達をすることを要しない。
(更生計画認可の要件)
第二百三十三条
裁判所は、次の要件を備えている場合に限り、更生計画認可の決定をすることができる。
一 更生手続又は計画が法律の規定に合致していること。
二 計画が公正、衡平であり、かつ、遂行可能であること。
三 決議が誠実、公正な方法でされたこと。
四 合併を内容とする計画については、他の会社の株主総会の合併契約書承認の決議があつたこと(その会社が株主総会の承認を得ないで合併をするときは、商法第四百十三条ノ三第八項(簡易な合併手続)に関する場合に該当しないこと。)。
五 行政庁の許可、認可、免許その他の処分を要する事項を定めた計画については、第百九十四条第二項の規定による行政庁の意見と重要な点において反していないこと。
2 更生手続が法律の規定に違反している場合でも、その違反の程度、会社の現況その他一切の事情を考慮して計画を認可しないことが不適当と認めるときは、裁判所は、計画認可の決定をすることができる。
(不同意の組のある場合の認可)
第二百三十四条
更生計画案につき関係人集会において法定の額又は数以上の議決権を有する者の同意を得られなかつた組がある場合においても、裁判所は、計画案を変更し、その組の更生債権者、更生担保権者又は株主のために、左に掲げるいずれかの方法によつてその権利を保護する条項を定めて、計画認可の決定をすることができる。
一 更生担保権者について、その担保権の目的たる財産を、その権利を存続させたまま新会社に移転し、他に譲渡し、又は会社に留保すること。
二 更生担保権者についてはその権利の目的たる財産、更生債権者についてはその債権の弁済に充てられるべき会社の財産、株主については残余財産の分配に充てられるべき会社の財産を、裁判所が定める公正な取引価額(担保権の目的たる財産については、その権利による負担がないものとして評価するものとする。)以上の価額で売却し、その売得金から売却の費用を控除した残金で弁済し、又はこれを分配し、若しくは供託すること。
三 裁判所の定めるその権利の公正な取引価額を権利者に支払うこと。
四 その他前各号に準じて公正、衡平に権利者を保護すること。
2 計画案につき、関係人集会において法定の額又は数以上の議決権を有する者の同意を得られないことが明らかな組があるときは、裁判所は、計画案作成者の申立により、あらかじめその組の更生債権者、更生担保権者又は株主のために前項に掲げるいずれかの方法によつてその権利を保護する条項を定めて、計画案を作成することを許可することができる。
3 前項の申立があつたときは、裁判所は、申立人及び同項に定める組の権利者一人以上の意見を聞かなければならない。
(更生計画認否の決定の言渡等)
第二百三十五条
更生計画認否の決定は、言い渡し、且つ、その主文、理由の要旨及び計画又はその要旨を公告しなければならない。但し、送達をすることを要しない。
2 第三十五条第一項の規定は、前項の決定があつた場合に準用する。
(更生計画の効力発生の時)
第二百三十六条
更生計画は、認可の決定の時から、効力を生ずる。
(抗告)
第二百三十七条
更生計画認否の決定に対しては、即時抗告をすることができる。但し、届出をしなかつた更生債権者又は更生担保権者は、この限りでない。
2 議決権を有しなかつた更生債権者、更生担保権者又は株主が前項の抗告をするには、更生債権者、更生担保権者又は株主であることを疎明しなければならない。
3 第一項の抗告は、計画の遂行に影響を及ぼさない。但し、抗告裁判所又は更生裁判所は、抗告が法律上の理由があるとみえ、計画の遂行によつて生ずべき償うことができない損害を避けるため緊急の必要があり、且つ、事実上の点について疎明があつたときは、申立により、抗告につき決定があるまで、保証を立てさせ、又は立てさせないで、計画の全部又は一部の遂行を停止し、その他必要な処分をすることができる。
4 前三項の規定は、第八条において準用する民事訴訟法第三百三十六条(特別抗告)の規定による抗告及び同法第三百三十七条(許可抗告)の規定による抗告の許可の申立てについて準用する。
(更生計画不認可の決定が確定した場合)
第二百三十八条
第二百八十二条及び第二百八十三条の規定は、更生計画不認可の決定が確定した場合に準用する。
(更生債権者表等への記載)
第二百三十九条
更生計画認可の決定が確定したときは、裁判所書記官は、計画の条項を更生債権者表及び更生担保権者表に記載しなければならない。
(更生計画の効力範囲)
第二百四十条
更生計画は、会社、すべての更生債権者、更生担保権者及び株主、更生のために債務を負担し、又は担保を供する者並びに新会社(合併によつて設立される新会社を除く。)のために、且つ、それらの者に対して効力を有する。
2 計画は、更生債権者又は更生担保権者が会社の保証人その他会社とともに債務を負担する者に対して有する権利及び会社以外の者が更生債権者又は更生担保権者のために供した担保に影響を及ぼさない。
(更生債権等の免責等)
第二百四十一条
更生計画認可の決定があつたときは、計画の定又はこの法律の規定によつて認められた権利を除き、会社は、すべての更生債権及び更生担保権につきその責を免がれ、株主の権利及び会社の財産の上に存した担保権は、すべて消滅する。ただし、更生手続開始後会社の取締役、代表取締役、監査役又は使用人であつた者で、更生計画認可の決定後も引き続き会社の取締役、代表取締役、監査役又は使用人として在職しているものの退職手当の請求権並びに第百二十一条第一項第五号及び第六号に掲げる請求権については、この限りでない。
(権利の変更)
第二百四十二条
更生計画認可の決定があつたときは、更生債権者、更生担保権者及び株主の権利は、計画の定に従い変更される。
2 商法第二百八条(質権の効力)及び第二百九条第三項(株券の引渡し)の規定は、株主が前項の規定による権利の変更により受けるべき金銭その他の物、株式、債権その他の権利、株券及び端株券について準用する。
(更生債権者及び更生担保権者の権利)
第二百四十三条
更生計画の定によつて更生債権者又は更生担保権者に対し権利が認められた場合には、その権利は、確定した更生債権又は更生担保権を有する者に対してのみ認められるものとする。
(更生手続に参加しなかつた株主の権利)
第二百四十四条
更生計画の定によつて株主に対し権利が認められた場合には、その権利は、更生手続に参加しなかつた者に対しても、認められるものとする。
(更生債権者表等の記載の効力)
第二百四十五条
更生計画認可の決定が確定したときは、更生債権又は更生担保権に基き計画の定によつて認められた権利については、その更生債権者表又は更生担保権者表の記載は、会社、新会社(合併によつて設立される新会社を除く。)、更生債権者、更生担保権者、会社の株主及び更生のために債務を負担し、又は担保を供する者に対し、確定判決と同一の効力を有する。
2 前項に定める権利で金銭の支払その他の給付の請求を内容とするものを有する者は、更生手続終結の後、会社及び更生のために債務を負担した者に対し、更生債権者表又は更生担保権者表の記載により強制執行をすることができる。ただし、民法第四百五十二条(催告の抗弁権)及び第四百五十三条(検索の抗弁権)の規定の適用を妨げない。
(中止中の手続の失効)
第二百四十六条
更生計画認可の決定があつたときは、第六十七条第一項の規定によつて中止した破産手続、強制執行、仮差押え、仮処分、競売の手続及び企業担保権の実行手続は、その効力を失う。ただし、同条第六項の規定によつて続行された手続又は処分については、この限りでない。
2 前項の規定によつて効力を失つた破産手続における財団債権(但し、破産法第四十七条第二号(国税徴収法又は国税徴収の例により徴収することのできる請求権)及び第九号(破産者及びこれに扶養される者の扶助料)に掲げるものを除く。)は、共益債権とする。
(更生計画の遂行)
第二百四十七条
更生計画認可の決定があつたときは、管財人は、すみやかに計画を遂行しなければならない。
2 第二百十一条第三項又は第二百四十八条の二第一項の規定により会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利が取締役に付与された場合においては、管財人は、取締役が計画を実行するにつき、これを監督する。
3 計画の定めによつて新会社を設立する場合における発起人の職務は、管財人が行う。
4 第二項の規定は、新会社(合併によつて設立される新会社を除く。以下本項中同じ。)の計画の実行に対する管財人の監督について、第九十八条の二の規定は、新会社に対する管財人の調査について準用する。
(更生計画遂行に関する裁判所の命令)
第二百四十八条
裁判所は、第二百四十条第一項に掲げる者及び管財人に対し、更生計画の遂行に関し必要な命令をすることができる。
2 裁判所は、計画の遂行を確実ならしめるため必要があると認めるときは、計画の定又はこの法律の規定により債権を有する者又は異議のある更生債権若しくは更生担保権でその確定手続の落着しないものを有する者のために、相当な担保を供させることができる。
3 民事訴訟法第七十六条(担保提供の方法)、第七十七条(担保物に対する被告の権利)、第七十九条(担保の取消し)及び第八十条(担保の変換)の規定は、前項の規定による担保について準用する。
(更生計画認可後の取締役に対する権利付与)
第二百四十八条の二
裁判所は、更生計画に第二百十一条第三項の規定による定めがない場合においても、相当と認めるときは、管財人の申立てにより又は職権で、会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利を取締役に付与することができる。
2 裁判所は、管財人の申立てにより又は職権で、前項の規定による決定を取り消すことができる。
3 裁判所は、前二項の規定による決定をしたときは、その旨を公告しなければならない。この場合には、第十五条の規定は、適用しない。
(株主総会の決議等に関する法令の規定等の排除)
第二百四十九条
更生計画の遂行については、法令又は定款の規定にかかわらず、会社の創立総会、株主総会(ある種類の株主の総会を含む。)又は取締役会の決議を要しない。
(営業の譲渡等に関する商法の規定の特例)
第二百五十条
第二百十七条の規定により更生計画において会社の営業若しくは財産の全部若しくは一部を譲渡し、出資し、若しくは賃貸し、会社の事業の経営の全部若しくは一部を委任し、他人と営業上の損益を共通にする契約その他これに準ずべき契約を締結し、変更し、若しくは解約し、又は他人の営業若しくは財産の全部若しくは一部を譲り受けることを定めたときは、計画の定によつてこれらの行為をすることができる。
2 前項の場合においては、商法第二百四十五条ノ二から第二百四十五条ノ四まで(反対株主の株式買取請求)の規定は、適用しない。
(定款の変更に関する商法の規定の特例)
第二百五十一条
第二百十九条の規定により更生計画において会社の定款を変更することを定めたときは、定款は、計画認可の決定の時に計画の定によつて変更される。
(取締役等の変更に関する商法の規定の特例)
第二百五十二条
第二百二十条の規定により更生計画において取締役若しくは監査役の選任又は代表取締役の選定を定めたときは、これらの者は、計画認可の決定の時に選任又は選定されるものとする。
2 第二百二十条の規定により計画において取締役若しくは監査役の選任又は代表取締役の選定の方法を定めたときは、これらの者の選任又は選定は、計画に定める方法によつてすることができる。この場合においては、商法第二百五十四条第一項(同法第二百八十条において準用する場合を含む。)(取締役、監査役の選任)及び第二百六十一条第一項(代表取締役の選定)の規定は、適用しない。
3 会社の取締役、代表取締役又は監査役で、計画において留任することを定められなかつた者は、計画認可の決定の時に解任されるものとする。
4 第一項及び第二項の規定により選任され、若しくは選定され、又は計画の定によつて留任した取締役、代表取締役又は監査役の任期及び代表取締役の代表の方法は、計画に定めるところによる。
5 第二項の場合においては、取締役若しくは監査役の選任又は代表取締役の選定による変更の登記の嘱託書又は申請書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本の外、その選任又は選定に関する書類を添附しなければならない。
(資本の減少に関する商法等の規定の特例)
第二百五十三条
第二百二十一条の規定により更生計画において資本の減少を定めたときは、計画の定によつて資本を減少することができる。
2 前項の場合においては、商法第二百十二条第二項(株式消却の手続)、第三百七十六条第二項、第三項(資本減少の手続)及び第三百八十条(資本減少無効の訴え)の規定は、適用せず、同法第三百七十七条第一項において準用する同法第二百十七条第二項(競売以外の方法による端株の売却の許可)に定めた事件は、更生裁判所の管轄とする。
3 第一項の場合においては、会社の資本減少による変更の登記の申請書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本を添附しなければならない。
(新株の発行に関する商法等の規定の特例)
第二百五十四条
第二百二十二条第一項の規定により更生計画において会社が更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込又は現物出資をさせないで新株を発行することを定めたときは、これらの権利者は、計画認可の決定の時又は計画において特に定めた時に株主となる。
2 前項の場合においては、商法第二百八十条ノ五ノ二(株主の新株引受権)の規定は、適用しない。
3 第一項の場合においては、新株引受権に関する定款の定めに拘束されない。
4 商法第二百十五条第一項及び第二項、第二百十六条並びに第二百十七条(株式併合)の規定は、株主に対し割り当てる株式に端数を生ずる場合に準用する。この場合においては、同条第二項に定めた事件は、更生裁判所の管轄とし、非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第百三十二条ノ三(競売以外の方法による端株の売却の許可の申請)の規定を準用する。
第二百五十五条
第二百二十二条第二項又は第三項の規定により、更生計画において会社が新株を発行することを定めたときは、計画の定によつて新株を発行することができる。
2 前項の場合においては、商法第二百八十条ノ三(発行条件の均等)、第二百八十条ノ五ノ二、第二百八十条ノ八(現物出資の検査)、第二百八十条ノ十(発行の差止め)、第二百八十条ノ十一(不公正な価額で株式を引き受けた者の責任)、第二百八十条ノ十三(取締役の引受担保責任)、第二百八十条ノ十三ノ二(取締役の不足額てん補責任)及び第二百八十条ノ十五から第二百八十条ノ十八まで(新株発行無効の訴え)の規定は、適用しない。
3 第一項の場合においては、新株引受権に関する定款の定に拘束されず、商法第二百八十条ノ十四第一項(新株発行の場合における設立に関する規定の準用)において準用する同法第百七十八条(払込取扱銀行等の変更)に定めた事件は、更生裁判所の管轄とする。
4 第一項の場合においては、商法第二百八十条ノ五(新株引受権の行使)の規定を準用する。この場合において、同条第一項中「株主」とあるのは、「更生債権者、更生担保権者又ハ株主」と、同条第二項中「端株券ヲ発行シタル場合ニ於テ端株券ヲ所持スル者ニ対シ新株ノ引受権ヲ与フル旨ノ定款ノ定アルトキハ」とあるのは、「無記名式ノ株券若ハ社債券又ハ端株券ヲ発行シタル場合ニ於テハ」と読み替えるものとする。
5 更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込又は現物出資をさせて新株を発行するときは、これらの権利者は、計画に定める金額を払い込み、又は計画に定める現物出資をすれば足りる。
6 前条第四項の規定は、株主に対し新たに払込み又は現物出資をさせて割り当てる株式に端数を生ずる場合に準用する。ただし、この場合においては、従前の株主に交付すべき代金から、端株につき払い込むべき金額又は給付すべき現物出資に相当する金額を控除しなければならない。
7 第一項の場合においては、会社の新株発行による変更の登記の嘱託書又は申請書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本の外、株式の申込及び引受を証する書面並びに払込を取り扱つた銀行又は信託会社の払込金の保管に関する証明書を添附しなければならない。
(社債の発行に関する商法等の規定の特例)
第二百五十六条
第二百二十三条の規定により更生計画において会社が更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込をさせないで社債を発行することを定めたときは、これらの権利者は、計画認可の決定の時に社債権者となる。
2 前項の場合においては、商法第二百九十八条(未払込社債のある場合の社債募集の制限)の規定は、適用しない。
第二百五十七条
前条に定める場合を除き、第二百二十三条の規定により更生計画において会社が社債を発行することを定めたときは、計画の定によつて社債を発行することができる。
2 更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込をさせて社債を発行するときは、これらの権利者は、計画に定める金額を払い込めば足りる。
3 第二百五十五条第四項及び前条第二項の規定は、第一項の場合に準用する。
4 第一項の場合においては、転換社債又は新株引受権付社債の登記の嘱託書又は申請書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本のほか、転換社債又は新株引受権付社債の申込み及び引受けを証する書面並びに各転換社債又は各新株引受権付社債につき払込みのあつたことを証する書面を添付しなければならない。
(合併に関する商法等の規定の特例)
第二百五十八条
第二百二十四条又は第二百二十五条の規定により更生計画において会社が他の会社と合併することを定めたときは、計画の定によつて合併をすることができる。
2 前項の場合においては、合併後存続する会社又は合併により設立される新会社の株式の割当を受けた更生債権者又は更生担保権者は、計画認可の決定の時に株式引受人となり、合併の効力が生じた時に株主となる。
3 第一項の場合においては、商法第四百八条ノ二(合併契約書等の備置き等)、第四百八条ノ三(反対株主の株式買取請求)、第四百十二条(債権者保護の手続)、第四百十三条ノ二第一項前段(存続会社の資本増加の限度額)及び第四百十五条(合併無効の訴え)の規定は、適用せず、同法第四百十六条第三項(合併の場合における株式併合に関する規定の準用)において準用する同法第二百十七条第二項に定めた事件は、更生裁判所の管轄とする。
4 第一項の場合においては、商法第四百十六条第二項(減資に対する社債権者の異議申出方法の合併への準用)の規定にかかわらず、同法第三百七十六条第三項の規定は、準用しない。
5 前四項の規定は、合併の相手方たる他の会社に対する商法の規定の適用を妨げない。
6 第二百五十六条の規定は、第二百二十四条第六号又は第二百二十五条第五号の規定により株主に社債を割り当てた場合に準用する。この場合においては、株主は、合併の効力を生じた時に社債権者となる。
7 第一項の場合においては、合併による会社の変更の登記の嘱託書又は申請書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本のほか、商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第九十条第一号から第六号まで(合併の登記)に掲げる書面(会社に関する同条第三項に掲げる書面を除く。)を添付しなければならない。
8 第一項の場合においては、合併による設立の登記の嘱託書又は申請書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本のほか、代表取締役に関する取締役会の議事録及び商業登記法第九十一条(合併の登記)に掲げる書面(会社に関する同法第九十条第二号及び第三号に掲げる書面を除く。)を添付しなければならない。
9 裁判所が前二項の登記を嘱託するときは、合併の相手方たる他の会社の合併による解散の登記をも嘱託しなければならない。
10 第一項の場合において、合併の相手方たる他の会社が合併後存続するときは、第十七条第三項の規定は、適用しない。
11 前項の場合における合併の相手方たる他の会社の合併による変更の登記の申請書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本、その会社の株主総会の議事録(その会社が株主総会の承認を得ないで合併をする場合には、その会社の取締役会の議事録(合併により消滅する会社の株主に支払うべき金額を定めた場合にあつては、当該議事録及び最終の貸借対照表))並びに商業登記法第九十条第一号及び第三号から第九号までに掲げる書面(会社に関する同条第三号に掲げる書面を除く。)を添付しなければならない。
(新会社の設立に関する商法等の規定の特例)
第二百五十九条
第二百二十六条の規定により更生計画において更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込又は現物出資をさせないで株式を引き受けさせることによつて新会社を設立することを定めたときは、新会社は、定款を作成し、更生裁判所の認証を得た後設立の登記をした時に成立する。
2 前項の場合においては、新会社成立の時において、計画の定により新会社に移転すべき会社の財産は、新会社に移転し、新会社の株式又は社債の割当を受けた更生債権者、更生担保権者又は株主は、株主又は社債権者となる。
3 第二百五十二条第一項、第二項及び第四項、第二百五十四条第四項並びに第二百五十七条の規定は、前二項の場合に準用する。
4 第一項の場合においては、新会社の設立の登記の嘱託書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本の外、定款並びに計画において取締役若しくは監査役の選任又は代表取締役の選定の方法を定めたときは、その選任又は選定に関する書類及び名義書換代理人又は登録機関を置いたときは、これを証する書面を添附しなければならない。
第二百六十条
前条に定める場合を除き、第二百二十六条の規定により更生計画において合併によらないで新会社を設立することを定めたときは、計画の定によつて新会社を設立することができる。
2 前項の場合においては、商法第百六十七条(定款の認証)、第百六十八条ノ二(設立に際しての株式発行事項の決定)、第百六十九条(発起人の株式引受け)、第百七十条(発起設立における払込み及び役員の選任)、第百七十三条(検査役の調査及び裁判所の処分)、第百七十三条ノ二(設立手続の調査及び通告)、第百七十五条第二項第九号(発起人の株式引受けに関する株式申込証の記載)、第百八十一条(検査役の調査)、第百八十三条(創立総会における取締役及び監査役の選任)、第百八十四条(第一項中第百七十三条ノ二第一項第二号及び第三号に掲げる事項に関する部分を除く。)(設立手続の調査及び報告)、第百八十五条(変態設立事項の変更)、第百八十六条(発起人に対する損害賠償の請求)、第百九十二条(発起人の株式引受け及び払込担保責任等)、第百九十二条ノ二(発起人等の不足額てん補責任)、第百九十三条(発起人の損害賠償責任)、第百九十五条(取締役等の連帯責任)、第百九十六条(発起人に対する責任の免除、株主の代表訴訟)、第百九十八条(擬似発起人の責任)、第二百二十二条ノ二第二項後段(転換株式の転換の条件等の決定)及び第四百二十八条(設立無効の訴え)の規定は、適用しない。
3 第一項の場合においては、定款は、更生裁判所の認証を受けるものとし、商法第百七十八条に定めた事件は、更生裁判所の管轄とし、創立総会においては計画の趣旨に反して定款を変更することができず、同法第百九十四条(会社不成立の場合の発起人の責任)に定める発起人の責任は、会社において負うものとする。
4 第一項の場合において、更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、あらたに払込若しくは現物出資をさせないで株式を引き受けさせ、又はあらたに払込をさせないで社債を引き受けさせるときは、これらの権利者は、新会社成立の時に株主又は社債権者となる。
5 第一項の場合において、更生債権者、更生担保権者又は株主に対し、新たに払込み若しくは現物出資をさせて株式を引き受けさせるときは、これらの者に対し発行すべき株式のうち引受けのない株式については、商法第百六十六条第三項(会社の設立に際して発行すべき株式の総数)の規定に反しない限り、更に株主を募集せず、その株式数を新会社の設立に際して発行する株式の総数から控除することができる。
6 第二百五十二条第一項、第二項及び第四項、第二百五十四条第四項、第二百五十五条第四項から第六項まで並びに第二百五十七条の規定は、前各項の場合に準用する。
7 第一項の場合においては、新会社の設立の登記の嘱託書又は申請書には、前条第四項に掲げる書類の外、株式の申込及び引受を証する書面、取締役及び監査役の調査報告書及びその附属書類、創立総会の議事録並びに払込を取り扱つた銀行又は信託会社の払込金の保管に関する証明書を添附しなければならない。
(解散に関する商法等の規定の特例)
第二百六十一条
第二百二十七条の規定により更生計画において会社が合併によらないで解散することを定めたときは、会社は、計画に定める時期に解散する。
2 前項の場合においては、解散の登記の申請書には、計画認可の決定書の謄本又は抄本を添附しなければならない。
(新株主等の失権)
第二百六十二条
更生債権者、更生担保権者又は株主が第二百五十四条第一項、第二百五十六条第一項、第二百五十八条第二項、第六項、第二百五十九条第二項又は第二百六十条第四項の規定により、新たに会社又は新会社の株主又は社債権者となつたときは、第二百五十四条第四項(第二百五十九条第三項及び第二百六十条第六項において準用する場合を含む。)又は商法第四百十六条第三項の規定により株券又は端株券の提出のあつた場合を除き、会社又は新会社は、遅滞なくその者に対し、株券又は債券の交付(その者が端株主であるときは、端株券の交付又は端株主であることの確認。第四項及び次条において同じ。)を請求すべき旨及び株主又は社債権者となつた後三年内にこれを請求しないときは、その権利を失うべき旨を公告し、かつ、知れたる権利者には各別にその旨を通知しなければならない。
2 株主又は社債権者であつた者が前項の請求をするには、従前の株券、端株券又は債券(次項及び次条において「従前の株券等」という。)を会社又は新会社に提出しなければならない。
3 従前の株券等は、公示催告の手続によつて、無効とすることができる。この場合においては、除権判決を得た者については、前項の規定を適用しない。
4 会社又は新会社が第一項の公告をしても同項の期間内に株券又は債券の交付を請求しないときは、同項に定める株主又は社債権者は、その権利を失う。
5 前項の規定により株主がその権利を失つたときは、会社又は新会社は、商法第二百十条(自己株式の取得の禁止)の規定にかかわらず、その株式を取得することができる。この場合においては、会社又は新会社は、相当の時期にその株式を処分しなければならない。
第二百六十三条
株主又は社債権者であつた者が前条第一項の期間内に従前の株券等を提出できない場合において、同期間内にその者の請求があり、かつ、その期間内に他にこれを請求する者がないときは、会社又は新会社は、同条の規定にかかわらず、その請求者に対し、株券又は債券の交付をすることができる。
(株式等の引受権の譲渡)
第二百六十四条
更生債権者、更生担保権者又は株主は、更生計画の定によつて会社又は新会社の株式又は社債を引き受ける権利を有するときは、これを他に譲渡することができる。
(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特例)
第二百六十五条
更生債権者、更生担保権者又は株主が更生計画の定によつて会社又は新会社の株式を取得する場合には、その取得は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第九条の二(大規模会社の株式保有の制限)及び第十一条(金融会社の株式保有の制限)の規定の適用については、これを代物弁済による取得とみなす。
(証券取引法の特例)
第二百六十六条
更生計画の定によつて更生債権者、更生担保権者又は株主に対して会社又は新会社の株式又は社債を発行する場合には、証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第四条第一項(有価証券の募集又は売出に関する届出)の規定は、適用しない。
(財団に関する処分の制限の特例)
第二百六十七条
更生計画の定によつて、会社の財産を処分する場合には、工場財団その他の財団又は財団に属する財産の処分の制限に関する法令の規定は、適用しない。
(許可、認可等に基く権利の承継)
第二百六十八条
更生計画において会社が行政庁から得ていた許可、認可、免許その他の処分に基く権利義務を新会社に移転することを定めたときは、新会社は、他の法令の規定にかかわらず、その権利義務を承継する。
(法人税法等の特例)
第二百六十九条
更生計画において新会社が会社の租税債務を承継することを定めたときは、新会社は、その租税を納める義務を負い、会社の租税債務は、消滅する。
2 更生手続開始の決定があつたときは、会社の事業年度は、その開始の時に終了し、これに続く事業年度は、計画認可の時又は更生手続終了の日に終了するものとする。但し、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第十三条第一項ただし書(事業年度の期間が一年をこえる場合)及び地方税法第七十二条の十三第四項(事業年度の期間が一年をこえる場合)の規定の適用を妨げない。
3 更生手続による会社の財産の評価換及び債務の消滅による益金で、更生手続開始前から繰り越されている法人税法第二条第二十号(定義)に規定する欠損金額(同法第五十七条第一項(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)又は第五十八条第一項(青色申告書を提出しなかつた事業年度の災害による損失金の繰越し)の規定の適用を受けるものを除く。)に達するまでの金額は、当該財産の評価換又は債務の消滅のあつた各事業年度の同法による所得の金額の計算上益金の額に算入しない。
4 更生手続開始の時に続く会社の事業年度の法人税及び事業税については、法人税法第七十一条(中間申告)(同法第百四十五条第一項(外国法人に対する準用)において準用する場合を含む。)及び地方税法第七十二条の二十六(事業年度の期間が六月をこえる法人の中間申告納付)の規定は、適用しない。
5 第十七条第一項、第二項、第三項前段、第十八条第一項、第十八条の二から第十九条まで、第二十条第二項から第四項まで及び第二十一条(第二十二条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定による登記については、登録免許税を課さない。
6 計画において会社が新株を発行することを定めた場合(次項に該当する場合を除く。)における資本の増加の登記の登録免許税の税率は、登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)第九条(課税標準及び税率)の規定にかかわらず、千分の一(増加した資本の金額のうち、更生債権者、更生担保権者又は株主に対しあらたに払込み又は現物出資をさせないで新株を発行する部分に相当する金額以外の金額に対応する部分については、千分の三・五)とする。
7 計画において会社が他の会社と合併することを定めた場合における新会社の設立又は合併による資本の増加の登記の登録免許税の税率は、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、千分の一(それぞれ資本の金額又は合併により増加した資本の金額のうち、合併により消滅した会社の当該合併の直前における資本の金額に対応する部分に相当する金額及び更生債権者又は更生担保権者に株式を割り当てる部分に相当する金額以外の金額に対応する部分については、千分の三・五)とする。
8 計画において合併によらないで新会社を設立することを定めた場合における新会社の設立の登記の登録免許税の税率は、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、千分の一(資本の金額のうち、更生債権者、更生担保権者又は株主に対しあらたに払込み又は現物出資をさせないで株式を発行する部分に相当する金額以外の金額に対応する部分については、千分の三・五)とする。
9 計画において新会社が会社から不動産又は船舶に関する権利の移転又は設定を受けることを定めた場合におけるその移転又は設定の登記の登録免許税の税率は、登録免許税法第九条の規定にかかわらず、千分の四とする。ただし、当該登記につき当該税率を適用して計算した登録免許税の額が同条の規定を適用して計算した登録免許税の額をこえるときは、この限りでない。
(退職手当)
第二百七十条
更生手続開始後会社の取締役、代表取締役、監査役又は使用人であつた者で、引き続き新会社の取締役、代表取締役、監査役又は使用人となつたものは、会社から退職したことを理由として退職手当の支給を受けることができない。
2 前項に定める者の会社における在職期間は、退職手当の計算については、新会社における在職期間とみなす。
(更生計画の変更)
第二百七十一条
更生計画認可の決定があつた後やむを得ない事由で計画に定める事項を変更する必要が生じたときは、更生手続終了前に限り、裁判所は、管財人、会社、届出をした更生債権者若しくは更生担保権者又は株主の申立により、計画を変更することができる。
2 前項の規定により更生債権者、更生担保権者又は株主に不利な影響を及ぼすものと認められる計画の変更の申立があつた場合には、更生計画案の提出があつた場合の手続に関する規定を準用する。但し、計画の変更によつて不利な影響を受けない権利者は、手続に参加させることを要せず、また、従前の計画に同意した者で変更計画案について決議をするための関係人集会に出席しないものは、変更計画案に同意したものとみなす。
3 計画の変更により第二百十一条第三項の規定による定めを取り消したときは、裁判所は、その旨を公告しなければならない。この場合には、第十五条の規定は、適用しない。
4 第二百三十六条及び第二百三十七条の規定は、計画変更の決定があつた場合に準用する。
(更生手続の終結)
第二百七十二条
更生計画が遂行されたとき、又は計画が遂行されることが確実であると認めるに至つたときは、裁判所は、管財人の申立により又は職権で、更生手続終結の決定をし、且つ、その主文及び理由の要旨を公告しなければならない。但し、送達をすることを要しない。
2 第三十五条第一項の規定は、前項の決定があつた場合に準用する。
第九章 更生手続の廃止
(更生計画認可前の廃止)
第二百七十三条
左の場合においては、裁判所は、職権で、更生手続廃止の決定をしなければならない。
一 裁判所の定めた期間若しくはその伸長した期間内に更生計画案の提出がないか、又はその期間内に提出されたすべての計画案が関係人集会の審理若しくは決議に付するに足りないものであるとき。
二 計画案が否決されたか、又は決議のための関係人集会の第一期日から二月内若しくはその伸長した期間内に可決されないとき。
第二百七十三条の二
更生計画認可の決定前に更生の見込みがないことが明らかになつたときは、裁判所は、管財人の申立てにより又は職権で、更生手続廃止の決定をしなければならない。
第二百七十四条
会社が届出期間内に届出をしたすべての更生債権者及び更生担保権者に対する債務を完済できることが明かになつたときは、裁判所は、管財人、会社又は届出をした更生債権者若しくは更生担保権者の申立により、更生手続廃止の決定をしなければならない。
2 申立人は、前項に定める更生手続廃止の原因たる事実を疎明しなければならない。
第二百七十五条
前条の申立があつたときは、裁判所は、会社並びに届出をした更生債権者及び更生担保権者に対し、その旨及び意見があれば裁判所に申し出るべき旨の通知を発し、且つ、利害関係人の閲覧に供するため、その申立に関する書類を備えて置かなければならない。
第二百七十六条
裁判所は、前条の通知発送後一月以上を経過した後でなければ更生手続廃止の決定をすることができない。
(更生計画認可後の廃止)
第二百七十七条
更生計画認可の決定があつた後計画遂行の見込がないことが明かになつたときは、裁判所は、管財人の申立により又は職権で、更生手続廃止の決定をしなければならない。
第二百七十八条
裁判所は、前条の決定をする前に、期日を開いて利害関係人の意見を聞かなければならない。
2 前項の期日を定める決定は、公告し、且つ、確定した更生債権又は更生担保権に基き更生計画の定によつて認められた権利を有する者のうち知れているものに対し、送達しなければならない。
第二百七十九条
第二百七十七条の規定による更生手続の廃止は、更生計画の遂行及びこの法律の規定によつて生じた効力に影響を及ぼさない。
(廃止決定の公告)
第二百八十条
裁判所は、更生手続廃止の決定をしたときは、その主文及び理由の要旨を公告しなければならない。但し、送達をすることを要しない。
(抗告)
第二百八十一条
第二百三十七条第一項及び第二項の規定は、更生手続廃止の決定に対する抗告及び第八条において準用する民事訴訟法第三百三十六条の規定による抗告及び同法第三百三十七条の規定による抗告の許可の申立てについて準用する。
2 第三十五条第一項の規定は、更生手続廃止の決定が確定した場合に準用する。
(共益債権の弁済)
第二百八十二条
更生手続廃止の決定が確定したときは、第二十三条第一項又は第二十七条の規定により破産の宣告又は和議申立の認可をすべき場合を除き、管財人は、共益債権を弁済し、異議のあるものについては、その債権者のために供託をしなければならない。
(更生債権者表等の記載の効力)
第二百八十三条
第二百七十三条から第二百七十四条までの規定による更生手続廃止の決定が確定したときは、確定した更生債権又は更生担保権については、更生債権者表又は更生担保権者表の記載は、会社に対し、確定判決と同一の効力を有する。但し、会社が更生債権及び更生担保権調査の期日においてその権利に対して異議を述べなかつた場合に限る。
2 更生債権者又は更生担保権者は、更生手続終了の後、会社に対し、更生債権者表又は更生担保権者表の記載により強制執行をすることができる。
第二百八十四条
第二百四十五条第二項の規定は、第二百七十七条の規定による更生手続廃止の決定が確定した場合に準用する。
第十章 報酬及び報償金
(管財人等の報酬等)
第二百八十五条
調査委員、保全管理人、監督員及び管財人は、費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができる。法律顧問、保全管理人代理及び管財人代理も、また同様である。
2 前項に定める報酬の額は、その職務と責任にふさわしいものでなければならない。
第二百八十六条
前条に掲げる者がその資格を得た後、裁判所の許可を得ないで会社若しくは新会社に対する債権又はその株式を譲り受け、又は譲り渡したときは、これらの者は、費用及び報酬の支払を受けることができない。
(代理委員等の報償金等)
第二百八十七条
更生債権者、更生担保権者、株主若しくは代理委員又はその代理人が更生に貢献したときは、裁判所は、これらの者に対し、会社財産から適当な範囲内の費用を償還し、又は報償金を支払うことを許すことができる。その額は、裁判所が定める。
第二百八十八条
更生債権者、更生担保権者又は株主が更生手続開始後会社若しくは新会社に対する債権又はその株式を譲り受け、又は譲り渡して利益を得た事実があるときは、裁判所は、前条の許可をするにつき、その事実を考慮しなければならない。代理委員又は代理人がその資格を得た後、会社若しくは新会社に対する債権又はその株式を譲り受け、又は譲り渡して利益を得た事実があるときも、また同様である。
(抗告)
第二百八十九条
第二百八十五条及び第二百八十七条の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第十一章 罰則
(詐欺更生罪)
第二百九十条
会社の取締役若しくはこれに準ずべき者又は支配人が更生手続開始の前後を問わず、自己若しくは他人の利益を図り、又は債権者、会社の財産の上に特別の先取特権、質権、抵当権若しくは商法による留置権を有する者(以下本条中「担保権者」という。)若しくは株主を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をし、会社について更生手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
一 会社の財産を隠匿し、き棄し、又は債権者、担保権者若しくは株主の不利益に処分すること。
二 会社の負担を虚偽に増加すること。
三 法律の規定により作るべき商業帳簿を作らず、これに財産の現況を知るに足りる記載をせず、若しくは不正の記載をし、又はこれを隠匿し、若しくはき棄すること。
2 前項の規定は、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条がある場合には、適用しない。
(第三者の詐欺更生罪)
第二百九十一条
前条に規定する者でなくて同条に規定する行為をした者又は自己若しくは他人を利する目的で更生債権者、更生担保権者若しくは株主として虚偽の権利を行つた者は、会社について更生手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
2 前項の規定は、刑法に正条がある場合には、適用しない。
(収賄罪)
第二百九十二条
調査委員、保全管理人、監督員、管財人、法律顧問、保全管理人代理又は管財人代理がその職務に関し賄賂を収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。更生債権者、更生担保権者、株主、代理委員又はこれらの者の代理人、役員若しくは職員が関係人集会の決議に関し賄賂を収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときも、また同様である。
2 調査委員、保全管理人又は管財人(以下本条中「管財人等」という。)が法人であるときは、管財人等の職務に従事するその役員又は職員がその職務に関し賄賂を収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。管財人等が法人である場合において、その役員又は職員が管財人等の職務に関し管財人等に賄賂を収受させ、又はその供与を要求し、若しくは約束したときも、また同様である。
3 犯人又は法人たる管財人等の収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
(贈賄罪)
第二百九十三条
前条第一項若しくは第二項に規定する賄賂を供与し、又はその申込若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
(報告及び検査拒絶の罪)
第二百九十四条
会社又は新会社(合併によつて設立される新会社を除く。)の取締役、監査役又は支配人その他の使用人が第九十八条の二第一項(第四十三条第一項、第三項、第百一条の三又は第二百四十七条第四項において準用する場合を含む。)の規定による報告若しくは検査を拒み、又は虚偽の報告をしたときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(過料に処すべき場合)
第二百九十五条
更生手続の開始された会社又は新会社の取締役若しくはこれに準ずべき者又は支配人は、次の各号のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。
一 第百三十条第二項の規定による裁判所の命令に違反したとき。
二 第二百四十八条第一項又は第二項の規定による裁判所の命令に違反したとき。
三 第二百六十二条第一項の規定によつてすべき公告若しくは通知をすることを怠り、又は同条第五項の規定に違反して株式の処分をすることを怠つたとき。
2 更生債権者、更生担保権者、株主及び更生のために債務を負担し、又は担保を供する者が前項第二号に掲げる行為をしたときも、また同項と同様である。
附 則
この法律は、昭和二十七年八月一日から施行する。
附 則 (昭和二七年七月三一日法律第二六八号) 抄
1 この法律は、昭和二十七年八月一日から施行する。
附 則 (昭和二七年七月三一日法律第二七〇号) 抄
1 この法律は、昭和二十七年八月一日から施行する。
附 則 (昭和二八年七月三一日法律第一〇二号) 抄
1 この法律は、昭和二十八年八月一日から施行する。
附 則 (昭和二九年五月一三日法律第九五号) 抄
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
附 則 (昭和二九年五月一三日法律第九六号) 抄
1 この法律は、公布の日から起算して五日を経過した日から施行する。
附 則 (昭和三〇年六月三〇日法律第二八号) 抄
1 この法律は、昭和三十年七月一日から施行する。
附 則 (昭和三〇年七月三〇日法律第一〇四号) 抄
1 この法律は、昭和三十年八月一日から施行する。
附 則 (昭和三二年三月三一日法律第二八号) 抄
1 この法律は、昭和三十二年四月一日から施行する。
附 則 (昭和三二年六月一四日法律第一七三号) 抄
1 この法律は、昭和三十二年七月一日から施行する。
附 則 (昭和三三年四月三〇日法律第一〇六号) 抄
(施行期日)
1 この法律は、昭和三十三年七月一日から施行する。
附 則 (昭和三四年四月二〇日法律第一四八号) 抄
(施行期日)
1 この法律は、国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)の施行の日から施行する。
附 則 (昭和三四年一二月一五日法律第一九六号) 抄
1 この法律は、公布の日から施行する。
附 則 (昭和三七年三月三一日法律第五一号) 抄
(施行期日)
第一条
この法律は、昭和三十七年四月一日から施行する。
附 則 (昭和三七年四月二日法律第六七号) 抄
(施行期日)
第一条
この法律は、昭和三十七年四月一日から施行する。
附 則 (昭和三七年四月二〇日法律第八二号) 抄
(施行期日)
第一条
この法律は、昭和三十八年四月一日から施行する。
第四十一条
この法律の施行の際現に存する株式会社がこの法律の施行後最初に到来する決算期以前に取得し、又は製作した資産については、その決算期までは、前条の規定による改正後の会社更生法第百八十二条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
附 則 (昭和三七年九月一五日法律第一六一号) 抄
1 この法律は、昭和三十七年十月一日から施行する。
2 この法律による改正後の規定は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前にされた行政庁の処分、この法律の施行前にされた申請に係る行政庁の不作為その他この法律の施行前に生じた事項についても適用する。ただし、この法律による改正前の規定によつて生じた効力を妨げない。
3 この法律の施行前に提起された訴願、審査の請求、異議の申立てその他の不服申立て(以下「訴願等」という。)については、この法律の施行後も、なお従前の例による。この法律の施行前にされた訴願等の裁決、決定その他の処分(以下「裁決等」という。)又はこの法律の施行前に提起された訴願等につきこの法律の施行後にされる裁決等にさらに不服がある場合の訴願等についても、同様とする。
4 前項に規定する訴願等で、この法律の施行後は行政不服審査法による不服申立てをすることができることとなる処分に係るものは、同法以外の法律の適用については、行政不服審査法による不服申立てとみなす。
5 第三項の規定によりこの法律の施行後にされる審査の請求、異議の申立てその他の不服申立ての裁決等については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない。
6 この法律の施行前にされた行政庁の処分で、この法律による改正前の規定により訴願等をすることができるものとされ、かつ、その提起期間が定められていなかつたものについて、行政不服審査法による不服申立てをすることができる期間は、この法律の施行の日から起算する。
8 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
9 前八項に定めるもののほか、この法律の施行に関して必要な経過措置は、政令で定める。