法令名 民事執行規則
法令番号 昭和五十四年十一月八日最高裁判所規則第五号
施行年月日 昭和五十五年十月一日
最終改正 平成八年一二月一七日最高裁判所規則第六号
第一章 総則
(民事執行の申立ての方式)
第一条
 民事執行の申立ては、書面でしなければならない。
(裁判を告知すべき者の範囲)
第二条
1 次に掲げる裁判は、当該裁判が申立てに係る場合にあつてはその裁判の申立人及び相手方に対して、その他の場合にあつては民事執行の申立人及び相手方に対して告知しなければならない。
一 移送の裁判
二 執行抗告をすることができる裁判(申立てを却下する裁判を除く。)
三 民事執行法(昭和五十四年法律第四号。以下「法」という。)第四十条第一項、法第百十七条第一項又は法第百八十三条第二項(これらを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定による裁判
四 法第十一条第二項において準用する法第十条第六項前段の規定による裁判及びこの裁判がされた場合における法第十一条第一項の規定による申立てについての裁判並びに法第百三十二条第三項又は法第百五十三条第三項(これらを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定による裁判及びこれらの裁判がされた場合における法第百三十二条第一項若しくは第二項又は法第百五十三条第一項若しくは第二項(これらを準用し、又はその例による場合を含む。)の申立てを却下する裁判
2 民事執行の手続に関する裁判で前項各号に掲げるもの以外のものは、当該裁判が申立てに係るときは、申立人に対して告知しなければならない。
(催告及び通知)
第三条
1 民事訴訟規則(平成八年最高裁判所規則第五号)第四条の規定は、民事執行の手続における催告及び通知について準用する。この場合において、同条第二項、第五項及び第六項中「裁判所書記官」とあるのは「裁判所書記官又は執行官」と読み替えるものとする。
2 前項の規定にかかわらず、民事訴訟規則第四条第三項の規定は、法第百七十三条第三項の規定による催告については準用せず、同規則第四条第五項の規定は、第五十六条第二項又は第五十九条第三項(これらの規定を準用し、又はその例による場合を含む。)の規定による通知については準用しない。
(公告及び公示)
第四条
1 民事執行の手続における公告は、公告事項を記載した書面を裁判所の掲示場その他裁判所内の公衆の見やすい場所に掲示して行う。
2 裁判所書記官又は執行官は、公告をしたときは、その旨及び公告の年月日を記録上明らかにしなければならない。
3 裁判所書記官又は執行官は、相当と認めるときは、公告事項の要旨を日刊新聞紙に掲載する等の方法により公示することができる。
(執行抗告の提起期間の始期の特例)
第五条
 執行抗告の提起期間は、執行抗告をすることができる者が裁判の告知を受けるべき者でないときは、その裁判の告知を受けるべきすべての者に告知された日から進行する。
(執行抗告の理由の記載方法)
第六条
1 執行抗告の理由には、原裁判の取消し又は変更を求める事由を具体的に記載しなければならない。
2 前項の事由が、法令の違反であるときはその法令の条項又は内容及び法令に違反する事由を、事実の誤認であるときは誤認に係る事実を摘示しなければならない。
(執行抗告に係る事件記録の送付)
第七条
1 執行抗告があつた場合において、執行裁判所が民事執行の事件の記録を送付する必要がないと認めたときは、執行裁判所の裁判所書記官は、抗告事件の記録のみを抗告裁判所の裁判所書記官に送付すれば足りる。
2 前項の規定により抗告事件の記録が送付された場合において、抗告裁判所が民事執行の事件の記録が必要であると認めたときは、抗告裁判所の裁判所書記官は、速やかに、その送付を執行裁判所の裁判所書記官に求めなければならない。
(執行異議の申立ての方式)
第八条
1 執行異議の申立ては、期日においてする場合を除き、書面でしなければならない。
2 執行異議の申立てをするときは、異議の理由を明らかにしなければならない。
(代理人の許可の申立ての方式)
第九条
1 法第十三条第一項の許可の申立ては、代理人となるべき者の氏名、住所、職業及び本人との関係並びにその者を代理人とすることが必要であることの理由を記載した書面でしなければならない。
2 前項の書面には、本人と代理人となるべき者との関係を証する文書を添付しなければならない。
(法第十五条第一項の最高裁判所規則で定める担保提供の方法)
第十条
 法第十五条第一項の規定による担保は、発令裁判所(同項に規定する発令裁判所をいう。以下この条において同じ。)の許可を得て、担保を立てるべきことを命じられた者が銀行、保険会社、農林中央金庫、商工組合中央金庫、全国を地区とする信用金庫連合会、信用金庫又は労働金庫(以下「銀行等」という。)との間において次に掲げる要件を満たす支払保証委託契約を締結する方法によつて立てることができる。
一 銀行等は、担保を立てるべきことを命じられた者のために、発令裁判所が定めた金額を限度として、担保に係る損害賠償請求権についての債務名義又はその損害賠償請求権の存在を確認する確定判決若しくはこれと同一の効力を有するものに表示された額の金銭を担保権利者に支払うものであること。
二 担保取消しの決定が確定した時に契約の効力が消滅するものであること。
三 契約の変更又は解除をすることができないものであること。
四 担保権利者の申出があつたときは、銀行等は、契約が締結されたことを証する文書を担保権利者に交付するものであること。
(送達場所等の届出の方式等)
第十条の二
 民事訴訟規則第四十一条及び第四十二条の規定は、法第十六条第一項の規定による送達を受けるべき場所の届出及び送達受取人の届出について準用する。
(執行官が民事執行を開始する日時の指定)
第十一条
1 執行官は、民事執行の申立てがあつたときは、速やかに、民事執行を開始する日時を定め、申立人が通知を要しない旨を申し出た場合を除き、これを申立人に通知しなければならない。
2 前項の規定により定める日は、やむを得ない事由がある場合を除き、申立てがあつた日から一週間以内の日としなければならない。
(民事執行の調書)
第十二条
1 執行裁判所における期日については、裁判所書記官は、調書を作成しなければならない。
2 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第百六十条第二項及び第三項並びに民事訴訟規則第六十六条(第一項第三号及び第六号を除く。)から第六十九条までの規定は、前項の調書について準用する。
第十三条
1 執行官は、民事執行を実施したときは、次に掲げる事項を記載した調書を作成しなければならない。
一 民事執行に着手した日時及びこれを終了した日時
二 民事執行の場所及び目的物
三 民事執行に立ち会つた者の表示
四 実施した民事執行の内容
五 民事執行に着手した後これを停止したときは、その事由
六 民事執行に際し抵抗を受けたときは、その旨及びこれに対して採つた措置
七 民事執行の目的を達することができなかつたときは、その事由
八 民事執行を続行することとしたときは、その事由
2 執行官は、民事執行に立ち会つた者に、調書に署名押印させなければならない。この場合において、その者が署名押印しなかつたときは、執行官は、その事由を調書に記載しなければならない。
3 前二項の規定は、配当等(法第八十四条第三項に規定する配当等をいう。以下同じ。)の実施については、適用しない。
4 第一項及び第二項の規定は、執行官が法第五十五条第二項、法第七十七条第一項、法第百十四条第一項、法第百十五条第一項、法第百二十七条第一項、法第百七十一条第一項若しくは法第百八十七条の二第二項又は第八十一条、第八十九条第一項若しくは第百七十四条第二項(これらを準用し、又はその例による場合を含む。)の規定による決定を執行した場合について準用する。
(執行裁判所に対する民事執行の申立ての取下げの通知)
第十四条
 執行裁判所に対する民事執行の申立てが取り下げられたときは、裁判所書記官は、民事執行を開始する決定の送達を受けた相手方に対し、その旨を通知しなければならない。
(執行官がした民事執行の手続の取消しの通知)
第十五条
 執行官は、民事執行の手続を取り消したときは、民事執行の申立人に対し、その理由を通知しなければならない。
(民事訴訟規則の準用)
第十五条の二
 特別の定めがある場合を除き、民事執行の手続に関しては、民事訴訟規則の規定を準用する。
第二章 強制執行
 第一節 総則
(執行文付与の申立ての方式等)
第十六条
1 執行文付与の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 債権者及び債務者並びに代理人の表示
二 債務名義の表示
三 法第二十七条又は法第二十八条第一項の規定による執行文の付与を求めるときは、その旨及びその事由
2 確定しなければその効力を生じない裁判に係る債務名義について前項の申立てをするときは、その裁判が確定したことが記録上明らかであるときを除き、申立書にその裁判の確定を証する文書を添付しなければならない。
3 第一項の規定は、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促の正本の交付を更に求める場合について準用する。
(執行文の記載事項)
第十七条
1 債務名義に係る請求権の一部について執行文を付与するときは、強制執行をすることができる範囲を執行文に記載しなければならない。
2 法第二十七条第二項の規定により債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文を付与する場合において、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官又は公証人に明白であるときは、その旨を執行文に記載しなければならない。
3 法第二十八条第一項の規定により執行文を付与するときは、その旨を執行文に記載しなければならない。
4 執行文には、付与の年月日を記載して裁判所書記官又は公証人が記名押印しなければならない。
(債務名義の原本への記入)
第十八条
1 裁判所書記官又は公証人は、執行文を付与したときは、債務名義の原本にその旨、付与の年月日及び執行文の通数を記載し、並びに次の各号に掲げる場合に応じ、それぞれ当該各号に定める事項を記載しなければならない。
一 債務名義に係る請求権の一部について付与したとき 強制執行をすることができる範囲
二 債務名義に表示された当事者以外の者が債権者又は債務者であるときその旨及びその者の氏名又は名称
2 裁判所書記官は、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促の正本を更に交付したときは、当該判決又は当該支払督促の原本にその旨、交付の年月日及び交付した正本の通数を記載しなければならない。
(執行文の再度付与等の通知)
第十九条
1 裁判所書記官又は公証人は、法第二十八条第一項の規定により執行文を付与したときは、債務者に対し、その旨、その事由及び執行文の通数を通知しなければならない。
2 前項の規定は、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促の正本を更に交付した場合について準用する。
(公証人法第五十七条ノ二第一項の最高裁判所規則で定める執行証書の正本等の送達方法)
第二十条
1 公証人法(明治四十一年法律第五十三号)第五十七条ノ二第一項の最高裁判所規則で定める方法は、次項から第四項までの申立てに基づいてされる公証人による送達、執行官による送達及び公示送達とする。
2 債務者が執行証書の作成を公証人に嘱託するためにその役場に出頭したときは、債権者は、当該公証人に対し、当該執行証書に係る公証人法第五十七条ノ二第一項に規定する書類について、公証人自らがその場で債務者に交付してする送達の申立てをすることができる。
3 債権者は、送達と同時に強制執行を実施することを求めるときその他必要があるときは、執行官に対し、前項の書類の送達の申立てをすることができる。
4 債務者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れないとき、若しくは次項及び公証人法第五十七条ノ二第三項において準用する民事訴訟法第百七条第一項の規定による送達をすることができないとき、又は外国においてすべき送達についてその送達が著しく困難であるときは、債権者は、第二項の書類の公示送達について、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所(この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所)の許可を受けて、その地方裁判所に所属する執行官に対し、その書類の公示送達の申立てをすることができる。
5 民事訴訟法第百二条第一項及び第二項の規定は第二項の送達について、同法第百一条から第百三条まで、第百五条、第百六条並びに第百七条第一項及び第三項並びに民事訴訟規則第四十三条及び第四十四条の規定は第三項の送達について、同法第百十一条及び第百十二条並びに同規則第四十六条第二項の規定は前項の公示送達について準用する。
(強制執行の申立書の記載事項及び添付書類)
第二十一条
 強制執行の申立書には、次に掲げる事項を記載し、執行力のある債務名義の正本を添付しなければならない。
一 債権者及び債務者並びに代理人の表示
二 債務名義の表示
三 第五号に規定する場合を除き、強制執行の目的とする財産の表示及び求める強制執行の方法
四 金銭の支払を命ずる債務名義に係る請求権の一部について強制執行を求めるときは、その旨及びその範囲
五 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百十四条第二項本文又は第三項に規定する請求に係る強制執行を求めるときは、求める裁判
(強制執行開始後の申立債権者の承継)
第二十二条
1 強制執行の開始後に申立債権者に承継があつた場合において、承継人が自己のために強制執行の続行を求めるときは、法第二十七条第二項に規定する執行文の付された債務名義の正本を提出しなければならない。
2 前項の規定により債務名義の正本が提出されたときは、裁判所書記官又は執行官は、債務者に対し、その旨を通知しなければならない。
(特別代理人についての民事訴訟規則の準用)
第二十二条の二
 民事訴訟規則第十六条の規定は、法第四十一条第二項の特別代理人について準用する。
(執行費用等の額を定める手続への民事訴訟規則の準用)
第二十二条の三
 民事訴訟規則第二十四条、第二十五条第一項及び第二十六条の規定は法第四十二条第四項の申立て及び同項の規定による裁判所書記官の処分について、同規則第二十八条の規定は同項の規定による裁判所書記官の処分の更正の申立てについて準用する。
 第二節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行
  第一款 不動産に対する強制執行
   第一目 強制競売
(申立書の添付書類)
第二十三条
 不動産に対する強制競売の申立書には、執行力のある債務名義の正本のほか、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 登記がされた不動産については、登記簿の謄本(一棟の建物を区分した建物にあつては、当該区分した建物に係る登記簿の抄本)及び登記用紙の表題部に債務者以外の者が所有者として記載されている場合にあつては、債務者の所有に属することを証する文書
二 登記がされていない土地又は建物については、債務者の所有に属することを証する文書及び不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)第百一条第二項に規定する図面
三 土地については、その土地に存する建物及び立木に関する法律(明治四十二年法律第二十二号)第一条に規定する立木(以下「立木」という。)の登記簿の謄本
四 建物又は立木については、その存する土地の登記簿の謄本
五 不動産に対して課される租税その他の公課の額を証する文書
(開始決定の通知)
第二十四条
 強制管理の開始決定がされた不動産について強制競売の開始決定がされたときは、裁判所書記官は、強制管理の差押債権者及び管理人に対し、その旨を通知しなければならない。
(二重開始決定等の通知)
第二十五条
1 法第四十七条第一項の規定により開始決定がされたときは、裁判所書記官は、先の開始決定に係る差押債権者に対し、その旨を通知しなければならない。
2 先の開始決定に係る強制競売又は競売の手続が停止されたときは、裁判所書記官は、後の開始決定に係る差押債権者に対し、その旨を通知しなければならない。
3 法第四十七条第四項の裁判がされたときは、裁判所書記官は、債務者に対し、その旨を通知しなければならない。
(配当要求の方式)
第二十六条
 配当要求は、債権(利息その他の附帯の債権を含む。)の原因及び額を記載した書面でしなければならない。
(配当要求の通知)
第二十七条
 配当要求があつたときは、裁判所書記官は、差押債権者及び債務者に対し、その旨を通知しなければならない。
(職務執行区域外における現況調査)
第二十八条
 執行官は、不動産の現況調査のため必要があるときは、所属の地方裁判所の管轄区域外で職務を行うことができる。
(現況調査報告書)
第二十九条
1 執行官は、不動産の現況調査をしたときは、次に掲げる事項を記載した現況調査報告書を所定の日までに執行裁判所に提出しなければならない。
一 事件の表示
二 不動産の表示
三 調査の日時、場所及び方法
四 調査の目的物が土地であるときは、次に掲げる事項イ 土地の形状及び現況地目ロ 占有者の表示及び占有の状況ハ 占有者が債務者以外の者であるときは、その者の占有の開始時期、権原の有無及び権原の内容の細目についての関係人の陳述又は関係人の提示に係る文書の要旨及び執行官の意見ニ 土地に建物が存するときは、その建物の種類、構造、床面積の概略及び所有者の表示
五 調査の目的物が建物であるときは、次に掲げる事項イ 建物の種類、構造及び床面積の概略ロ 前号ロ及びハに掲げる事項ハ 敷地の所有者の表示ニ 敷地の所有者が債務者以外の者であるときは、債務者の敷地に対する占有の権原の有無及び権原の内容の細目についての関係人の陳述又は関係人の提示に係る文書の要旨及び執行官の意見
六 当該不動産について、債務者の占有を解いて執行官に保管させる仮処分が執行されているときは、その旨及び執行官が保管を開始した年月日
七 その他執行裁判所が定めた事項
2 現況調査報告書には、調査の目的物である土地又は建物の見取図及び写真を添付しなければならない。
(評価書)
第三十条
1 評価人は、不動産の評価をしたときは、次に掲げる事項を記載した評価書を所定の日までに執行裁判所に提出しなければならない。
一 事件の表示
二 不動産の表示
三 不動産の評価額及び評価の年月日
四 不動産の所在する場所の環境の概要
五 評価の目的物が土地であるときは、次に掲げる事項イ 地積ロ 都市計画法(昭和四十三年法律第百号)、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)その他の法令に基づく制限の有無及び内容ハ 規準とした公示価格その他の評価の参考とした事項
六 評価の目的物が建物であるときは、その種類、構造及び床面積並びに残存耐用年数その他の評価の参考とした事項
七 評価額の算出の過程
八 その他執行裁判所が定めた事項
2 評価書には、不動産の形状を示す図面及び不動産の所在する場所の周辺の概況を示す図面を添付しなければならない。
(物件明細書の写しの備置き等)
第三十一条
1 物件明細書の写しの備置きは、売却の実施の日の一週間前までにしなければならない。
2 執行裁判所は、一般の閲覧に供するために、現況調査報告書及び評価書の写しを物件明細書の写しと共に執行裁判所に備え置かなければならない。
3 物件明細書の写し等が備え置かれたときは、裁判所書記官は、その旨及び備え置かれた年月日を記録上明らかにしなければならない。
(剰余を生ずる見込みがない場合の保証提供の方法等)
第三十二条
1 法第六十三条第二項の保証は、次に掲げるものを執行裁判所に提出する方法により提供しなければならない。
一 金銭
二 執行裁判所が相当と認める有価証券
三 銀行等が差押債権者のために一定の額の金銭を執行裁判所の催告により納付する旨の期限の定めのない支払保証委託契約が差押債権者と銀行等との間において締結されたことを証する文書
2 民事訴訟法第八十条本文の規定は、前項の保証について準用する。
(買受けの申出をすることができる者の制限)
第三十三条
 執行裁判所は、法令の規定によりその取得が制限されている不動産については、買受けの申出をすることができる者を所定の資格を有する者に限ることができる。
(入札の種類)
第三十四条
 不動産を売却するための入札は、入札期日に入札をさせた後開札を行う期日入札及び入札期間内に入札をさせて開札期日に開札を行う期間入札とする。
(入札期日等の指定)
第三十五条
 執行裁判所は、期日入札の方法により不動産を売却するときは、入札期日及び売却決定期日(以下「入札期日等」という。)を定めなければならない。この場合において、売却決定期日は、やむを得ない事由がある場合を除き、入札期日から一週間以内の日としなければならない。
(期日入札の公告等)
第三十六条
1 入札期日等が定められたときは、裁判所書記官は、入札期日の二週間前までに、法第六十四条第四項に規定する事項のほか、次に掲げる事項を公告しなければならない。
一 事件の表示
二 売却決定期日を開く日時及び場所
三 買受けの申出の保証の額及び提供の方法
四 法第六十一条の規定により不動産を一括して売却することを定めたときは、その旨
五 第三十三条の規定により買受けの申出をすることができる者の資格を制限したときは、その制限の内容
六 不動産に対して課される租税その他の公課の額
七 物件明細書、現況調査報告書及び評価書の写しが入札期日の一週間前までに執行裁判所において一般の閲覧に供するため備え置かれる旨
2 裁判所書記官は、不動産所在地の市町村に対し、公告事項を記載した書面を当該市町村の掲示場に掲示するよう入札期日の二週間前までに嘱託しなければならない。
(入札期日等の通知)
第三十七条
 入札期日等が定められたときは、裁判所書記官は、次に掲げる者に対し、入札期日等を開く日時及び場所を通知しなければならない。
一 差押債権者及び債務者
二 配当要求をしている債権者
三 当該不動産について差押えの登記前に登記がされた権利を有する者
四 知れている抵当証券の所持人及び裏書人
五 その他執行裁判所が相当と認める者
(期日入札における入札)
第三十八条
1 期日入札における入札は、入札書を執行官に差し出す方法により行う。
2 入札書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 入札人の表示
二 代理人によつて入札をするときは、代理人の表示
三 事件の表示その他の不動産を特定するために必要な事項
四 入札価額
3 法人である入札人は、代表者の資格を証する文書を執行官に提出しなければならない。
4 入札人の代理人は、代理権を証する文書を執行官に提出しなければならない。
5 共同して入札をしようとする者は、あらかじめ、これらの者の関係及び持分を明らかにして執行官の許可を受けなければならない。
6 入札は、変更し、又は取り消すことができない。
(期日入札における買受けの申出の保証の額)
第三十九条
1 期日入札における買受けの申出の保証の額は、最低売却価額の十分の二とする。
2 執行裁判所は、相当と認めるときは、前項の額を超える保証の額を定めることができる。
(期日入札における買受けの申出の保証の提供方法)
第四十条
1 前条の買受けの申出の保証は、入札書を差し出す際に次に掲げるもの(以下「保証金等」という。)を執行官に提出する方法により提供しなければならない。
一 金銭
二 銀行又は執行裁判所の定める金融機関が自己を支払人として振り出した持参人払式の一般線引小切手で、提示期間の満了までに五日以上の期間のあるもの
三 銀行又は執行裁判所の定める金融機関が執行裁判所の預金口座のある銀行を支払人として振り出した持参人払式の一般線引小切手で、提示期間の満了までに五日以上の期間のあるもの
四 銀行等が買受けの申出をしようとする者のために一定の額の金銭を執行裁判所の催告により納付する旨の期限の定めのない支払保証委託契約が買受けの申出をしようとする者と銀行等との間において締結されたことを証する文書
2 執行裁判所は、相当と認めるときは、金銭を提出する方法により買受けの申出の保証を提供することができない旨を定めることができる。
(入札期日の手続)
第四十一条
1 執行官は、入札の催告をした後二十分を経過しなければ、入札を締め切つてはならない。
2 執行官は、開札に際しては、入札をした者を立ち会わせなければならない。この場合において、入札をした者が立ち会わないときは、適当と認められる者を立ち会わせなければならない。
3 開札が終わつたときは、執行官は、最高価買受申出人を定め、その氏名又は名称及び入札価額を告げ、かつ、次順位買受けの申出(法第六十七条に規定する次順位買受けの申出をいう。以下同じ。)をすることができる入札人がある場合にあつては、その氏名又は名称及び入札価額を告げて次順位買受けの申出を催告した後、入札期日の終了を宣しなければならない。
(期日入札における最高価買受申出人等の決定)
第四十二条
1 最高の価額で買受けの申出をした入札人が二人以上あるときは、執行官は、これらの者に更に入札をさせて最高価買受申出人を定める。この場合においては、入札人は、先の入札価額に満たない価額による入札をすることができない。
2 前項の入札人の全員が入札をしないときは、くじで最高価買受申出人を定める。同項の入札において最高の価額で買受けの申出をした入札人が二人以上あるときも、同様とする。
3 次順位買受けの申出をした入札人が二人以上あるときは、くじで次順位買受申出人を定める。
(入札期日を開く場所における秩序維持)
第四十三条
 執行官は、入札期日を開く場所における秩序を維持するため必要があると認めるときは、その場所に参集した者に対し身分に関する証明を求め、及び執行裁判所に対し援助を求めることができる。
(期日入札調書)
第四十四条
1 執行官は、期日入札を実施したときは、速やかに、次に掲げる事項を記載した期日入札調書を作成し、執行裁判所に提出しなければならない。
一 不動産の表示
二 入札の催告をした日時及び入札を締め切つた日時
三 最高価買受申出人及び次順位買受申出人並びに代理人の表示
四 最高価買受申出人及び次順位買受申出人の入札価額及び買受けの申出の保証の提供方法
五 適法な入札がなかつたときは、その旨
六 第四十一条第二項後段の規定により入札をした者以外の者を開札に立ち会わせたときは、その者の表示
七 第四十二条の規定により最高価買受申出人又は次順位買受申出人を定めたときは、その旨
八 法第六十五条に規定する措置を採つたときは、その理由及び採つた措置
2 執行官は、最高価買受申出人及び次順位買受申出人又はこれらの代表者若しくは代理人に、期日入札調書に署名押印させなければならない。この場合においては、第十三条第二項後段の規定を準用する。
3 期日入札調書には、入札書を添付しなければならない。
(期日入札における買受けの申出の保証の返還等)
第四十五条
1 最高価買受申出人及び次順位買受申出人以外の入札人から入札期日の終了後直ちに申出があつたときは、執行官は、速やかに、保証金等を返還しなければならない。
2 保証金等の返還に係る受取証は、期日入札調書に添付しなければならない。
3 第一項の規定により入札人に返還した保証金等以外の保証金等については、執行官は、速やかに、これを執行裁判所に提出しなければならない。
(入札期間等の指定)
第四十六条
 執行裁判所は、期間入札の方法により不動産を売却するときは、入札期間、開札期日及び売却決定期日を定めなければならない。この場合において、入札期間は、一週間以上一月以内の範囲内で定め、開札期日は、入札期間の満了後一週間以内の日とし、売却決定期日は、やむを得ない事由がある場合を除き、開札期日から一週間以内の日としなければならない。
(期間入札における入札の方法)
第四十七条
 期間入札における入札は、入札書を入れて封をし、開札期日を記載した封筒を執行官に差し出す方法又はその封筒を他の封筒に入れて書留郵便により執行官に送付する方法により行う。
(期間入札における買受けの申出の保証の提供方法)
第四十八条
 期間入札における買受けの申出の保証は、執行裁判所の預金口座に一定の額の金銭を振り込んだ旨の金融機関の証明書又は第四十条第一項第四号の文書を、入札書を入れて封をし、開札期日を記載した封筒と共に執行官に提出する方法により提供しなければならない。
(期日入札の規定の準用)
第四十九条
 第三十六条、第三十七条、第三十八条第二項から第六項まで、第三十九条、第四十一条第二項及び第三項並びに第四十二条から第四十四条(第一項第二号を除く。)までの規定は期間入札について、第四十五条の規定は期間入札における買受けの申出の保証として第四十条第一項第四号の文書が提出された場合について準用する。この場合において、第三十六条中「入札期日」とあるのは、「入札期間の開始の日」と読み替えるものとする。
(競り売り)
第五十条
1 不動産を売却するための競り売りは、競り売り期日に買受けの申出の額を競り上げさせる方法により行う。
2 買受けの申出をした者は、より高額の買受けの申出があるまで、申出の額に拘束される。
3 執行官は、買受けの申出の額のうち最高のものを三回呼び上げた後、その申出をした者を最高価買受申出人と定め、その氏名又は名称及び買受けの申出の額を告げなければならない。
4 第三十五条から第三十七条まで、第三十八条第三項から第五項まで、第三十九条、第四十条、第四十一条第三項、第四十三条、第四十四条第一項(第二号、第六号及び第七号を除く。)及び第二項並びに第四十五条の規定は、競り売りについて準用する。この場合において、第四十一条第三項中「開札が終わつたときは、執行官は、最高価買受申出人を定め、その氏名又は名称及び入札価額を告げ、かつ」とあるのは、「執行官は」と読み替えるものとする。
(入札又は競り売り以外の方法による売却)
第五十一条
1 入札又は競り売りの方法により売却を実施させても適法な買受けの申出がなかつたときは、執行裁判所は、執行官に対し、他の方法により不動産の売却を実施すべき旨を命ずることができる。この場合においては、売却の実施の方法及び期限その他の条件を付することができる。
2 執行裁判所は、前項の規定により売却の実施を命じようとするときは、あらかじめ、差押債権者の意見を聴かなければならない。
3 執行裁判所は、第一項の規定により売却の実施を命ずるときは、買受けの申出の保証の額及び保証の提供は金銭又は執行裁判所が相当と認める有価証券を執行官に提出する方法によるべき旨を定めなければならない。
4 第一項の規定による決定がされたときは、裁判所書記官は、各債権者及び債務者に対し、その旨を通知しなければならない。
5 執行官は、第一項の規定による決定に基づいて不動産の売却を実施した場合において、買受けの申出があつたときは、速やかに、不動産の表示、買受けの申出をした者の表示並びに買受けの申出の額及び年月日を記載した調書を作成し、保証として提出された金銭又は有価証券と共にこれを執行裁判所に提出しなければならない。
6 前項の調書が提出されたときは、執行裁判所は、遅滞なく、売却決定期日を定めなければならない。
7 前項の規定により売却決定期日が定められたときは、裁判所書記官は、第三十七条各号に掲げる者及び買受けの申出をした者に対し、その期日を開く日時及び場所を通知しなければならない。
8 第四十四条第二項の規定は、第五項の調書について準用する。
(売却決定期日を開くことができない場合等の通知)
第五十二条
 法第七十二条第一項の規定により売却決定期日を開くことができないとき、又は法第七十三条第一項の規定により売却許可決定が留保されたときは、裁判所書記官は、最高価買受申出人及び次順位買受申出人に対し、その旨を通知しなければならない。
(変更後の売却決定期日の通知)
第五十三条
 売却の実施の終了後に売却決定期日が変更されたときは、裁判所書記官は、第三十七条各号に掲げる者並びに最高価買受申出人及び次順位買受申出人に対し、変更後の期日を通知しなければならない。
(売却許可決定等の告知の効力の発生時期)
第五十四条
 売却の許可又は不許可の決定は、言渡しの時に告知の効力を生ずる。
(売却許可決定の公告)
第五十五条
 売却許可決定が言い渡されたときは、裁判所書記官は、その内容を公告しなければならない。
(代金納付期限)
第五十六条
1 法第七十八条第一項の規定による代金納付の期限は、売却許可決定が確定した日から一月以内の日としなければならない。
2 前項の期限が定められたときは、裁判所書記官は、買受人に対し、これを通知しなければならない。
(保証として提供されたものの換価)
第五十七条
1 法第七十八条第三項(法第八十六条第三項において準用する場合を含む。次条において同じ。)の規定による有価証券の換価は、執行官にこれを売却させて行う。
2 有価証券の売却を命じられた執行官は、動産執行の手続によりこれを売却し、その売得金を執行裁判所に提出しなければならない。
第五十八条
 第三十二条第一項第三号又は第四十条第一項第四号(第五十条第四項において準用する場合を含む。)の文書に係る法第七十八条第三項の規定による換価は、執行裁判所の催告により所定の額の金銭を銀行等に納付させて行う。
(配当期日等の指定)
第五十九条
1 不動産の代金が納付されたときは、執行裁判所は、配当期日又は弁済金の交付の日(以下「配当期日等」という。)を定めなければならない。法第七十八条第四項前段の規定による申出があつた場合において、売却許可決定が確定したときも、同様とする。
2 配当期日等は、特別の事情がある場合を除き、前項前段の場合にあつては代金が納付された日から、同項後段の場合にあつては売却許可決定が確定した日から一月以内の日としなければならない。
3 弁済金の交付の日が定められたときは、裁判所書記官は、各債権者及び債務者に対し、その日時及び場所を通知しなければならない。
(計算書の提出の催告)
第六十条
 配当期日等が定められたときは、裁判所書記官は、各債権者に対し、債権の元本、配当期日等までの利息その他の附帯の債権及び執行費用の額を記載した計算書を一週間以内に執行裁判所に提出するよう催告しなければならない。
(売却代金の交付等の手続)
第六十一条
 各債権者及び債務者に対する売却代金の交付又は供託金の支払委託の手続は、裁判所書記官が行う。
(執行力のある債務名義の正本の交付)
第六十二条
1 差押債権者又は執行力のある債務名義の正本により配当要求をした債権者が債権の全額について配当等を受けたときは、債務者は、裁判所書記官に対し、当該債権者に係る執行力のある債務名義の正本の交付を求めることができる。
2 前項に規定する場合を除き、事件が終了したときは、同項の債権者は、裁判所書記官に対し、執行力のある債務名義の正本の交付を求めることができる。
3 前項の規定により執行力のある債務名義の正本の交付を求める債権者が債権の一部について配当等を受けた者であるときは、裁判所書記官は、当該債務名義の正本に配当等を受けた額を記載して、これを交付しなければならない。
   第二目 強制管理
(申立書の記載事項)
第六十三条
 強制管理の申立書には、第二十一条各号に掲げる事項のほか、収益の給付義務を負う第三者がある場合にあつては、その第三者の表示及び給付義務の内容を記載しなければならない。
(開始決定の通知)
第六十四条
 強制管理の開始決定がされたときは、裁判所書記官は、租税その他の公課を所管する官庁又は公署に対し、その旨を通知しなければならない。
(管理人の選任の通知等)
第六十五条
1 管理人が選任されたときは、裁判所書記官は、差押債権者、債務者及び収益の給付義務を負う第三者に対し、管理人の氏名又は名称を通知しなければならない。
2 執行裁判所は、管理人に対し、その選任を証する文書を交付しなければならない。
3 管理人が解任されたときは、裁判所書記官は、差押債権者、債務者及び収益の給付を命じられた第三者に対し、その旨を通知しなければならない。
(管理人の辞任)
第六十六条
1 管理人は、正当な理由があるときは、執行裁判所の許可を得て辞任することができる。
2 前条第三項の規定は、管理人が辞任した場合について準用する。
(強制管理の申立ての取下げ等の通知)
第六十七条
1 強制管理の申立てが取り下げられたとき、又は強制管理の手続を取り消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官は、管理人及び収益の給付を命じられた第三者に対し、その旨を通知しなければならない。
2 法第三十九条第一項第七号又は第八号に掲げる文書が提出されたときは、裁判所書記官は、管理人に対し、その旨を通知しなければならない。
(収取した収益等の報告義務)
第六十八条
 管理人は、法第百七条第一項の期間の満了後、速やかに、期間内に収取した収益又はその換価代金、法第九十八条第一項の規定に基づく決定により分与した金銭又は収益並びに法第百六条第一項に規定する公課及び費用の明細を執行裁判所に報告しなければならない。
(配当協議の日又は弁済金の交付の日の指定)
第六十九条
 管理人は、法第百七条第一項の期間の満了後二週間以内の日を配当協議の日又は弁済金の交付の日と定め、各債権者及び債務者に対し、その日時及び場所を通知しなければならない。
(配当計算書)
第七十条
1 管理人は、配当協議の日までに配当計算書を作成しなければならない。
2 債権者間に配当計算書による配当と異なる配当の協議が調つたときは、管理人は、その協議に従い配当計算書を改めなければならない。
3 法第八十五条第四項の規定は、配当計算書について準用する。
(事情届の方式)
第七十一条
1 法第百四条第一項又は法第百八条の規定による届出は、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 事件の表示
二 差押債権者及び債務者の氏名又は名称
三 供託の事由及び供託した金額
2 前項の書面には、供託書正本及び配当計算書が作成されている場合にあつては、配当計算書を添付しなければならない。
第七十二条
1 法第百七条第五項の規定による届出は、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 前条第一項第一号及び第二号に掲げる事項
二 配当に充てるべき金銭の額
三 配当協議が調わない旨及びその事情の要旨
2 前項の書面には、配当計算書を添付しなければならない。
3 管理人は、第一項の届出をするときは、配当に充てるべき金銭を執行裁判所に提出しなければならない。
(強制競売の規定の準用)
第七十三条
 第二十三条(第三号及び第四号を除く。)、第二十五条から第二十七条まで及び第六十二条の規定は強制管理について、第五十九条から第六十一条までの規定は強制管理につき執行裁判所が実施する配当等の手続について準用する。この場合において、第二十五条第一項中「差押債権者」とあるのは「差押債権者及び管理人」と、同条第三項中「債務者」とあるのは「債務者及び管理人」と、第二十七条中「及び債務者」とあるのは「、債務者及び管理人」と読み替えるものとする。
  第二款 船舶に対する強制執行
(申立書の記載事項及び添付書類)
第七十四条
 船舶執行の申立書には、第二十一条各号に掲げる事項のほか、船舶の所在する場所並びに船長の氏名及び現在する場所を記載し、執行力のある債務名義の正本のほか、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 登記がされた日本船舶については、登記簿の謄本
二 登記がされていない日本船舶については、船舶登記規則(明治三十二年勅令第二百七十号)第十六条に規定する書面、同令第十八条又は同令第十九条第一項に規定する書面及びその船舶が債務者の所有に属することを証する文書
三 日本船舶以外の船舶については、その船舶が法第百十二条に規定する船舶であることを証する文書及びその船舶が債務者の所有に属することを証する文書
(船舶国籍証書等の取上げ等の通知)
第七十五条
 執行官は、船舶国籍証書等(法第百十四条第一項に規定する船舶国籍証書等をいう。以下同じ。)を取り上げ、又はその引渡しを受けたときは、直ちに、債務者、船長及び船籍港を管轄する地方運輸局、海運監理部又は地方運輸局若しくは海運監理部の海運支局の長に対し、その旨を通知しなければならない。
(船舶国籍証書等の取上げができない場合の事情届)
第七十六条
 執行官は、船舶国籍証書等を取り上げる職務の執行をした場合において、その目的を達することができなかつたときは、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。
(法第百十五条第一項の地の指定)
第七十七条
 法第百十五条第一項の最高裁判所の指定する地は、室蘭市、仙台市、東京都千代田区、横浜市、新潟市、名古屋市、大阪市、神戸市、広島市、高松市、北九州市及び那覇市とする。
(法第百十七条第五項において準用する法第十五条第一項の最高裁判所規則で定める保証提供の方法)
第七十八条
1 法第百十七条第一項の保証は、債務者が、執行裁判所の許可を得て、銀行等、船主相互保険組合又は漁船保険組合との間において、これらの者が債務者のために一定の額の金銭を執行裁判所の催告により納付する旨の期限の定めのない支払保証委託契約を締結したことを証する文書を執行裁判所に提出する方法によつて提供することができる。
2 第五十八条の規定は、前項の文書に係る法第百十七条第五項において準用する法第七十八条第三項の規定による換価について準用する。
(現況調査報告書)
第七十九条
1 執行官は、船舶の現況調査をしたときは、次に掲げる事項を記載した現況調査報告書を所定の日までに執行裁判所に提出しなければならない。
一 第二十九条第一項第一号、第三号及び第七号に掲げる事項
二 船舶の表示
三 船舶の所在する場所
四 占有者の表示及び占有の状況
五 当該船舶について、債務者の占有を解いて執行官に保管させる仮処分が執行されているときは、その旨及び執行官が保管を開始した年月日
2 現況調査報告書には、船舶の写真を添付しなければならない。
(航行許可決定の告知)
第八十条
 法第百十八条第一項の規定による決定は、差押債権者以外の債権者並びに最高価買受申出人又は買受人及び次順位買受申出人にも告知しなければならない。
(船舶国籍証書等の再取上命令)
第八十一条
 法第百十八条第一項の規定による許可に係る船舶の航行が終了した場合において、執行裁判所に船舶国籍証書等が返還されないときは、執行裁判所は、差押債権者、最高価買受申出人若しくは買受人又は次順位買受申出人の申立てにより、執行官に対し、債務者から船舶国籍証書等を取り上げて執行裁判所に提出すべき旨を命ずることができる。
(公告事項の掲示の嘱託)
第八十二条
 執行裁判所が船籍の所在地を管轄する地方裁判所と異なるときは、執行裁判所の裁判所書記官は、その地方裁判所の裁判所書記官に対し、公告事項を記載した書面を当該地方裁判所の掲示場その他裁判所内の公衆の見やすい場所に掲示するよう入札期日、入札期間の開始の日又は競り売り期日の二週間前までに嘱託しなければならない。
(不動産執行の規定の準用等)
第八十三条
1 前款第一目(第二十三条、第二十四条、第二十九条、第三十条第一項第四号及び第五号並びに第二項並びに第三十六条第一項第六号及び第二項(第四十九条及び第五十条第四項において準用する場合を含む。)を除く。)の規定は船舶執行について、第五十七条の規定は法第百十七条第五項において準用する法第七十八条第三項の規定による有価証券の換価について、第六十五条第二項及び第三項並びに第六十六条の規定は船舶執行の保管人について準用する。
2 前項において準用する第三十六条第一項の規定による公告には、船舶の所在する場所をも掲げなければならない。
  第三款 航空機に対する強制執行
(航空機執行についての船舶執行の規定の準用)
第八十四条
 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第五条に規定する新規登録がされた飛行機及び回転翼航空機(以下「航空機」という。)に対する強制執行については、法第二章第二節第二款(法第百二十一条において準用する法第五十七条及び法第六十二条を除く。)及び前款(第七十七条、第七十九条並びに第八十三条において準用する第二十八条及び第三十一条を除く。)の規定を準用する。この場合において、法第百十四条第一項中「船舶の国籍を証する文書」とあるのは「航空機登録証明書」と、法第百十五条第一項及び第八十二条中「船籍の所在地」とあるのは「定置場の所在地」と、法第百二十一条において準用する法第四十九条第一項中「物件明細書の作成までの手続」とあるのは「評価書の提出」と、第七十四条中「並びに船長の氏名及び現在する場所を記載し」とあるのは「を記載し」と、第七十五条中「、船長及び船籍港を管轄する地方運輸局、海運監理部又は地方運輸局若しくは海運監理部の海運支局の長」とあるのは「及び運輸大臣」と、第八十三条第一項において準用する第三十六条第一項第七号中「物件明細書、現況調査報告書及び評価書」とあるのは「評価書」と読み替えるものとする。
(評価書の写しの備置き等)
第八十五条
1 執行裁判所は、航空機を入札又は競り売りの方法により売却するときは、一般の閲覧に供するために、売却の実施の日の一週間前までに評価書の写しを執行裁判所に備え置かなければならない。
2 第三十一条第三項の規定は、前項の規定により評価書の写しが備え置かれた場合について準用する。
  第四款 自動車に対する強制執行
(自動車執行の方法)
第八十六条
 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第十三条第一項に規定する登録自動車(自動車抵当法(昭和二十六年法律第百八十七号)第二条ただし書に規定する大型特殊自動車を除く。以下「自動車」という。)に対する強制執行(以下「自動車執行」という。)は、強制競売の方法により行う。
(執行裁判所)
第八十七条
1 自動車執行については、その自動車の自動車登録ファイルに登録された使用の本拠の位置(以下「自動車の本拠」という。)を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
2 前項の裁判所の管轄は、専属とする。
(申立書の記載事項及び添付書類)
第八十八条
 自動車執行の申立書には、第二十一条各号に掲げる事項のほか、自動車の本拠を記載し、執行力のある債務名義の正本のほか、自動車登録ファイルに記録されている事項を証明した文書を添付しなければならない。
(開始決定等)
第八十九条
1 執行裁判所は、強制競売の手続を開始するには、強制競売の開始決定をし、その開始決定において、債権者のために自動車を差し押さえる旨を宣言し、かつ、債務者に対し、自動車を執行官に引き渡すべき旨を命じなければならない。ただし、当該自動車について次条第一項の規定による届出がされているときは、債務者に対する命令は、要しない。
2 強制競売の開始決定の送達又は差押えの登録前に執行官が自動車の引渡しを受けたときは、差押えの効力は、その引渡しを受けた時に生ずる。
3 第一項の開始決定に対しては、執行抗告をすることができる。
4 第一項の開始決定による引渡しの執行は、当該開始決定が債務者に送達される前であつても、することができる。
(自動車の引渡しを受けた場合等の届出)
第九十条
1 執行官は、強制競売の開始決定により自動車の引渡しを受けたとき、第九十七条において準用する法第百十五条第一項の規定による決定により引渡しを受けた自動車について強制競売の開始決定がされたとき、又は第九十七条において準用する法第百二十七条第一項の規定による決定を執行したときは、その旨並びに自動車の保管場所及び保管の方法を執行裁判所に届け出なければならない。
2 執行官は、前項の規定による届出をした後に自動車の保管場所又は保管の方法を変更したときは、変更後のこれらの事項を執行裁判所に届け出なければならない。
(自動車の保管の方法)
第九十一条
1 執行官は、相当と認めるときは、引渡しを受けた自動車を差押債権者、債務者その他適当と認められる者に保管させることができる。この場合においては、公示書のちよう付その他の方法で当該自動車が執行官の占有に係る旨を明らかにし、かつ、次項の規定により自動車の運行を許す場合を除き、これを運行させないための適当な措置を採らなければならない。
2 執行官は、営業上の必要その他の相当の事由があると認めるときは、利害関係を有する者の申立てにより、その所属する地方裁判所の許可を受けて、自動車の運行を許すことができる。
(回送命令)
第九十二条
 執行裁判所は、必要があると認めるときは、執行官に対し、自動車を一定の場所に回送すべき旨を命ずることができる。
(回送命令の嘱託等)
第九十三条
1 執行裁判所以外の地方裁判所に所属する執行官が自動車を占有しているときは、執行裁判所は、次条第一項の規定により事件を移送する場合を除き、その地方裁判所に対し、当該自動車を執行裁判所の管轄区域内の一定の場所に回送してその所属の執行官に引き渡すよう命ずることを嘱託しなければならない。
2 第九十条第一項の規定は、前項に規定する回送により執行官が自動車の引渡しを受けた場合について準用する。
(事件の移送)
第九十四条
1 執行裁判所は、他の地方裁判所に所属する執行官が自動車を占有している場合において、執行裁判所の管轄区域内への自動車の回送のために不相応な費用を要すると認めるときは、その地方裁判所に事件を移送することができる。
2 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
(執行官に売却を実施させる時期)
第九十五条
 執行裁判所は、その管轄区域内において執行官が自動車の占有を取得した後でなければ、その売却を実施させることができない。
(入札又は競り売り以外の方法による売却)
第九十六条
1 執行裁判所は、相当と認めるときは、執行官に対し入札又は競り売り以外の方法により自動車の売却を実施すべき旨を命じ、又は差押債権者の買受けの申出によりその者に対する自動車の売却の許可をすることができる。
2 第五十一条(第一項前段を除く。)の規定は、前項の規定により執行官に自動車の売却の実施を命ずる方法による売却について準用する。
3 第一項の規定による売却許可決定は、差押債権者以外の債権者にも告知しなければならない。
(買受人に対する自動車の引渡し)
第九十六条の二
1 買受人が代金を納付したことを証する書面を提出したときは、執行官は、自動車を買受人に引き渡さなければならない。この場合において、その自動車が執行官以外の者の保管に係るものであるときは、執行官は、買受人の同意を得て、保管者に対し買受人にその自動車を引き渡すべき旨を通知する方法により引き渡すことができる。
2 執行官は、買受人に自動車の引渡しをしたときは、その旨及びその年月日を記録上明らかにしなければならない。
(執行停止中の売却)
第九十六条の三
1 法第三十九条第一項第七号又は第八号に掲げる文書が提出されたときは、裁判所書記官は、執行官に対し、その旨を通知しなければならない。
2 執行官が前項の規定による通知を受けた場合において、引渡しを受けた自動車について著しい価額の減少を生ずるおそれがあるとき、又はその保管のために不相応な費用を要するときは、執行官は、差押債権者、債務者及び抵当権者に対し、その旨を通知しなければならない。
3 前項に規定する場合において、差押債権者又は債務者の申立てがあるときは、執行裁判所は、自動車を売却する旨を定めることができる。ただし、その自動車に抵当権が設定されているときは、この限りでない。
4 前項の規定による決定がされたときは、裁判所書記官は、同項の申立てをしない差押債権者及び債務者に対し、その旨を通知しなければならない。
5 第三項の規定による決定に基づいて自動車が売却され、その代金が執行裁判所に納付されたときは、裁判所書記官は、売却代金を供託しなければならない。
(自動車執行の申立てが取り下げられた場合等の措置)
第九十六条の四
1 自動車執行の申立てが取り下げられたとき、又は強制競売の手続を取り消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官は、執行官に対し、その旨を通知しなければならない。
2 執行官が前項の規定による通知を受けた場合において、自動車を受け取る権利を有する者が債務者以外の者であるときは、執行官は、その者に対し、自動車執行の申立てが取り下げられ、又は強制競売の手続が取り消された旨を通知しなければならない。
3 執行官は、第一項の規定による通知を受けたときは、自動車を受け取る権利を有する者に対し、自動車の所在する場所においてこれを引き渡さなければならない。ただし、自動車を受け取る権利を有する者がこれを保管しているときは、この限りでない。
4 執行官が前項の規定による引渡しをすることができないときは、執行裁判所は、執行官の申立てにより、自動車執行の手続により自動車を売却する旨を定めることができる。
5 前項の規定による決定がされたときは、裁判所書記官は、債務者及び抵当権者に対し、その旨を通知しなければならない。
6 第四項の規定による決定に基づいて自動車が売却され、その代金が執行裁判所に納付されたときは、執行裁判所は、その売却代金から売却及び保管に要した費用を控除し、残余があるときは、売却代金の交付計算書を作成して、抵当権者に弁済金を交付し、剰余金を債務者に交付しなければならない。
7 法第八十八条、法第九十一条及び法第九十二条第一項並びに第五十九条から第六十一条までの規定は、前項の規定により弁済金及び剰余金を交付する場合について準用する。
(不動産の強制競売等の規定の準用)
第九十七条
 法第二章第二節第一款第二目(第四十五条第一項、第四十六条第二項、第五十五条から第五十七条まで、第五十九条第四項、第六十一条、第六十二条、第六十六条(第九十六条第一項の買受けの申出に係る場合に限る。)、第六十九条(第九十六条第一項の規定による売却許可決定に係る場合に限る。)、第七十七条、第八十一条、第八十三条及び第八十六条第二項を除く。)、法第百十五条(第一項後段を除く。)、法第百二十条及び法第百二十七条並びにこの節第一款第一目(第二十三条、第二十四条、第二十八条、第二十九条、第三十条第一項第四号及び第五号並びに第二項、第三十一条、第三十三条、第三十四条中期間入札に係る部分、第三十六条第一項第四号から第六号まで及び第二項(第五十条第四項において準用する場合を含む。)、第四十六条から第四十九条まで、第五十一条、第五十四条(第九十六条第一項の規定による売却許可決定に係る場合に限る。)並びに第五十五条(第九十六条第一項の規定による売却許可決定に係る場合に限る。)を除く。)、第八十五条及び第百九条の規定は、自動車執行について準用する。この場合において、法第四十九条第一項中「物件明細書の作成までの手続」とあるのは「評価書の提出」と、法第七十八条第四項中「売却決定期日の終了まで」とあるのは「売却決定期日の終了まで、又は民事執行規則第九十六条第一項の買受けの申出の際」と、法第百十五条第一項及び第四項中「船舶国籍証書等」とあり、及び「船舶の船籍」とあるのは「自動車」と、同項中「五日以内」とあるのは「十日以内」と、法第百二十条中「二週間以内に船舶国籍証書等」とあるのは「一月以内に自動車」と、法第百二十七条第一項及び第二項中「差押物」とあるのは「差押えの効力が生じた時に債務者が占有していた自動車」と、第三十六条第一項第七号中「物件明細書、現況調査報告書及び評価書」とあるのは「評価書」と、第百九条中「差押物が差押えをした」とあるのは「執行官が占有を取得した自動車が」と読み替えるものとする。
  第五款 建設機械に対する強制執行
第九十八条
 建設機械抵当法(昭和二十九年法律第九十七号)第三条第一項の登記がされた建設機械(以下「建設機械」という。)に対する強制執行については、前款の規定を準用する。この場合において、第八十七条第一項中「自動車の自動車登録ファイルに登録された使用の本拠の位置(以下「自動車の本拠」という。)」とあり、及び第八十八条中「自動車の本拠」とあるのは、「建設機械の登記の地」と読み替えるものとする。
  第六款 動産に対する強制執行
(申立書の記載事項)
第九十九条
 動産執行の申立書には、第二十一条各号に掲げる事項のほか、差し押さえるべき動産が所在する場所を記載しなければならない。
(差し押さえるべき動産の選択)
第百条
 執行官は、差し押さえるべき動産の選択に当たつては、債権者の利益を害しない限り、債務者の利益を考慮しなければならない。
(職務執行区域外における差押え)
第百一条
 執行官は、同時に差し押さえようとする数個の動産の所在する場所が所属の地方裁判所の管轄区域の内外にまたがつているときは、管轄区域外にある動産についても、差押えをすることができる。
(差押調書の記載事項)
第百二条
1 動産の差押えをしたときに作成すべき差押調書には、第十三条第一項各号に掲げる事項のほか、債務者から自己の所有に属しない旨の申出があつた差押物については、その旨を記載しなければならない。
2 差押調書に係る第十三条第一項第二号の民事執行の目的物の記載については、種類、材質その他の差押物を特定するに足りる事項のほか、差押物の数量及び評価額(土地から分離する前の天然果実にあつては、その果実の収穫時期、予想収穫量及び収穫時の評価額)を明らかにしなければならない。
(差押えの通知等)
第百三条
1 執行官は、差押えをしたときは、債務者に対し、その旨を通知しなければならない。
2 執行官は、未完成の手形等(法第百三十六条に規定する手形等をいう。以下同じ。)を差し押さえたときは、債務者に対し、期限を定めて、当該手形等に記載すべき事項を補充するよう催告しなければならない。
3 債務者が前項の事項を補充したときは、執行官は、その旨及び補充の内容を記録上明らかにしなければならない。
(差押物の保管の方法等)
第百四条
1 執行官は、法第百二十四条において準用する法第百二十三条第三項前段の場合のほか、相当と認めるときは、差押債権者又は第三者に差押物を保管させることができる。
2 執行官は、差押物を債務者、差押債権者又は第三者に保管させるときは、差押物件封印票による封印若しくは差押物件標目票のちよう付又はこれらの方法によることが困難な場合にあつては、その他の方法によりその物が差押物である旨、差押えの年月日並びに執行官の職及び氏名を表示しておかなければならない。
3 執行官は、差押物を債務者、差押債権者又は第三者に保管させるときは、これらの者に対し、差押物の処分、差押えの表示の損壊その他の行為に対する法律上の制裁を告げなければならない。
4 執行官は、差押物を保管させた者にその使用を許可したときは、その旨を第二項の規定による表示に明らかにしなければならない。
5 執行官は、特に必要があると認めるときは、所属の地方裁判所の管轄区域外で差押物を保管させることができる。
(差押物の保管に関する調書等)
第百五条
1 執行官は、債務者、差押債権者又は第三者に差押物を保管させたときは、保管者の表示、保管させた年月日、場所及び差押物、差押えの表示の方法並びに保管に関する定めを記載した調書を作成し、保管者に署名押印させなければならない。
2 執行官は、保管者から差押物の返還を受けたときは、その旨を記録上明らかにしなければならない。
3 前項に規定する場合において、差押物に不足又は損傷があるときは、執行官は、保管者でない差押債権者及び債務者に対しその旨を通知するとともに、不足する差押物又は差押物の損傷の程度及びこれらの差押物について執行官が採つた措置を記載した調書を作成しなければならない。
(事件併合の通知)
第百六条
 執行官は、事件を併合したときは、差押債権者、仮差押債権者及び債務者に対し、その旨を通知しなければならない。
(事件併合のための移送)
第百七条
1 法第百二十五条第二項前段の規定により二個の動産執行事件を併合すべき場合において、先に差押えをした執行官と後に動産執行の申立てを受けた執行官とがその所属する地方裁判所を異にするときは、後に動産執行の申立てを受けた執行官は、差押調書又は差し押さえるべき動産がないことを記載した調書を作成した後、先に差押えをした執行官に事件を移送しなければならない。
2 法第百二十五条第二項後段の規定により仮差押執行事件と動産執行事件とを併合すべき場合において、仮差押えの執行をした執行官と動産執行の申立てを受けた執行官とがその所属する地方裁判所を異にするときは、動産執行の申立てを受けた執行官は、仮差押えの執行をした執行官に対し、事件を移送すべき旨を求めなければならない。
3 前項の規定により事件の移送を求められた執行官は、遅滞なく、移送を求めた執行官に当該事件を移送しなければならない。
(差押物の点検)
第百八条
1 執行官は、債務者、差押債権者又は第三者に差押物を保管させた場合において、差押債権者又は債務者の申出があるときその他必要があると認めるときは、差押物の保管の状況を点検することができる。
2 執行官は、差押物の点検をしたときは、差押物の不足又は損傷の有無及び程度並びに不足又は損傷に係る差押物について執行官が採つた措置を記載した点検調書を作成し、かつ、差押物に不足又は損傷があるときは、保管者でない差押債権者及び債務者に対し、その旨を通知しなければならない。
(職務執行区域外における差押物の取戻し)
第百九条
 差押物が差押えをした執行官の所属する地方裁判所の管轄区域外に所在することとなつた場合において、これを取り戻すため必要があるときは、執行官は、所属の地方裁判所の管轄区域外で職務を行うことができる。
(差押物の引渡命令を執行した場合の措置等)
第百十条
1 法第百二十七条第一項の規定による引渡命令の執行をした執行官は、当該差押物の差押えをした執行官が他の地方裁判所に所属するときは、その執行官に対し、引渡命令の執行をした旨を通知しなければならない。
2 前項の規定による通知を受けた執行官は、差押物を引き取らなければならない。ただし、差押物の引取りのために不相応な費用を要すると認めるときは、引渡命令の執行をした執行官に動産執行事件を移送することができる。
(差押物の評価)
第百十一条
1 執行官は、高価な動産を差し押さえたときは、評価人を選任し、その動産の評価をさせなければならない。
2 執行官は、必要があると認めるときは、評価人を選任し、差押物の評価をさせることができる。
3 評価人は、差押物の評価をしたときは、評価書を所定の日までに執行官に提出しなければならない。
(未分離果実の売却)
第百十二条
 土地から分離する前に差し押さえた天然果実は、収穫時期が到来した後でなければ、売却してはならない。
(一括売却)
第百十三条
 執行官は、売却すべき数個の動産の種類、数量等を考慮してこれらの動産を一括して同一の買受人に買い受けさせることが相当であると認めるときは、これらの動産を一括して売却することができる。
(競り売り期日の指定等)
第百十四条
1 執行官は、競り売りの方法により動産を売却するときは、競り売り期日を開く日時及び場所を定めなければならない。この場合において、競り売り期日は、やむを得ない事由がある場合を除き、差押えの日から一週間以上一月以内の日としなければならない。
2 執行官は、執行裁判所の許可を受けたときは、所属の地方裁判所の管轄区域外の場所で競り売り期日を開くことができる。
(競り売りの公告等)
第百十五条
 執行官は、競り売り期日を定めたときは、次に掲げる事項を公告し、各債権者及び債務者に対し、第三号に掲げる事項を通知しなければならない。
一 事件の表示
二 売却すべき動産の表示
三 競り売り期日を開く日時及び場所
四 第百三十二条において準用する第三十三条の規定により買受けの申出をすることができる者の資格を制限したときは、その制限の内容
五 売却すべき動産を競り売り期日前に一般の見分に供するときは、その日時及び場所
六 代金支払の日を定めたときは、買受けの申出の保証の額及び提供の方法並びに代金支払の日
七 売却すべき動産が貴金属又はその加工品であるときは、その貴金属の地金としての価額
(競り売り期日の手続)
第百十六条
1 競り売り期日においては、執行官は、買受けの申出の額のうち、最高のものを三回呼び上げた後、その申出をした者の氏名又は名称、買受けの申出の額及びその者に買受けを許す旨を告げなければならない。ただし、買受けの申出の額が不相当と認められるときは、この限りでない。
2 第百十八条第二項の規定により代金支払の日を定めて数個の動産を売却する場合において、あるものの代金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる見込みがあるときは、執行官は、他の動産の競り売りを留保しなければならない。
3 第三十八条第三項から第五項まで、第四十三条中身分に関する証明に係る部分並びに第五十条第一項及び第二項の規定は動産の競り売りについて、第四十三条中援助の求めに係る部分の規定は執行官がその所属する地方裁判所内において競り売りを実施する場合について準用する。
(競り売りの方法により売却すべき動産の見分)
第百十七条
1 執行官は、競り売り期日又はその期日前に、売却すべき動産を一般の見分に供しなければならない。
2 売却すべき動産を競り売り期日前に一般の見分に供する場合において、その動産が債務者の占有する建物内にあるときは、執行官は、見分に立ち会わなければならない。前段に規定する場合以外の場合において、当該動産の保管者から立会いの申出があつたときも、同様とする。
3 執行官は、売却すべき動産を競り売り期日前に一般の見分に供したとき、及び前項の規定により見分に立ち会つたときは、その旨を記録上明らかにしなければならない。
(競り売りにおける代金の支払等)
第百十八条
1 競り売り期日において買受けが許されたときは、買受人は、次項の規定により定められた代金支払の日に代金を支払う場合を除き、直ちに代金を支払わなければならない。
2 執行官は、差押物の売却価額が高額になると見込まれるときは、競り売り期日から一週間以内の日を代金支払の日と定めることができる。
3 前項の規定により代金支払の日が定められた場合においては、買受けの申出をしようとする者は、執行官に対し、差押物の評価額の十分の二に相当する額の保証を提供しなければならない。
4 前項の規定により買受人が買受けの申出の保証として提供した金銭は、代金に充てる。
5 執行官は、代金支払の日を定めて競り売りを実施したときは、代金支払の日、買受人の保証の提供の方法及び代金の支払の有無を記録上明らかにしなければならない。
6 買受人は、代金支払の日に代金を支払わなかつたときは、買受けの申出の保証のうち次項の規定により売得金とされた額に相当する部分の返還を請求することができない。
7 買受人が代金支払の日に代金を支払わなかつたため更に動産を売却した場合において、後の売却価額が前の売却価額に満たないときは、前の買受人が提供した買受けの申出の保証は、その差額を限度として売得金とする。
8 買受けの申出の保証が次項において準用する第四十条第一項第四号の文書を提出する方法により提供されている場合において、買受人が代金を支払わなかつたときは、執行官は、銀行等に対し、執行官の定める額の金銭を支払うべき旨を催告しなければならない。
9 第四十条の規定は、第三項の買受けの申出の保証について準用する。
(競り売り調書)
第百十九条
1 競り売りを実施したときに作成すべき競り売り調書に係る第十三条第一項第四号の実施した民事執行の内容の記載については、次に掲げる事項を明らかにしなければならない。
一 買受人の表示、買受けの申出の額及び代金の支払の有無
二 適法な買受けの申出がなかつたときは、その旨
2 執行官は、第十三条第二項に規定する者のほか、買受人又はその代表者若しくは代理人に競り売り調書に署名押印させなければならない。この場合においては、同項後段の規定を準用する。
(入札)
第百二十条
1 動産を売却するための入札は、入札期日に入札をさせた後開札を行う方法による。
2 開札が終わつたときは、執行官は、最高の価額で買受けの申出をした入札人の氏名又は名称、入札価額及びその者に買受けを許す旨を告げなければならない。
3 第三十八条、第四十一条第一項及び第二項、第四十二条第一項及び第二項、第四十三条中身分に関する証明に係る部分、第百十四条、第百十五条、第百十六条第一項ただし書及び第二項並びに前三条の規定は動産の入札について、第四十三条中援助の求めに係る部分の規定は執行官がその所属する地方裁判所内において入札を実施する場合について準用する。
(競り売り又は入札以外の方法による売却)
第百二十一条
1 執行官は、動産の種類、数量等を考慮して相当と認めるときは、執行裁判所の許可を受けて、競り売り又は入札以外の方法により差押物の売却を実施することができる。
2 執行官は、前項の許可を受けようとするときは、あらかじめ、差押債権者の意見を聴かなければならない。
3 第一項の許可の申出においては、売却の実施の方法を明らかにしなければならない。
4 執行官は、第一項の許可を受けたときは、各債権者及び債務者に対し、その旨を通知しなければならない。
5 第百十九条の規定は、第一項の規定により差押物の売却を実施したときに作成すべき調書について準用する。
第百二十二条
1 執行官は、動産の種類、数量等を考慮して相当と認めるときは、執行裁判所の許可を受けて、執行官以外の者に差押物の売却を実施させることができる。
2 前項の許可の申出においては、売却を実施する者及び売却の実施の方法を明らかにしなければならない。
3 執行官は、売却を実施した者から売得金の交付を受けたときは、売却を実施した者の表示並びに売得金の額及び交付を受けた年月日を記録上明らかにしなければならない。
4 前条第二項及び第四項の規定は、第一項の許可について準用する。
(相場のある有価証券の売却価額等)
第百二十三条
1 取引所の相場のある有価証券は、その日の相場以上の価額で売却しなければならない。
2 前二条中執行裁判所の許可に係る部分は、前項の有価証券については、適用しない。
(貴金属の売却価額)
第百二十四条
 貴金属又はその加工品は、地金としての価額以上の価額で売却しなければならない。
(代金を支払わなかつた買受人の買受けの申出の禁止)
第百二十五条
 買受人が代金を支払わなかつたため更に動産を売却するときは、前の買受人は、買受けの申出をすることができない。
(買受人に対する動産の引渡し)
第百二十六条
1 買受人が代金を支払つたときは、執行官は、売却した動産を買受人に引き渡さなければならない。この場合において、その動産が執行官以外の者の保管に係るものであるときは、執行官は、買受人の同意を得て、買受人に対し売却の事実を証する文書を交付し、かつ、保管者に対し買受人にその動産を引き渡すべき旨を通知する方法により引き渡すことができる。
2 執行官は、売却した動産の引渡しをしたときは、その旨及びその年月日を記録上明らかにしなければならない。
(差押えの取消しの方法等)
第百二十七条
1 動産の差押えの取消しは、執行官が、債務者その他のその動産を受け取る権利を有する者に対し、差押えを取り消す旨を通知し、その動産の所在する場所においてこれを引き渡して行う。ただし、動産を受け取る権利を有する者がその動産を保管しているときは、その者に対し、差押えを取り消す旨を通知すれば足りる。
2 執行官は、動産の差押えを取り消した場合において、取消しに係る動産を受け取る権利を有する者が債務者以外の者であるときは、債務者に対し、当該動産に係る差押えを取り消した旨を通知しなければならない。
3 差押えの取消しに係る動産を引き渡すことができないときは、執行官は、執行裁判所の許可を受けて、動産執行の手続によりこれを売却することができる。
4 法第百六十八条第七項の規定は、前項の規定により動産を売却した場合について準用する。
(配当協議の日の指定)
第百二十八条
 執行官は、売得金の交付を受けた場合、金銭を差し押さえた場合又は手形等について支払を受けた場合においては、法第百三十九条第一項に規定する場合を除き、二週間以内の日を配当協議の日と定め、各債権者に対し、その日時及び場所を通知しなければならない。
(執行力のある債務名義の正本の交付)
第百二十九条
1 差押債権者の債権の全額について、弁済され、又は配当等がされたときは、債務者は、執行官に対し、執行力のある債務名義の正本の交付を求めることができる。
2 前項に規定する場合を除き、事件が終了したときは、差押債権者は、執行官に対し、執行力のある債務名義の正本の交付を求めることができる。
3 前項の規定により執行力のある債務名義の正本の交付を求める差押債権者が債権の一部について弁済を受け、又は配当等を受けた者であるときは、執行官は、当該債務名義の正本に弁済を受け、又は配当等を受けた額を記載して、これを交付しなければならない。
4 前三項の規定は、法第百三十九条第三項又は法第百四十一条第一項の規定による届出がされた後は、適用しない。
(事情届の方式)
第百三十条
1 法第百三十九条第三項の規定による届出は、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 事件の表示
二 差押債権者及び債務者の氏名又は名称
三 配当に充てるべき金銭の額
四 執行費用の額
五 配当協議が調わない旨及びその事情の要旨
2 前項の書面には、事件の記録を添付しなければならない。
第百三十一条
1 法第百四十一条第一項の規定による届出は、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 前条第一項第一号及び第二号に掲げる事項
二 供託の事由及び供託した金額
2 前項の書面には、供託書正本及び事件の記録を添付しなければならない。
(不動産執行の規定の準用)
第百三十二条
 第二十六条、第二十七条、第三十三条及び第七十条の規定は動産執行について、第五十九条から第六十二条までの規定は動産執行につき執行裁判所が実施する配当等の手続について準用する。この場合において、第五十九条第一項中「不動産の代金が納付された」とあり、及び同条第二項中「代金が納付された」とあるのは、「配当等を実施すべきこととなつた」と読み替えるものとする。
  第七款 債権及びその他の財産権に対する強制執行
(差押命令の申立書の記載事項)
第百三十三条
1 債権執行についての差押命令の申立書には、第二十一条各号に掲げる事項のほか、第三債務者を表示しなければならない。
2 前項の申立書に強制執行の目的とする財産を表示するときは、差し押さえるべき債権の種類及び額その他の債権を特定するに足りる事項並びに債権の一部を差し押さえる場合にあつては、その範囲を明らかにしなければならない。
(差押命令の送達の通知)
第百三十四条
 差押命令が債務者及び第三債務者に送達されたときは、裁判所書記官は、差押債権者に対し、その旨及び送達の年月日を通知しなければならない。
(第三債務者に対し陳述を催告すべき事項等)
第百三十五条
1 法第百四十七条第一項の規定により第三債務者に対し陳述を催告すべき事項は、次に掲げる事項とする。
一 差押えに係る債権の存否並びにその債権が存在するときは、その種類及び額(金銭債権以外の債権にあつては、その内容)
二 弁済の意思の有無及び弁済する範囲又は弁済しない理由
三 当該債権について差押債権者に優先する権利を有する者があるときは、その者の表示並びにその権利の種類及び優先する範囲
四 当該債権に対する他の債権者の差押え又は仮差押えの執行の有無並びにこれらの執行がされているときは、当該差押命令又は仮差押命令の事件の表示、債権者の表示及び送達の年月日並びにこれらの執行がされた範囲
五 当該債権に対する滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)による差押えの有無並びに差押えがされているときは、当該差押えをした徴収職員、徴税吏員その他の滞納処分を執行する権限を有する者(以下「徴収職員等」という。)の属する庁その他の事務所の名称及び所在、債権差押通知書の送達の年月日並びに差押えがされた範囲
2 法第百四十七条第一項の規定による催告に対する第三債務者の陳述は、書面でしなければならない。
(申立ての取下げ等の通知)
第百三十六条
1 債権執行の申立てが取り下げられたときは、裁判所書記官は、差押命令の送達を受けた第三債務者に対しても、その旨を通知しなければならない。
2 差押命令が第三債務者に送達された場合において、法第三十九条第一項第七号又は第八号に掲げる文書が提出されたときは、裁判所書記官は、差押債権者及び第三債務者に対し、これらの文書が提出された旨及びその要旨並びにこれらの文書の提出による執行停止が効力を失うまで、差押債権者は差し押さえた債権について取立て又は引渡しの請求をしてはならず、第三債務者は差し押さえられた債権について支払又は引渡しをしてはならない旨を通知しなければならない。
3 債権執行の手続を取り消す旨の決定がされたときは、裁判所書記官は、差押命令の送達を受けた第三債務者に対し、その旨を通知しなければならない。
(差押債権者の取立届の方式)
第百三十七条
 法第百五十五条第三項の規定による届出は、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 事件の表示
二 債務者及び第三債務者の氏名又は名称
三 第三債務者から支払を受けた額及び年月日
(第三債務者の事情届の方式等)
第百三十八条
1 法第百五十六条第三項の規定による届出は、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 事件の表示
二 差押債権者及び債務者の氏名又は名称
三 供託の事由及び供託した金額
2 前項の書面には、供託書正本を添付しなければならない。
3 差し押さえられた債権について更に差押命令又は仮差押命令の送達を受けた場合においては、第一項の届出は、先に送達された差押命令を発した裁判所に対してしなければならない。
(債権の評価)
第百三十九条
1 執行裁判所は、法第百六十一条第一項に規定する命令を発する場合において、必要があると認めるときは、評価人を選任し、債権の評価を命ずることができる。
2 評価人は、債権の評価をしたときは、評価書を所定の日までに執行裁判所に提出しなければならない。
(譲渡命令に係る金銭の納付及び交付)
第百四十条
1 譲渡命令において定めるべき価額が差押債権者の債権及び執行費用の額を超えるときは、執行裁判所は、譲渡命令を発する前に、差押債権者にその超える額に相当する金銭を納付させなければならない。
2 譲渡命令が効力を生じたときは、執行裁判所は、前項の規定により納付された金銭を債務者に交付しなければならない。
(売却命令に基づく売却)
第百四十一条
1 執行裁判所は、差し押さえた債権の売得金で差押債権者の債権に優先する債権及び手続費用を弁済して剰余を生ずる見込みがないと認めるときは、売却命令を発してはならない。
2 執行官は、差押債権者の債権に優先する債権及び手続費用を弁済して剰余のある価額でなければ、債権を売却してはならない。
3 執行官は、代金の支払を受けた後でなければ、買受人に債権証書を引き渡し、及び法第百六十一条第五項の通知をしてはならない。
4 執行官は、売却の手続を終了したときは、速やかに、売得金及び売却に係る調書を執行裁判所に提出しなければならない。
(航空機の引渡請求権に対する差押命令後の執行)
第百四十二条
 航空機の引渡しを目的とする債権に対する強制執行については、法第百六十二条の規定を準用する。
(自動車又は建設機械の引渡請求権に対する差押命令後の執行)
第百四十三条
 法第百六十三条第一項の規定により執行官が引渡しを受けた自動車又は建設機械の強制執行は、自動車執行又は建設機械に対する強制執行の方法により行う。
(移転登記等の嘱託の申立てについて提出すべき文書)
第百四十四条
 転付命令又は譲渡命令が確定した場合において、法第百六十四条第一項の申立てをするときは、記録上明らかな場合を除き、差し押さえられた債権に関し、これらの命令が第三債務者に送達された時までに他の差押え及び仮差押えの執行がないことを証する文書を提出しなければならない。
(不動産執行等の規定の準用)
第百四十五条
 第二十六条及び第二十七条の規定は債権執行について、第六十三条及び第六十五条から第七十二条までの規定は管理命令について、第百四十一条第四項中調書に係る部分の規定は執行官が法第百六十三条第二項の規定により動産を売却した場合について、第五十九条から第六十二条までの規定は債権執行につき執行裁判所が実施する配当等の手続について準用する。この場合において、第二十七条中「及び債務者」とあるのは、管理命令が発せられている場合にあつては、「、債務者及び管理人」と、第五十九条第一項中「不動産の代金が納付された」とあり、及び同条第二項中「代金が納付された」とあるのは「配当等を実施すべきこととなつた」と読み替えるものとする。
(電話加入権執行の申立書の記載事項及び添付書類)
第百四十六条
1 電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)附則第九条第一項又は第二項に規定する権利(以下「電話加入権」という。)に対する差押命令の申立書に強制執行の目的とする財産を表示するときは、日本電信電話株式会社において電話に関する現業事務を取り扱う事務所で当該電話加入権に係る契約に関する事務を取り扱うもの(以下「電話取扱局」という。)、電話番号、電話加入権を有する者の表示及び電話の設置場所を明らかにしなければならない。
2 前項の申立書には、執行力のある債務名義の正本のほか、日本電信電話株式会社の電話加入権に関する帳簿に記載した事項を証明した文書を添付しなければならない。
(日本電信電話株式会社に対する照会等)
第百四十七条
1 裁判所書記官は、電話加入権に対する差押命令を送達するときは、日本電信電話株式会社に対し、債務者が、その電話加入権を有する者であるときは次に掲げる事項を、電話加入権を有する者でないときはその旨を、差押命令の送達の日から一週間以内に回答すべき旨を催告しなければならない。
一 電話の種類
二 差押え又は仮差押え若しくは仮処分の執行がされているときは、その命令に係る事件の表示、債権者の表示及び送達の年月日
三 滞納処分による差押えがされているときは、当該差押えをした徴収職員等の属する庁その他の事務所の名称及び所在並びに差押通知書の送達の年月日
四 質権が設定されているときは、その設定(質権の変更がされた場合にあつては、その変更)の登録を請求する書類の受理の年月日、被担保債権の額(その額が限度額であるときは、その旨及び限度額)、弁済期、利息及び違約金又は賠償額の定め並びに質権者の表示
五 未払電話料金があるときは、その額
2 前項の規定による催告に対する回答その他の資料により債務者が当該電話加入権を有する者でないことが明らかになつたときは、執行裁判所は、強制執行の手続を取り消さなければならない。
(電話加入権の質権者に対する通知等)
第百四十八条
 差押えに係る電話加入権に質権が設定されているときは、裁判所書記官は、質権者に対し、差押えがされたことを通知し、かつ、その質権の被担保債権の現存額を届け出るべき旨を催告しなければならない。
(電話加入権の売却についての嘱託)
第百四十九条
 電話加入権について法第百六十七条第一項によりその例によることとされる法第百六十一条第一項に規定する命令が確定した場合において、執行裁判所と電話取扱局の所在地を管轄する地方裁判所とが異なるときは、執行裁判所は、その地方裁判所に対し、執行官その他の者に電話加入権を売却させるよう嘱託することができる。
(権利移転について登記等を要するその他の財産権に対する強制執行)
第百五十条
 第百四十六条第二項、第百四十七条第二項及び前二条の規定は、その他の財産権(法第百六十七条第一項に規定するその他の財産権をいう。以下同じ。)で権利の移転について登記又は登録を要するものに対する強制執行について準用する。この場合において、第百四十八条中「質権」とあるのは「差押えの登記又は登録の前に登記又は登録がされた担保権で換価により消滅するもの」と、「質権者」とあるのは「当該担保権者」と読み替えるものとする。
  第八款 預託株券等に関する強制執行
(預託株券等執行の開始)
第百五十条の二
 株券等の保管及び振替に関する法律(昭和五十九年法律第三十号)第十四条第一項(同法第三十九条第一項において準用する場合を含む。)の規定により保管振替機関に預託された株券その他の有価証券(以下「預託株券等」という。)に関する強制執行(以下「預託株券等執行」という。)は、預託株券等についての共有持分(以下「預託株券等持分」という。)に対する執行裁判所の差押命令により開始する。
(差押命令)
第百五十条の三
 執行裁判所は、差押命令において、預託株券等持分に関し、債務者に対し振替又は交付の請求その他の処分を禁止し、並びに保管振替機関又は参加者に対し振替及び交付を禁止しなければならない。
(預託株券等持分譲渡命令等)
第百五十条の四
1 執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、差し押さえられた預託株券等持分につき、執行裁判所が定めた価額で支払に代えて差押債権者に譲渡する命令(以下「預託株券等持分譲渡命令」という。)又は執行裁判所の定める方法による売却を当該預託株券等に係る顧客口座簿を備える参加者若しくは執行官に命ずる命令(以下「預託株券等持分売却命令」という。)を発することができる。
2 執行裁判所は、執行官に対し、預託株券等持分売却命令を発する場合において、必要があると認めるときは、株券その他の有価証券の交付を受けてこれを売却するよう命ずることができる。
3 第一項の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。
4 第一項の規定による決定は、確定しなければその効力を生じない。
5 裁判所書記官は、預託株券等持分譲渡命令が確定したときは、差押債権者の口座への振替の請求をしなければならない。
6 第二項の規定による命令のある預託株券等持分売却命令が確定した場合において、執行裁判所と株券その他の有価証券の交付を受けることができる地を管轄する地方裁判所とが異なるときは、執行裁判所は、その地方裁判所に対し、執行官に預託株券等持分を売却させるよう嘱託することができる。
7 参加者又は執行官は、預託株券等持分売却命令(第二項の規定による命令のあるものを除く。)による売却をしたときは、買受人の口座への振替又は振替の請求をしなければならない。
8 第百三十九条の規定は預託株券等持分譲渡命令及び預託株券等持分売却命令について、法第百五十九条第二項及び第三項並びに法第百六十条並びに第百四十条の規定は預託株券等持分譲渡命令について、法第百五十九条第六項の規定は預託株券等持分譲渡命令に対する執行抗告について、法第六十八条並びに第百四十一条第一項及び第四項の規定は預託株券等持分売却命令について、法第六十五条の規定は預託株券等持分売却命令に基づく執行官の売却について準用する。この場合において、第百三十九条第一項中「法第百六十一条第一項」とあるのは「第百五十条の四第一項」と、法第百五十九条第二項及び第三項並びに法第百六十条中「第三債務者」とあるのは「保管振替機関又は参加者」と、第百四十一条第四項中「執行官」とあるのは「参加者又は執行官」と、「調書」とあるのは「報告書又は調書」と読み替えるものとする。
(債権執行等の規定の準用)
第百五十条の五
 法第百四十四条から法第百四十九条まで(法第百四十四条第二項ただし書及び法第百四十五条第一項を除く。)、法第百五十四条、法第百五十八条及び法第百六十六条第一項第二号並びに第二十六条、第二十七条、第百三十三条から第百三十六条まで及び第百四十七条第二項の規定は預託株券等執行について、法第八十四条、法第八十五条、法第八十八条から法第九十二条まで及び法第百六十五条第三号並びに第五十九条から第六十二条までの規定は預託株券等執行につき執行裁判所が実施する配当等の手続について準用する。この場合において、法第百四十四条第二項中「その債権の債務者(以下「第三債務者」という。)」とあり、並びに法第百四十五条第二項から第四項まで、法第百四十七条及び法第百五十四条第二項並びに第百三十三条第一項及び第百三十四条から第百三十六条まで中「第三債務者」とあるのは「保管振替機関又は参加者」と、法第百四十七条第一項中「差押債権者の申立てがあるときは、裁判所書記官は」とあるのは「裁判所書記官は」と、第百四十七条第二項中「前項」とあるのは「第百五十条の五において準用する法第百四十七条第一項」と、法第百六十五条第三号中「執行官」とあるのは「参加者又は執行官」と、第五十九条第一項中「不動産の代金が納付された」とあり、及び同条第二項中「代金が納付された」とあるのは「配当等を実施すべきこととなつた」と読み替えるものとする。
 第三節 金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行
(不動産の引渡し等の強制執行の際に採つた措置の通知)
第百五十一条
 執行官は、不動産又は人の居住する船舶その他の物の引渡し又は明渡しの強制執行をした場合において、これらの物の中に差押え又は仮差押え若しくは仮処分の執行に係る動産があつたときは、これらの執行をした執行官に対し、その旨及び当該動産について採つた措置を通知しなければならない。
(職務執行区域外における不動産の引渡し等の強制執行)
第百五十二条
 執行官は、所属の地方裁判所の管轄区域の内外にまたがる不動産又は人の居住する船舶その他の物について引渡し又は明渡しの強制執行をするときは、所属の地方裁判所の管轄区域外で職務を行うことができる。
(不動産の引渡し等の執行調書)
第百五十三条
 不動産又は人の居住する船舶その他の物の引渡し又は明渡しの強制執行をしたときに作成すべき調書には、第十三条第一項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 強制執行の目的物でない動産を法第百六十八条第四項前段に規定する者に引き渡したときは、その旨
二 前号の動産を保管したときは、その旨及び保管した動産の表示
(不動産の引渡し等の執行終了の通知)
第百五十四条
 前条の強制執行が終了したときは、執行官は、債務者に対し、その旨を通知しなければならない。
(動産の引渡しの強制執行)
第百五十五条
1 執行官は、動産(法第百六十九条第一項に規定する動産をいう。以下この条において同じ。)の引渡しの強制執行の場所に債権者又はその代理人が出頭しない場合において、当該動産の種類、数量等を考慮してやむを得ないと認めるときは、強制執行の実施を留保することができる。
2 執行官は、動産の引渡しの強制執行の場所に債権者又はその代理人が出頭しなかつた場合において、債務者から動産を取り上げたときは、これを保管しなければならない。
3 第百一条及び前二条の規定は、動産の引渡しの強制執行について準用する。
(目的物を第三者が占有する場合の引渡しの強制執行)
第百五十六条
 第百三十三条から第百三十五条までの規定は、第三者が強制執行の目的物を占有している場合における物の引渡しの強制執行について準用する。
(執行文付与の申立書の記載事項)
第百五十七条
 法第百七十三条第二項又は第三項の規定による執行文の付与の申立書には、第十六条第一項各号に掲げる事項のほか、これらの規定による執行文の付与を求める旨及びその事由を記載しなければならない。
第百五十八条
から第百六十九条まで 削除
第三章 担保権の実行としての競売等
(競売等の申立書の記載事項)
第百七十条
 担保権の実行としての競売、法第百九十三条第一項に規定する担保権の実行若しくは行使又は第百八十条の二に規定する預託株券等に関する担保権の実行(以下「競売等」という。)の申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 債権者、債務者及び所有者(不動産とみなされるものを目的とする競売又は法第百九十三条第一項に規定する担保権の実行若しくは行使の申立てにあつては、その目的である権利の権利者。以下同じ。)並びに代理人の表示
二 担保権及び被担保債権の表示
三 担保権の実行又は行使に係る財産の表示
四 被担保債権の一部について担保権の実行又は行使をするときは、その旨及びその範囲
(競売等の開始後の差押債権者の承継の通知)
第百七十一条
 競売等の開始後の差押債権者の承継についてこれを証する文書が提出されたときは、裁判所書記官又は執行官は、債務者及び所有者に対し、その旨を通知しなければならない。
(配当要求債権者に対する執行力のある債務名義の正本の交付)
第百七十二条
 第六十二条の規定は、競売等において執行力のある債務名義の正本により配当要求がされた場合について準用する。
(不動産競売)
第百七十三条
1 不動産競売については、第二章第二節第一款第一目(第二十三条中執行力のある債務名義の正本に係る部分及び第六十二条を除く。)の規定を準用する。
2 民法第三百八十一条(同法において準用する場合を含む。)の規定による通知を要する場合における不動産競売の申立書には、第百七十条各号に掲げる事項のほか、その通知をした旨を記載し、これを証する文書を添付しなければならない。
3 民法第三百八十四条第二項(同法において準用する場合を含む。)に規定する増価競売の請求に基づく不動産競売の申立書には、所有者の表示に代えて譲渡人及び第三取得者の表示を記載し、第百七十条各号に掲げる事項のほか、第三取得者が提供した金額、債権者が定めた増価金額及び第三取得者に増価競売の請求を発した年月日を記載し、これらの事項を証する文書を添付しなければならない。
4 第三十二条、第五十七条及び第五十八条の規定は、法第百八十六条第一項の保証について準用する。
(不動産競売の開始決定前の保全処分の申立ての方式等)
第百七十三条の二
1 法第百八十七条の二第一項又は第二項の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
一 債権者、債務者及び所有者並びに代理人の表示
二 担保権及び被担保債権の表示
三 担保権の目的である不動産の表示
2 前項の書面には、次に掲げる文書を添付しなければならない。
一 担保権の目的である不動産の登記簿の謄本
二 法第百八十七条の二第三項の規定による提示に係る文書(法第百八十一条第一項第三号に掲げる文書を除く。)の写し
3 不動産競売の申立人が第一項の申立てをしていた場合における不動産競売の申立書には、第百七十条各号に掲げる事項のほか、同項の申立てに係る事件の表示を記載しなければならない。
4 法第百八十七条の二第四項の文書には、当該不動産競売の申立てに係る事件の表示を記載しなければならない。
(船舶の競売)
第百七十四条
1 船舶を目的とする担保権の実行としての競売の申立書には、第百七十条各号に掲げる事項のほか、船舶の所在する場所並びに船長の氏名及び現在する場所を記載しなければならない。
2 執行裁判所は、競売の申立人の申立てにより、当該申立人に対抗することができる権原を有しない船舶の占有者に対し、船舶国籍証書等を執行官に引き渡すべき旨を命ずることができる。
3 前項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
4 第二項の規定による決定は、相手方に送達される前であつても、執行することができる。
5 第二章第二節第二款(第七十四条中申立書の記載事項及び執行力のある債務名義の正本に係る部分並びに第八十三条において準用する第六十二条を除く。)及び前条(第一項を除く。)の規定は、船舶を目的とする担保権の実行としての競売について準用する。この場合において、同条第三項中「増価競売の請求を発した年月日」とあるのは、「増価競売の請求を発した後船舶を目的とする担保権の実行としての競売の申立てをすることができることとなつた年月日」と読み替えるものとする。
(航空機の競売)
第百七十五条
 航空機を目的とする担保権の実行としての競売については、法第百八十一条から法第百八十四条まで並びに第二章第二節第三款(第八十四条において準用する第七十四条中申立書の記載事項及び執行力のある債務名義の正本に係る部分並びに第八十四条において準用する第八十三条において準用する第六十二条を除く。)及び前条(第五項を除く。)の規定を準用する。この場合において、同条第一項中「並びに船長の氏名及び現在する場所を記載し」とあるのは「を記載し」と、同条第二項中「船舶国籍証書等」とあるのは「航空機登録証明書等」と読み替えるものとする。
(自動車の競売)
第百七十六条
1 自動車を目的とする担保権の実行としての競売の申立書には、第百七十条各号に掲げる事項のほか、自動車の本拠を記載し、自動車登録ファイルに記録されている事項を証明した文書を添付しなければならない。
2 法第百八十一条から法第百八十四条まで並びに第二章第二節第四款(第八十八条及び第九十七条において準用する第六十二条を除く。)及び第百七十四条第二項から第四項までの規定は、自動車を目的とする担保権の実行としての競売について準用する。この場合において、同条第二項中「船舶国籍証書等」とあるのは、「自動車」と読み替えるものとする。
(建設機械の競売)
第百七十七条
 建設機械を目的とする担保権の実行としての競売については、前条の規定を準用する。この場合において、同条第一項中「自動車の本拠」とあり、及び同条第二項において準用する第八十七条第一項中「自動車の自動車登録ファイルに登録された使用の本拠の位置(以下「自動車の本拠」という。)」とあるのは、「建設機械の登記の地」と読み替えるものとする。
(動産競売)
第百七十八条
1 動産競売の申立書には、第百七十条各号に掲げる事項のほか、差し押さえるべき動産が所在する場所を記載しなければならない。
2 第二章第二節第六款(第九十九条、第百条及び第百二十九条を除く。)の規定は動産競売について、第百条の規定は一般の先取特権の実行としての動産競売について準用する。
(債権を目的とする担保権の実行等)
第百七十九条
1 債権を目的とする担保権の実行又は法第百九十三条第一項後段の規定による担保権の行使の申立書には、第百七十条各号に掲げる事項のほか、第三債務者を表示しなければならない。
2 第百三十三条(第一項を除く。)から第百四十五条(同条において準用する第六十二条を除く。)までの規定は、前項に規定する担保権の実行又は行使について準用する。
(その他の財産権を目的とする担保権の実行)
第百八十条
1 電話加入権を目的とする担保権の実行の申立書には、日本電信電話株式会社の電話加入権に関する帳簿に記載した事項を証明した文書を添付しなければならない。
2 第百四十六条(第二項を除く。)から第百四十九条までの規定は前項の担保権の実行について、第百五十条(同条において準用する第百四十六条第二項を除く。)及び前項の規定はその他の財産権で権利の移転について登記又は登録を要するものを目的とする担保権の実行について準用する。
(預託株券等に関する担保権の実行)
第百八十条の二
1 預託株券等に関する質権の実行の申立書には、株券等の保管及び振替に関する法律第三十六条(同法第三十九条第一項において準用する場合を含む。)の規定により交付を受けた当該質権についての記載のある参加者口座簿又は顧客口座簿の写しを添付しなければならない。
2 法第百八十二条から法第百八十四条まで、法第百九十三条第一項前段及び法第百九十四条並びに第二章第二節第八款(第百五十条の五において準用する法第百四十六条第二項並びに第六十二条及び第百三十三条第一項を除く。)及び第百七十九条第一項の規定は、預託株券等に関する担保権の実行について準用する。この場合において、第百七十九条第一項中「第三債務者」とあるのは、「保管振替機関又は参加者」と読み替えるものとする。
(遺産の分割のための競売における換価代金の交付)
第百八十一条
 家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)第十五条の四第一項の規定による審判に基づいて競売が申し立てられた場合において、換価が終了したときは、執行裁判所又は執行官は、換価代金から競売の費用で必要なものを控除した金銭を、家事審判規則(昭和二十二年最高裁判所規則第十五号)第百六条第一項において準用する同規則第二十三条第一項の規定に基づいて選任された財産の管理者に交付しなければならない。
附則
(施行期日)
第一条
 この規則は、法の施行の日(昭和五十五年十月一日)から施行する。
(自動車及び建設機械強制執行規則等の廃止)
第二条
 次に掲げる最高裁判所規則は、廃止する。
一 自動車及び建設機械強制執行規則(昭和二十七年最高裁判所規則第五号)
二 自動車及び建設機械競売規則(昭和二十七年最高裁判所規則第六号)
三 航空機強制執行規則(昭和二十八年最高裁判所規則第十六号)
四 航空機競売規則(昭和二十八年最高裁判所規則第十七号)
五 電話加入権強制執行規則(昭和四十二年最高裁判所規則第五号)
第三条
 (省略)
(経過措置)
第四条
 法の施行前にした次に掲げる法律又は最高裁判所規則の規定による執行処分その他の行為は、この規則の適用については、法又はこの規則の相当規定によつてした執行処分その他の行為とみなす。
一 法附則第三条の規定による改正前の民事訴訟法(以下「旧民事訴訟法」という。)
二 法附則第二条の規定による廃止前の競売法(明治三十一年法律第十五号。以下「旧競売法」という。)
三 附則第二条の規定による廃止前の同条各号に掲げる最高裁判所規則
四 前条の規定による改正前の執行官手続規則
第五条
1 法の施行前の申立てにより旧民事訴訟法の規定(なお従前の例によることとされる場合を含む。第四項、次条、附則第七条第一項及び第三項並びに附則第八条において同じ。)又は旧競売法の規定(なお従前の例によることとされる場合を含む。次条において同じ。)による強制競売又は競売の手続の開始決定がされた不動産について法の施行後の申立てにより強制競売又は担保権の実行としての競売の開始決定がされたときは、先の開始決定に係る事件の処理については、当該事件の執行記録に後の開始決定に係る事件の記録が添付されたものとみなす。
2 前項に規定する場合において、先の開始決定に係る強制競売又は競売の申立てが取り下げられたとき、又はその申立てに係る手続が取り消されたときは、なお従前の例によることとされる旧民事訴訟法又は旧競売法の規定により法の施行後にした執行処分その他の行為は、法又はこの規則の相当規定によつてした執行処分その他の行為とみなす。同項に規定する場合において、先の開始決定に係る強制競売又は競売の手続が停止され、法第四十七条第四項(法第百八十八条において準用する場合を含む。)の裁判がされたときも、同様とする。
3 前項に規定する場合においては、旧民事訴訟法第六百四十三条第三項(旧競売法第二十四条第五項(なお従前の例によることとされる場合を含む。)において準用する場合及びなお従前の例によることとされる場合を含む。)の規定による取調べの報告書を現況調査報告書と、旧民事訴訟法第六百五十五条(なお従前の例によることとされる場合を含む。)又は旧競売法第二十八条(なお従前の例によることとされる場合を含む。)の規定による評価の報告書を評価書とみなす。
4 第一項及び第二項の規定は、法の施行前の申立てにより旧民事訴訟法の規定による強制管理の開始決定(仮差押えの執行としてされたものを含む。)がされた不動産について法の施行後の申立てにより強制管理の開始決定(仮差押えの執行としてされたものを含む。)がされた場合について準用する。
第六条
 前条第一項から第三項までの規定は、法の施行前の申立てにより旧民事訴訟法の規定、旧競売法の規定又は附則第二条の規定による廃止前の同条第一号から第四号までに掲げる最高裁判所規則の規定(なお従前の例によることとされる場合を含む。)による強制競売又は競売の手続の開始決定がされた船舶、航空機、自動車又は建設機械について法の施行後の申立てにより強制競売又は担保権の実行としての競売の開始決定がされた場合について準用する。
第七条
1 法の施行前の申立てにより旧民事訴訟法の規定による動産の差押えを受けた債務者に対しその差押えの場所について法の施行後に動産執行又は動産競売の申立てがあつたときは、法第百二十五条第二項前段(法第百九十二条において準用する場合を含む。)の規定により事件を併合するものとし、先の動産執行事件の処理については、旧民事訴訟法第五百八十六条第二項の規定によつて照査手続がされたものとみなす。
2 前項に規定する場合において、先の動産執行の申立てが取り下げられたとき、又はその申立てに係る手続が停止され、若しくは取り消されたときは、なお従前の例によることとされる旧民事訴訟法又は附則第三条の規定による改正前の執行官手続規則の規定により法の施行後にした執行処分その他の行為は、法又はこの規則の相当規定によつてした執行処分その他の行為とみなす。
3 第一項の規定は、法の施行前の申立てにより旧民事訴訟法の規定による動産の差押えを受けた債務者に対しその差押えの場所について法の施行後に動産に対する仮差押えの執行の申立てがあつた場合について準用する。
第八条
 法の施行前の申立てにより旧民事訴訟法の規定による差押えがされた債権又はその他の財産権に係る配当等の実施の手続については、当該債権又はその他の財産権につき法の施行後の申立てにより差押えがされた場合に限り、法及びこの規則の規定を適用する。
附則 (昭和六二年九月一六日最高裁判所規則第三号)
この規則は、昭和六十三年一月一日から施行する。ただし、第二条中民事執行規則第七十五条、第八十四条及び第百六十条の改正規定は、公布の日から施行する。
附則 (平成二年五月一六日最高裁判所規則第三号) 抄
(施行期日)
第一条
 この規則は、法の施行の日(平三・一・一)から施行する。
附則 (平成八年七月一五日最高裁判所規則第四号)
(施行期日)
第一条
 この規則は、民事執行法の一部を改正する法律(平成八年法律第百八号)の施行の日から施行する。
(執行官の手数料及び費用に関する規則の一部改正)
第二条
 執行官の手数料及び費用に関する規則(昭和四十一年最高裁判所規則第十五号)の一部を次のように改正する。
第十九条の見出しを「(差押不動産等の保全処分)」に改め、同条第一項中「又は第七十七条第一項」を「、第七十七条第一項又は第百八十七条の二第二項」に改める。
附則 (平成八年一二月一七日最高裁判所規則第六号)